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社員の電子メールをチェックしてもよいか

テーマ:労務一般

2010年10月28日

解説者

弁護士 石井邦尚

1.社員の電子メールを閲覧、監視できるか

 電子メールはビジネス上の連絡、コミュニケーション手段として最近では不可欠のものとなっています。社員一人一人に電子メールアドレスを割り当てている会社も多くあります。
 ところが、割り当てた電子メールアドレスを、本当に社員が仕事のためだけに利用しているのかということや、適切に利用しているのかということは、外から見ているだけでは、なかなかわかりません。


 そこで、社員の電子メールを閲覧、監視したいという要望が出てきます。そもそも会社が割り当てた電子メールアドレスであるし、多くの場合は会社の設備(コンピュータ)を利用して送受信されているのですから、会社がそれを閲覧、監視できるのは当然のようにも思えます。一方で、従業員のプライバシーなども気になるところでしょう。社員の電子メールを閲覧、監視することはできるのでしょうか。可能だとして、どのような範囲でできるのでしょうか。特別な手続きなどは必要でしょうか。


2.職務専念義務などとの関係

 前回述べましたが、電子メールも含めた職場でのインターネットの私的利用は、勤務時間内であれば社員の職務専念義務違反になりますし、勤務時間外であっても、多くの会社の就業規則等で定められているであろう、会社の供する物品の私的利用禁止規定といった一般的な規則に違反することになります。


 そうすると、社員がこうした義務や規則を遵守しているという前提であれば、プライバシーの問題は生じないようにも思えます。しかしながら、実際には軽微なプライベート・メールが送受信されていることは多いですし、軽微なものであれば、職務専念義務等に違反するとまでは言えない例も少なくありません。さらに、例えば、取引先の社員との「飲み会」を調整する電子メールなど、プライベートのようでもあり、広い意味での接待あるいは取引先とのコミュニケーション円滑化といった業務目的も有するような性質の電子メールもあります。
 やはり、会社が割り当てた電子メールアドレスだからといって、社員のプライバシーを無視することはできません。


3.監視の必要性と手段の相当性

 過去に、会社による社員の電子メールの閲覧、監視等が問題となった裁判例があり、一定の範囲で、監視等が認められています。こうした裁判例から、監視等が認められる要件(条件)を大きくまとめれば、(1)監視等の必要性(あるいは監視等の目的の相当性)と、(2)手段の相当性(あるいは監視等の態様の妥当性)が認められる範囲と言えます。これを逸脱している場合、会社が社員に対し、損害賠償などの責任を負う可能性もあります。


 (1)監視等の必要性あるいは監視等の目的の相当性では、例えば、メールの私的利用の防止、個人情報や機密情報漏洩の防止、漏洩原因の追及、ウイルス調査などは許されるでしょう。一方、上司等が個人的な好奇心で監視等を行ったりすれば、この要件は満たされません。
 (2)手段の相当性あるいは監視等の態様の妥当性については、事前に社員の電子メールを監督等することがあり得るということが周知されていたかということや、件名や送信先を確認すれば足りるのに本文まで閲覧していないかということ、上司などではない無関係の人が閲覧をしていないか、といったことが問題となり得ます。


4.社内規程整備の必要性

 そして、(1)監視の必要性、(2)手段の相当性を満たすためにも、就業規則や服務規程などの社内規程を整備すべきです。まだ社内規程がなければ、前回述べた、コンピュータやインターネットの利用に関する社内規程と一緒に検討するとよいでしょう。


 社内規程で定める内容は、


  1. 電子メールの私的利用や個人情報・機密情報の漏洩など、禁止される行為を定める
  2. 電子メールを監視等することがあり得るということを明示する
  3. どのような目的で監視等をするのか
  4. 誰が(どのような立場の人が)監視等を行うのか

 といったことが考えられます。社内規程をきちんと社員に告知し、周知することも大切です。


こうした規定を定め、周知していること自体、(2)手段の相当性の判断に有利に働くと言えます。そして、規定を守れば自然に(1)監視の必要性、(2)手段の相当性を満たすようにしておけば、「ケース・バイ・ケースの対応でうっかり相当な範囲を逸脱していた」ということを防げます。
 社員の電子メールを閲覧する必要が出てくるケースでは、個人情報や機密情報の漏洩が疑われるといった、緊急性を要する事態も考えられます。そういった場合に円滑な判断をするという意味でも、広い意味でのリスク管理の一貫として社内規程を整備しておくことをおすすめします。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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