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取締役の競業避止義務とは

テーマ:役員・株主

2010年7月 1日

解説者

弁護士 高橋弘泰

【取締役の競業避止義務とは】

 取締役は経営の専門家であり、自らが働く会社の営業機密に精通しています。ですから、その知識を利用して会社と同じ種類の営業を行い、ノウハウや顧客を奪う形で会社の利益を害する危険性があります。


 たとえば、居酒屋を経営している会社の取締役が、その営業のノウハウや顧客情報を知っているために、同じような居酒屋を経営する会社を作って営業を始めたというケースを考えてみましょう。
 この場合、元から営業している会社は、その取締役の店に顧客を奪われて損害を被る危険があります。それを予防するために、会社法は、取締役が会社と同じ種類の営業(競業)を行う場合は、事前に取締役会の承認を得ることを要求しています。これを取締役の「競業避止義務」といいます。


【何が競業にあたるか】

会社と同じ種類の営業(競業)に該当するといえるかどうかの判断では、現在または将来にわたって、市場での取引が競合する可能性があるかどうかがポイントになります。現実に営業していなくても、将来そのエリアで営業する計画があれば競業の可能性があると考えられます。
 前の例でいえば、東京で広く居酒屋チェーン店を経営している会社が、千葉でもチェーン店を開業する計画を立てている場合には、その取締役が千葉で居酒屋を開業することは競業にあたります。


 取締役が競業行為を行う場合には、取締役会の承認が必要です。取締役は、取引先・目的物・数量・取引期間など取引に関する重要事実を取締役会に報告して、承認を求めなければなりません。取締役会はそれを慎重に審議して承認するかどうかを決定することになります。


【義務違反の効果は】

 競業避止義務に違反して取締役が取引を行った場合、会社は取締役に対して損害賠償を請求できます。この場合、会社の受けた損害がはっきりしないときでも、取締役または第三者が競業によって得た利益が会社の損害であると推定されます。


 この点、旧商法においては、取締役の得た経済的利益を会社に移転させることのできる「介入権」という規定がありましたが、損害額の推定と効果があまり変わらないことから、会社法では削除されました。


【関連する問題】

 その他、競業避止義務に関連する問題として、次の二つのケースがあります。


1.会社の機会の奪取

 これは、取締役が職務上知った外部情報を利用して自分の事業を始める場合のように、会社が関心を持っている新規事業の機会を取締役が自分の事業にしてしまうケースをいいます。これは直接的には競業避止義務違反にはあたらなくとも、その取締役の会社に対する忠実義務違反となる可能性があります。


 この裏返しとして、取締役が個人の資格で得た情報をどこまで会社に提供する義務があるかという、義務の限界の問題もあります。


 取締役は会社の委任を受けて会社の利益のために働く義務を負っていますから、会社の新規事業の開発に努めるということも取締役の善管注意義務の中に含まれると考えられます。だから厳密にいえば、自己の知りえた会社の利益になる情報はすべて会社に提供すべきということになるでしょう。ただし、この義務の範囲は会社の規模や取締役の地位によっても変わってきます。


2.退任予定の取締役による従業員の引き抜き

 退任後に会社と同種の事業を始める予定の取締役が、在任中に部下に対して自分の事業への参加を勧めることが、取締役の忠実義務違反に反しないか、という問題もあります。


 これもケースバイケースであり、一律に義務違反というわけではありません。裁判例は、取締役とその部下との関係(自ら教育した部下である等)や残された会社に与える影響の大きさなどを考え、不当といえるケースのみが義務違反となると考えているようです。


 この裏返しとして、取締役の退任後の競業を禁止する特約が有効かどうか、という問題もあります。憲法上の職業選択の自由にも関わる問題ですが、制限の内容について必要性・相当性が認められれば有効という裁判例があります。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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