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管理職に残業代は出ない?

テーマ:労務一般

2010年2月12日

解説者

弁護士 石井邦尚

【管理職に残業代は支払わないでよい?店長には支払う?】

 就業規則などで、管理職には残業代を支給しないこととしている会社がよく見られます。「課長になったら残業代がなくなって給料が減った」「管理職になったら、残業代がかからないからといって残業ばかりさせられる...」といったぼやき(?)を聞くこともあります。
 一方、少し前になりますが、東京地方裁判所は、平成20年1月に、某大手ハンバーガーチェーン店の店長に残業代を支払うよう会社に命じる判決を下し、話題になりました。この事件をきっかけに、「名ばかり管理職」という言葉もよく使われるようになりました。
 いったい、管理職に残業代を支払う必要はあるのでしょうか?
 管理職には払わないけど、店長には払うということ?
 「名ばかり管理職」とは?


【労働基準法などに「管理職」という用語はない】

 実は、労働基準法などの法律に、「管理職」という用語はありません。管理職と類似した労働法上の概念、用語は「管理監督者」といいます。より正確には、労働基準法の条文では「監督若しくは管理の事業に従事する者」という表現が用いられていて、この立場の人を「管理監督者」と呼んでいます。
 そして、管理監督者には、労働基準法上の労働時間や休憩、休日に関する規定が適用されません。一般の従業員は法定労働時間8時間とされていて、それを超えて勤務を命じられた場合には残業代が支払われます。管理監督者にはこの規制は適用されないので、例え12時間働いたとしても、残業代を支払う必要はないのです。


【管理職は管理監督者ではないのか?】

 では、管理職は管理監督者なのでしょうか。
 長年、管理職=管理監督者として取り扱ってきた会社は数多くあります。名称も似ているので、「管理職になったら残業代はつかない」といった言い方がよくされてきました。しかし、管理職というのは、あくまでも会社内の役職上の呼称であり、法律上の概念である管理監督者と同じではありません。
 会社から管理職の名称(例えば課長、部長)が与えられているということと、法律上の「管理監督者」の要件を満たしているかは全く別の問題なのです。したがって、「管理職になったら残業代はつかない」という言い方は、法律上は誤りです。


【管理監督者の要件】

 管理監督者と認められるには、


  1. 事業主(会社)の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
  2. 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
  3. 一般の従業員と比べて、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇(基本給、賞与、役職手当など)を与えられていること

 が必要とされています。
 この要件を満たすかは、実態に即して判断されるものです。冒頭の「管理職に残業代を支払う必要はあるのでしょうか?」「管理職には払わないけど、店長には払うということ?」に対する答えは、「課長」とか「店長」という呼称ではなく、管理監督者の要件を満たすかの実態が問題である、ということになります。管理職の名称を与えられているだけでは駄目ですし、就業規則などで「管理職は管理監督者とする」などと定められている例を見かけることもありますが、これも駄目です。
 上記の3つの要件は、かなり厳しいものです。過去の裁判例では、ハンバーガーチェーン店の店長の事件の他にも、ファミリー・レストランの店長やカラオケ店店長、ホテルの料理長、会社の副部長といった立場(名称)を与えられている人が、管理監督者にはあたらないとされた事例があります。
 したがって、残業代を支払わないために管理職の役職を濫発するなどは論外ですが、管理職を管理監督者として扱う場合には、上記要件が満たされるよう、慎重に検討する必要があります。管理職が退職した後、在任中の「残業代」の支払を巡って争いになるといったトラブルがよく見られるので、注意が必要です。
 なお、管理職の役職(名称)を与えられているが、管理監督者の要件は満たさない人を、一般に「名ばかり管理職」と呼んでいるようです。「名ばかり管理監督者」と呼んだ方が正確かもしれませんね。


【深夜業は別】

 ところで、管理監督者に、労働基準法の労働時間や休憩、休日に関する規定は適用されませんが、深夜業の規定は適用されます。したがって、深夜業となる場合には、割増賃金を支払わなければなりません。
 もっとも、労働協約、就業規則その他によって深夜業の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には深夜業の割増賃金を支払う必要はないとされています。割増賃金の支払を避けるためには、適切な規定を設けておく必要があります。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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