本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

会社の文書管理を考える〜秘密文書の管理

テーマ:契約・取引

2009年7月 9日

解説者

弁護士 石井邦尚

1.秘密文書

 会社にとって秘密保持が特に必要な文書を、ここでは秘密文書と呼ぶこととします。
 主な秘密文書には、会社の企業秘密に関する文書、取引先などから受け取った秘密文書、個人情報を記載した文書があります。
 最近はPCやインターネットの普及で、WinnyなどのWeb・Net経由や、USBメモリー紛失による情報漏洩事故が注目を集めています。しかし、実はある調査によれば、媒体別で見ると2008年の個人情報漏洩事故のうち、紙媒体によるものが56%を占めているといいます(日本ネットワークセキュリティ協会 2008年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書Ver.1.0(PDFファイル))。PCが普及しても、紙媒体の管理の重要性は低下していません。


2.目的・方針

(1)守り、活用する
 秘密文書管理の目的・方針を、私は、a.守る、b.活用する、c.個人情報保護の徹底、と整理しています。
 秘密文書の管理では、a.「秘密」を守ることが何よりも重要です。しかし、守るだけでは目的を達したことにはなりません。秘密を守ることだけが目的ならば、極端に言えば、文書を破棄すればよいのです。映画でスパイが重要な情報をすべて記憶するのは、「守る」という意味では究極の秘密情報管理方法と言えるかもしれません。
 秘密文書の管理で重要なのは、守ると同時に、b.十分に(円滑に)活用することです。文書管理の担当となった方はこのバランスを忘れないことが肝心です。


(2)個人情報の保護
 ただし、c.個人情報の保護については特別な配慮が必要です。個人情報漏洩事件が発生した場合、会社の信用失墜のリスクや、損害賠償や事故対応のコストがきわめて大きくなっています。
 最近大きな話題となった三菱UFJ証券(株)の顧客情報流出事件では、約5万名分の名簿が流出しました。同社はそれぞれの顧客に対し、「お詫びのしるし」として1万円相当のギフト券を送付したということです。それだけで総額5億円という計算になりますが、その他にも、弁護士費用や名簿回収費用などを含む調査・対策費用が相当にかかっているはずで、さらに、信用失墜による損失は計り知れません。
 最近は、会社が個人情報の取扱いを適切に行う体制等を整備しているかを認定する「プライバシーマーク制度」も設けられています。今後、個人情報の保護については、自社内で合理的と考える方法で管理するだけでは不十分で、第三者から見ても合理的と考えられる水準の管理体制がとられているかを問われる風潮が強まっていくものと思われます。


3.企業秘密の管理と不正競争防止法

 秘密文書のうち、特に会社の企業秘密に関する文書については、不正競争防止法による「営業秘密」の保護との関係を意識する必要があります。
 不正競争防止法では、「営業秘密」を保護しており、その侵害に対する差止請求権や損害賠償請求権が認められています(差止請求権は、侵害のおそれがある場合にも認められます)。
 ただし、会社が企業秘密と考えているものが全て保護されるわけではありません。不正競争防止法で保護される「営業秘密」にあたるには、その情報が、(1)公然と知られていないこと、(2)秘密として管理されていること、(3)事業活動に有益であること、という要件を満たす必要があります。
 ここで注目して欲しいのは、(2)の要件です。実際に秘密として管理されていなかったということが争われる裁判例は少なくありません。企業秘密を適切に管理することは、適切な法的保護を受けるためにも重要なのです。


4.秘密文書の管理

(1)まずは認識
 秘密文書を管理するにあたっては、まず「秘密文書」かどうかを適切に認識し、加えて社員などに認識させることがスタートになります。
 取引先などから受け取った文書等については、契約書の秘密保持条項や、秘密保持契約で秘密保持義務が課せられているかを適切に認識する必要があります。秘密保持条項や秘密保持契約書には、大きく分けて、原則としてすべての情報・資料を秘密扱いとするものと、「秘密」「機密」と表示されたもののみを秘密扱いとするものとがあります。これを正しく認識し、適切に取り扱う必要があります。
 また、企業秘密のうち、特に不正競争防止法の「営業秘密」としての保護を受けたいものについては、社員に対しても、それが「営業秘密」であると認識させる必要があります。多くの社員から秘密と認識されていないような状況では、「秘密として管理」されていない=不正競争防止法で保護されないと評価されるおそれがあります。


(2)物理的な管理
 秘密文書の管理でも、印鑑の管理などと同様、物理的な手段による管理は重要です。情報を記録している文書やCD-ROMなどの媒体を金庫や適切な保管庫で保管したり、そうした媒体が存在する場所への立ち入りをIDカードなどで制限したりといったことが考えられます。情報を利用した後に、それを適切に回収することも重要です。


(3)非物理的な管理〜社内ルールの整備、秘密保持契約の締結
 物理的な方法以外では、まず社内ルールの整備が必要です。取引先との関係では、最近は、適切な社内ルールが整備されていない会社に対して、重要な情報を提供することに慎重な会社が増えてきているように感じられます。不正競争防止法の「営業秘密」として保護を受けるためにも、適切な社内ルールの整備は不可欠です。
 また、秘密情報を取引先などに開示しなければならない場合は、秘密保持契約を締結する(あるいは取引契約書の中に秘密保持条項を入れる)ことが不可欠です。自社で企業秘密と考えていても、秘密保持契約(条項)を締結せずに提供されていれば、不正競争防止法の「営業秘密」としては保護されません。さらに、取引先から受け取った秘密文書・情報を、秘密保持契約を締結せずに第三者に提供することは、ほとんどの場合、契約違反(秘密保持義務違反)になるはずです。
 秘密文書の管理は、企業にとって非常に重要な意味を持ちます。システマティックに管理する体制を作るとともに、それが機能しているかどうかを随時チェックしていくことが望まれます。


(2009年6月執筆)


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ