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法律コラム


[契約書|2009年6月25日]
弁護士 石井邦尚

印鑑の管理は適切に

弁護士 石井邦尚

1.いろいろな印鑑

 会社で用いられる代表的な印鑑には、つぎのようなものがあります。

(1)代表取締役の実印(代表者印)
 会社は、代表取締役の実印(代表者印)を法務局に届け出なければならず、法務局から印鑑証明書も発行されます。実印は会社にとって最も重要な印鑑で、ビジネスにおいて取引の相手方から、実印での押印と印鑑証明書の添付が求められることも多くあります。
 また、不動産登記手続などにも実印と印鑑証明が必要です。実印が不正使用されると、後述の「推定ルール」などもあり、会社にとって、非常に大きなトラブルを引き起こす危険があります。

(2)銀行印
 銀行印は、銀行取引を行うための印鑑です。銀行印は、経理部員などが日常的に扱うことが多いので、代表者印とは別の印鑑にするべきです。
 銀行印を不正使用されると、無断で銀行の預貯金を引き出されたり、手形を振り出されたりする危険があります。銀行印の管理や預貯金の管理、手形の管理などを経理部員一人に任せることは危険であり、複数の社員で適切に管理する必要があります。

(3)代表取締役の認印
 日常の取引文書、事務文書などに使うために、代表取締役の認印を用意している会社も多くあります。認印とはいっても、それを押印することにより契約が成立することがありますし、後述の「推定ルール」も適用されるので注意が必要です。

(4)取締役・部課長の印鑑
 取締役、部長、課長などが、職務でそれぞれの印鑑を使用していることがあります。こうした人たちは、会社から一定の権限(例えば、一定の業務について契約を締結する権限)を付与されていることが多いので、取締役・部課長の印鑑を用いても、正式な契約書を作成して契約を締結できる場合があります。後述の「推定ルール」も適用されるので注意が必要です。

(5)社印
 社印は、「角印」ともいわれる、会社名を刻んだ四角い印鑑です。慣習的に会社として正式に作成した書類であることを示すために押印されますが、法的にはあまり意味はありません。

2.契約書などへの記名・押印の方法と、「推定ルール」

(1)契約書などへの記名・押印の方法
 一般に、契約書などには、(1)会社名、(2)権限者の肩書き、(3)権限を持つ者の個人名を記載した上で、(4)その者の押印をするという形で記名押印します。例えば、次のようになります。

(2)「推定ルール」
 契約書が偽造されたなどといって訴訟となった場合、どういった印鑑で押印されたかが、大きな意味を持ちます。(4)押印に用いられた印鑑が、(3)甲野太朗さんの印鑑であることが立証されると、その文書は、甲野さんにより正式に作成されたもの(=甲野さんは代表取締役なので、会社が正式に作成したもの)と推定されてしまいます。これを「推定ルール」と呼んでおきます(正式な法律用語ではありませんが)。
 (4)が実印の場合、印鑑証明書が添付されていれば、それだけで(3)甲野さんの印鑑であると立証されます。実印は、一般的に慎重に管理されていると考えられていますので、それが不正使用されたものだという反証は簡単ではないでしょう。
 また、代表取締役の認印や、取締役・部課長の印鑑でも、契約は成立することがあります。印鑑証明書がなくても、それらが普段正式に用いられていることが立証されれば、やはり「推定ルール」が適用されます。こうした印鑑も、不正使用されれば契約書が偽造されたりする危険があり、適切な管理が必要です。

(3)「推定ルール」への反証
 「推定ルール」は、あくまでも「推定」であり、反証することも可能ですが、実際には簡単ではありません。さまざまな証拠を積み重ねて反証していくことになりますが、その際、印鑑を厳重に管理していて、その管理記録から正式に押印されたものとは考えられないといった証拠が出せれば、重要な証拠の一つとなります。逆に、普段から管理記録に残さずに押印することもあったということになれば、その管理記録はほとんど価値のない証拠になるでしょう。
 実印などの重要な印鑑については、契約書などを偽造されないようにすることが第一ですが、万が一、偽造されてしまった場合のことも考えて管理記録を残すなど、厳重に管理することが肝心です。

3.印鑑の管理

(1)印鑑自体の偽造
 印鑑の不正使用には、まず印鑑自体が偽造されて使用されるケースがあります。これに対しては、偽造されにくい印鑑にするといった工夫や、押印した書類からスキャナーで読み取られることを防ぐなどのように、名前などに一部をかぶせるようにして押印するといった工夫が考えられます。

(2)部外者に使われる
 印鑑が部外者に盗み出されるなどして不正使用されるケースも考えられます。これに対しては、金庫(や銀行の貸金庫)などに厳重に管理する、銀行印と預金通帳や手形帳を別々に保管するといった物理的な管理で工夫していくことになります。

(3)会社内部の者による不正使用
 会社の役員や社員が、自分に委ねられた印鑑を権限を越えて不正使用するケースや、権限のない印鑑を無断で(こっそり)不正使用するとケースがあります。そのため、一部の役員や社員に印鑑を委ねる場合でも、重要な印鑑については、必ず複数の社員等でチェックしたり、押印記録簿を作成したりするべきでしょう。
 こうした印鑑に関する権限は、社内規則で明確化することが望ましいものです(もちろん規則を作ったら、徹底的に遵守しなければなりません)。また、権限のない印鑑を不正使用されることがないよう、重要な印鑑については、役員や社員との関係でも、物理的な管理を適切に行うことが必要です。

(2009年6月執筆)

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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