2007年4月26日|弁護士 壇俊光
ビジネスブログ注意点〜第2回ビジネスブログにまつわるトラブル
前回はビジネスブログの活用法として、ビジネスブログとそのメリットデメリットをお話いたしました。
今回も引き続きビジネスブログについてビジネスブログにまつわるトラブルをお話いたします。
ビジネスブログの大原則
ブログには、経営者の人柄が伝わるような内容が望ましいということは、前回お話いたしました。
しかし、だからといって、ブログを本当に私的な日記であるかのように扱うことは間違いです。ブログもインターネットを利用するものである以上、(1)インターネットは世界中に公開されている。(2)インターネットに流出した情報は抹消できない。ということは常に覚えていなくてはなりません。
また、(3)インターネットの利用者の中には相容れない人が必ずいる。というのも残念ながら事実です。これは、インターネットの利用者が変わっているというのではなく、インターネットによって、これまででは考えられない程多くの人と情報の交換が可能になったためです。現実に1日1万人の人に会うのはとても難しいことですが、ブログの来訪者が1日1万人というのは決して珍しいことではありません。
プライバシーの問題について
平成18年10月には、某会社の社員が、ファイル共有ソフト「Share」を使っていてウイルスに感染し、交際中の女性のヌード写真などの画像を漏洩してしまうという事件がありました。
「Share」で情報漏洩したことからも明らかなように、Winnyを使いさえしなければ安全というのは間違いです。
さらに、その画像の女性はmixiと呼ばれるソーシャルネットワークサービスに実名登録していたために、画像を入手した者が、個人を特定して、mixiのコミュニティでヌード写真を公開されてしまいました。ちなみに、ソーシャルネットワークサービスとは、インターネット上での紹介制のサービスで、友達の間で互いの日記を見たりできます。
ここで特に注意しなくてはならないことは、インターネットの様々な情報を集約すれば本人のゴシップにつながることもあるので特にプライバシーに気をつけなくてはなりません。
コメントスクラムについて
多くのブログでは、コメント機能があります。コメント機能とは、ブログ開設者の記事に対して、閲覧者の書き込み内容を表示することが出来る機能です。
コメント機能は、顧客とのコミュニティを形成する点で、ビジネスブログにとって魅力的なツールです。
しかし、記事に対するコメントは常に好意的なものとは限りません。一般的には、褒めることよりも批判することに積極的です。そのため場合によっては、ブログのコメント欄に批判的なコメントが集中することもあります。このような現象は一部では、コメントスクラムなどとも呼ばれているようですが、コメントスクラムによりブログの閉鎖に追い込まれることは珍しいことではありません。
この場合、コメント欄を放置していると、普通の閲覧者に不快感を与えることになります。最近のブログには、ブログ開設者が承認したコメントだけ表示されて、承認していないコメントは表示されないという機能が設けられていることが多いです。閲覧する一般の顧客に不快な思いを与えてはビジネスブログの意味がないので、承認制をおすすめします。
コメント管理の問題
コメント欄については、管理者としての問題もあります。
もし、自分が他人の名誉を毀損するような記事やコメントをした場合、自分が名誉毀損になることは当たり前です。自己のブログで自分や第三者の名誉を侵害するコメントをしたものが現れた場合、そのコメントをした人が名誉毀損の責任を問われるのも当然です。
ブログの場合、違法なコメントを放置していたような場合、コメントをした人だけでなく、ブログの開設者まで違法と言われることが考えられます。しかし、コメントは消せばいいというものではありません。違法でも無いのに消してしまえば、コメントをした人の表現の自由を害するとされることも考えられます。
このような場合どうすれば良いかは、難しいところですが、違法かどうか判断がつかない場合は、情報を消すのではなく、表示しないようにするのが良いでしょう。そうすれば、一般の人には見えませんし、問題ないとなった場合でも復活させることが出来るからです。
次に、違法なコメントな場合に、コメントをした人に対する責任追及をしたいので、コメントした人の情報を開示しろという請求がされることが考えられます。これについてどのように対応するかも、難しいのですが。プロバイダ責任制限法4条1項は、権利侵害が明白な場合で、開示の必要性がある場合は、(1)氏名、(2)住所、(3)メールアドレス、(4)IPアドレス、(5)侵害情報を送信した日時の開示が義務つけられています。
そこで、権利侵害であることが明らかな場合については、開示に応じなくてはなりません。但し、本人の連絡先が分かる場合は、本人に確認をとらなくてはなりません。ブログの場合、コメントした人の住所や氏名が分かることはほとんど考えられませんし、メールアドレスについては、メールアドレスを入力した場合はメールアドレスが表示されるので、開示の必要性は無いでしょう。
結局のところ、このようなトラブルに巻き込まれないようにするためにも、コメント欄は承認制がおすすめです。
著作権に関する問題
ブログの記事には、ときとして、他人のブログを引用したりすることがありますが、ここで問題になってくるのは著作権です。他人の著作物を勝手に利用する場合、引用等の一定の例外に該当しない場合は、著作権侵害になります。ちなみに、著作権という権利は厳密には存在しません。複製権や公衆送信可能化権などの権利の総称です。
もっとも、実際に何が著作物に該当するのかや、どのような場合に著作権侵害に該当するのかについては難しいところです。また、海外ではパロディーとして利用することは許されていても、日本では許されないなどの国ごとのことなる扱いがあることも、著作権の問題を難しくしている原因となっています。
また、自分が著作権侵害をしていなくても、コメント欄等で著作権侵害が行われていることを放置していたような場合については、ブログ開設者が著作権侵害の責任を負う場合がありますので、ご注意ください。
また、インターネットでは、誰が生み出したかよくわからないキャラクターがかなりありますが、そのようなキャラクターを勝手に商用利用した場合、著作権侵害にならなくてもネット利用者の反発を招くこともあります。「法律で許される=問題ない」ではないのです。
まとめ
今回は、ブログ運営に伴うトラブルについて解説しました。いかがでしたでしょうか。
ネットで生まれたコミュニティはときとして強力な顧客吸引力を生み出します。しかし、ネットの世界を理解しないとビジネスとしては大きな失敗を生むこともあります。
Web2.0の歴史は非常に浅く、新たなビジネスには新しいリスクが伴います。ネットワークを健全に利用して、強力なビジネスツールに発展させていくのが、ブログ利用者の責務といえるでしょう。
(2007年4月執筆)
出身地 大阪
資格 弁護士 大阪弁護士会所属
役職 大阪弁護士会消費者保護委員会会員
大阪弁護士会図書情報処理委員会会員
大阪弁護士会犯罪被害者支援委員会会員
法情報ネットワーク法学会会員
(C) e-hoki/新日本法規出版
e-hoki/新日本法規出版がネットワーク上で提供するコンテンツの著作権は、原則として、e-hoki/新日本法規出版に帰属します。著作権者の承諾なしに、無断で転用することはできません。
