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パワー・ハラスメント

テーマ:労務一般

2007年4月 5日

解説者

弁護士 人見勝行

 企業のコンプライアンス遵守に対する意識が高まり、法令の遵守が社内で徹底される傾向にあります。特に、よく問題となる性的な嫌がらせ(いわゆるセクシャル・ハラスメント)については、担当者を設置して防止ないし改善に取り組むなど、事の重大性は明確に認識されているといえます。


 他方、職権を利用した嫌がらせ(いわゆるパワー・ハラスメント)に関していえば、セクシャル・ハラスメント程には重視されていない感を拭えません。しかしながら、上司の部下に対する一定の限度を超えた言動は、慰謝料請求の対象となることがあるので注意が必要です。


 例えば、業務を管理する者が、監督下の従業員の不始末に対して始末書の提出を求めること自体は、違法ではありません(昭和53年1月11日大阪地方裁判所堺支部決(労働判例304号61頁))。しかしながら、度を越える手段により始末書の提出を強要することは、不法行為を構成する可能性があるのです。この点について、平成2年2月1日東京地方裁判所八王子支部判決(判例タイムズ725号117頁)は、上司が作業のミスや有給休暇の取得に関する反省書等の作成を強要したことに起因して精神的負担を招いたことを認め、反省書等の作成の要求は上司の裁量の範囲を逸脱する違法なものであるとして、早退及び欠勤を理由として支給しなかった賃金の支払と、慰謝料の請求を認めています。


 問題は、不法行為を構成する基準がどこにあるかということです。もとより、殴る蹴るの暴力をふるって始末書を書かせる行為は、そもそも暴力の行使自体が不法行為を構成しますが、言葉による強要が上司の裁量権の範囲を逸脱しているか否かについては、具体的な職場の状況や作成を求める経緯が多様であるだけに、明確な基準を一律に求めることは困難です。


 そこで、前掲裁判例を参照致しますと、判決の理由中では、裁量権の逸脱の有無を個々に認定しています。端的には、製造業を営む会社における上司の部下に対する対応について、上司が部下に対して注意したり、叱責したことは、作業場の慣行や就業規則等に照らして、従業員を指導監督する上で必要な範囲内の行為であったというべきであるから、それらの事項について反省書等を求めたことも、概ね裁量の範囲を逸脱するものではないばかりか、労働者の安全・機械の操作・工程管理・作業方法に関する部下の誤りを是正させるために反省書等を作成提出させるのは、適切な行為であるとしています。他方、渋る部下に対して、休暇をとる際の電話のかけ方のような申告手続上の軽微な過誤について、執拗に反省書等を作成するよう求めたり、後片付けの時間が早すぎるとして作業の再現を求めた上司の行為は、部下の一連の指導に対する誠意のない対応に誘引された苛立ちによるものであって、感情に走りすぎた嫌いのあることは否めず、事柄が個人の意思の自由に関わるものであるだけに、部下に対する指導監督権の行使としては、裁量の範囲を逸脱し、違法性を帯びるものとしています。


 そして、部下の心因反応の直接的な原因が、執拗な追及及び反省書の要求などの裁量権の逸脱行為にあると判断された場合には、会社も使用者として不法行為責任を負うことになり、欠勤期間の賃金及び慰謝料の支払義務を負うばかりか、従業員の管理に関してコンプライアンス違反があるものとして、思わぬ社会的評価の低下を招くことにもなりかねません。


 そこで、例えば、管理職にある従業員に対しては、実際に行った部下に対する監督の方法も日報等により報告させるなどして、監督の方法を検証できるようにするとともに、日報等の作成を行う管理職の従業員に対しても、適正な指導を行う旨を意識させる必要があります。


(2007年2月執筆)


人見勝行 弁護士

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2007年3月13日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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