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電子商取引となりすまし(2)〜なりすまされた者と決済機関との関係〜

テーマ:自社HP・eコマース

2004年12月 2日

解説者

弁護士 土谷喜輝

前回は、他人になりすましてインターネット通販で商品を注文し、決済方法として代引きを利用した場合の問題点を説明しましたが、今回は、より頻繁に起こるクレジットカードなどの決済方法を用いたなりすましの問題点を検討します。クレジットカードは、利用者の署名により、その本人性が担保されているものですが、インターネット上では、署名なしで利用されるため、なりすましがより生じやすいという特徴があります。


クレジットカードを利用してインターネット通販などで商品を購入した場合、申込者と販売店との間では売買契約が成立していますが、申込者とクレジットカード会社との間においてもクレジットカード利用契約が成立することになります。そして、なりすましによりクレジットカードを利用された場合でも、本人は、この利用契約に基づきクレジットカード会社に対して利用料金を支払わなければならないかが問題となります。


本人以外の第三者がした意思表示については、その第三者に代理権がある場合を除いて、本人に効果帰属しないというのが原則です。ただし、表見代理(民法109条、110条、112条)が成立する場合には、本人に効果が帰属します。その要件としては、<1>代理権があるかのような外観の存在、<2>代理権がないことについての相手方の善意無過失、<3>本人の帰責事由です。クレジットカードを利用したなりすましの場合、<1>および<2>は一般的に認められますので、<3>が認められるかどうかが問題となります。以下、具体的事例について検討してみます。


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AがXになりすまし、Xのクレジットカード番号・有効期限を入力して、Y店から商品を購入した場合。商品の配達場所はAの住所とされている。


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クレジットカードは、様々な店で利用されているので、Xがクレジットカード番号・有効期限を他人に知られる機会は数多くあり、このようななりすましが行われることもあります。前回検討した代引きの場合と異なり、なりすましたAは、実際に商品を受領してしまうので、より現実的な問題と言えます。なお、Aが自宅の住所などで商品を受け取ることにしていれば、すぐに見つかってしまうのですが、一般的には架空名義で借りてすぐ引き払う予定の住所地などを利用している場合が多いようです。


Xに帰責事由がある場合

Xが他人にカードを貸与していて利用された場合やクレジットカードの暗証番号まで他人に教えて利用されてしまった場合など、Xに故意または重過失があると認められる場合には、Xは責任を負い、クレジットカード会社からの代金請求に応じる必要があります。


Xに帰責事由がない場合

これに対して、Xが他の店でクレジットカードを利用した時にカード番号と有効期限を控えられており、それを不正に利用された場合などのようにXに故意・重過失がない場合には、Xは責任を負わず、クレジットカード会社に対して支払義務を負わないと考えられます。
クレジットカード会社も調査を行った上、なりすましと判断した場合には、請求を行っていないようです。また、本人が警察へ被害届を提出することなどを条件に保険等を利用して、その損害を補償している場合も多いようです。ただし、クレジットカード会社やカードの種類によっては、この補償の範囲を限定している場合もあり(例えば、被害申告後60日以降に使用されたものに限り支払義務を負わないなど)、自己のクレジットカードが利用された場合には、原則として責任を負うと約款で定められている場合もあります。しかし、本人に全く帰責性がない場合にまで責任を負わせるという約款の有効性には問題があり、少なくとも、署名も行わず、クレジットカード番号と有効期限のみが入力されて(暗証番号等の入力はなされずに)なりすまされたような場合には、本人は責任を負わないと考えるべきでしょう。


インターネットバンキングを利用した場合

近年は、インターネット上で銀行振込を行うことも普及しており、ネットショッピングの決済方法としても利用されています。インターネットバンキングは、クレジットカードと異なり、口座番号以外に暗証番号や乱数表に基づく番号の入力を求める場合が多く、セキュリティは高いと言えます。その分、なりすましが行われた場合、本人の帰責性が認められやすくなり、支払義務を負うことが多いと考えられます。


まとめ

最近では、磁気情報のスキミングによる偽造クレジットカードが大量に出回るなどクレジットカードの不正利用も増加しています。クレジットカードは、最も簡便に利用できる決済手段ですが、なりすましが最も容易に行われるものでもあります。今後の電子認証の普及により、このようななりすましを減少させることは可能でしょうが、同時に、磁気情報に含まれないカード上に記載されている番号や暗証番号の入力などを求めて現状でも対応できる安全対策を行っていくべきでしょう。


<参考サイト>
電子商取引等に関する準則(経済産業省平成15年6月)


土谷喜輝
ニューヨーク州法曹資格

主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000) 等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2003年6月22日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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