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情報の管理意識に注意せよ!

テーマ:自社HP・eコマース

2004年12月16日

解説者

弁護士 小川義龍

1,見えないモノほど意識しないと大変なことになる

前回、著作権、つまり「小説とか音楽とかのアレ」について基本的な知識をお話しした。
この著作権、法律的に分類すれば「無体財産権」と呼ばれる。無体とは、形のないものという意味だ。つまり形はないんだけれども法律によって保護してあげた方がいいものについて、無体財産権という形で権利が与えられる。著作権以外にも、特許権だとか商標権がこれにあたる。一方、形があるものに対する権利は、所有権が代表的なものだ。
しかしこのように法律的に保護されるとはいってみても、人間とは面白いもので、目に見えるものでないとなかなか権利を尊重しようと言う気にならない。例えば、目に見える他人の不動産を勝手に利用処分してしまおうと考える人は少ないだろう。ドロボー感覚がはたらく。
ところが、これが目に見えない他人の著作権となると、ちょっとコピーしたっていいじゃないか、「減るモンじゃなし」ということになりやすい。減らないモノを盗ったってドロボーではないという感覚だ。弁護士である私に身近な例として、トラブルの相談者が、「先生に頼むとお金がかかりますから、電話だけでいいんです。ちょっとアドバイスしてくれませんか」というのに等しい。電話であろうと何であろうと、私のアドバイスは、いわば私の知的財産を分け与えているわけだが、(実際にはまずやらないが)それで相談料を請求したりすれば、その相談者は意外な顔をするだろう。何で電話でちょっと話を聞いただけなのに、と。
このように無体財産権にまつわるトラブルは、「減るモンじゃないのに、ケチ!」という未成熟な意識から出発することが多い。


2,ホームページって手軽に作れる?

私が定期的に相談を受けたり、果てには裁判になってしまったりするケースの一つとして、ホームページ制作にまつわるトラブルがある。
球団の買収でIT企業同志が競い合ったことは記憶に新しいが、昨今勢いのよい業種の一つがIT企業だ。こういったIT企業が台頭するのも、世間がネット社会になりつつあることの証左であろう。既に、ネット抜きにして未来を語ることは困難だ。
そのような状況で、企業家としては、最低限ホームページくらいは作ってみようかと考えているだろう。家庭用の自作ソフトもあるくらいだし、自分で作ってみようか、いやそんな時間もセンスもないから外注しようと言うことに大抵はなるだろう。この時に、ホームページの制作に対してどれだけの手間や知的財産が投入されるかが無理解な企業家が多い。目に見える部分だけでも、紙メディアの会社報を作るのと同じくらいのデザインセンスと労力がかかることは自明だが、ホームページとなるとそのバックグラウンドで人知れず動いているプログラム部分などのノウハウがちりばめられていることが多い。
ホームページのシステム部分を知っていれば、会社報を作る以上のコストになるはずなことはわかりそうなものを、「印刷するわけでもなし、たかがパソコンの画面に写真と絵と文章を貼り付けるだけでこんなに高いわけがない、減るモンじゃなし」ということになる。
そして、日本の取引慣行の悪い部分、つまり契約書を作成しないことはもとより、見積書を出しただけで、あとは何となく阿吽の呼吸でどんどん制作に入って納品してしまう、こんなありがちな取引の実情と、「減るモンじゃなし」感覚がぶつかり合うと、もう制作代金の支払いはなされない。たいがいの注文者は、「契約書はあるのか? なければ払えない。この程度のものプレゼンテーション資料でしょう?」というお約束の言い訳をしてくることになる。いったいあなたの会社では、取引先から、契約書がないなら全ての仕事がプレゼンだよ、と言われて黙って引き下がるのか、といいたい。
実際、裁判にまでなれば、契約書などなくとも、ホームページの制作をして納品していれば、一定額の制作代金を支払えと言う判決が出ることが殆どではある。


3,情報の値段っていくら?

しかしここで問題がある。 目に見えるものなら、それに対する価値は比較的算定しやすい。不動産に関するものであれば、時価があろうし、時価をはじき出すことが難しくとも、路線価なり固定資産税評価額といった基準がある。
しかし目に見えないものに対する価値は算定しにくい。情報の価値といっても情報そのものは通常デジタルデータだ。データそのものは数字に過ぎないから価値はない。むしろ多数のデータによって構築された全体としての何か、に価値があることになる。このため、例えば裁判によって、前掲のホームページの制作代金を支払う必要がありそうな流れになったとしても、それではいったいいくらを払ったらいいのかというところで価値評価が様々になってしまう。
見積書はあくまでも見積書であって、価格算定の手がかりにはなるものの、相手がそれにゴーサインを出していない限りはそのまま制作代金になるものでもない。結局、この段階で、金額に対する当事者双方の温度差がなお縮まらないということになる。
あるホームページ制作絡みの訴訟事件で、担当裁判官がつぶやいたことに、 「契約書作っておいてくれたら、金額でこんなに悩まなくてもよかったんだけどなぁ・・・」と。私としては、「契約書があったら、裁判なんかにはなっていませんよ。」とすかさず弁明したわけだが、もとより裁判官もそんなことは承知だ。つまりそれほどまでに情報の算定は裁判所泣かせ、ということを思わず告白してしまったつぶやきと捉えるべきであろう。


4,社内でもトラブルになることがある

一方、情報に対する価値をないがしろにしていると、社内でもトラブルが発生することがある。
耳目に新しいものとして青色発光ダイオード事件をご存じであろうか。要するに、メーカーの社員が発明した画期的商品に対する権利ないし利益は社員のものか会社のものかということだ。
しかしこのようなトラブルは決してメーカー特有の問題ではない。発明にしろアイデアにしろ著作にしろ、実はかなり広い範囲で無体財産権が成立する可能性がある。ビジネスモデル特許という言葉が数年前にもてはやされたことは記憶にあるまいか。簡単に言えば、ビジネスのやり方も画期的なものであれば権利として保護されうるということだ。そう容易にみとめられるものではないのだが、社員のアイデアは当然会社のものという発想は捨てた方がいい。
逆に、会社のアイデアやノウハウを勝手に社員が持ち出すこともまた問題になりうる。トレードシークレット(営業秘密)といって、個々の情報としては法的権利が与えられていない程度のものでも、ノウハウのレベルで秘密として管理されているような情報を社員が勝手に持ち出したりすると、不正競争防止法違反に問われることがある。


5,情報に対するコンプライアンスを検証する時期に

以上のとおり、情報を「減るモンじゃなし」と考えていたら思わぬトラブルに巻き込まれる。社内でもしっかり情報意識を涵養して管理すべきだ。まして個人情報保護法が平成17年4月1日から施行されることになっている。他人の情報の管理も怠っていては大変なことになりかねない。
 企業経営をしてゆく上で、情報に対する取扱いのコンプライアンスは、是非他企業に先んじて検証されたい。これを実施できる企業は、その企業力が小さくとも、この先のIT経済市場の中で評価されて行くに違いない。情報コンプライアンスが企業成長の鍵を握っているとすら私は思っているのだ。


(2004.12月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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