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法律コラム


2004年11月25日|弁護士 小川義龍

著作権の基礎知識(1)

弁護士 小川義龍

1,小説とか音楽とかのアレ

「著作権」という言葉は誰でも聞いたことがあるだろう。
聞いたことがあっても、では「著作権ってどんなもの?」と問われると、答えられる人は少ないはずだ。せいぜい「小説とか、音楽とかのアレでしょ。」という大雑把なイメージとしてしかわかっていないのではないか。
実はこの著作権、昨今のマルチメディアの隆盛で、各所で問題が起こるようになっている。自分のところは芸術には縁遠いから、「小説とか音楽とかのアレ」は別に関係ないよ、とは必ずしも言えなくなってきているのだ。

2,ソフトウェアのコピー

会社にしろ個人にしろ、最近はパソコンを一人一台以上使う環境が当たり前になってきている。ユビキタス時代の幕開けも近い。いや、携帯電話も立派なパソコン・ネット環境だから、ユビキタス時代はとっくに到来しているのかもしれない。
こんな中で、相変わらず「そのソフト、こんど貸して」という会話が漏れ聞かれることがある。驚くべきは、全く他意なくこういうセリフを言う人が多そうなことだ。つまり筆記具の貸し借りの如く、良さそうなソフトと見れば、貸してくれと言って躊躇がない。
いまさらであるが、ソフトウェアの貸し借りは違法だ。なんだか著作権団体のキャッチコピーのようになってしまうが、これを理解していない人が多い。漠然とソフトウェアの貸し借りは「悪いこと」という認識を持つ人は増えてきているように思う。しかしなぜ悪いのかと問われると答えられない人は圧倒的だろう。なんだかよくわからないが、「小説とか音楽とかのアレ」が問題になるみたいだ、と答えられればよしとしなくてはなるまい。
漠然と「悪いこと」と思っている人でも、「でもコピーしなきゃいいんだろう?」とか、「パソコンのソフトはダメでも、DVDとかならいいんでしょ?」とか言う人もいそうだ。

3,著作権って何よ

著作権は、英語でコピーライト(Copyright)と言う。この英単語を直訳するのが、著作権の本体を解明するのに一番わかりやすい。コピーとは日本語で複製のことだ。ライトとは日本語で権利のことだ。つまり著作権とは、複製する権利、即ち複製をコントロールする権利のことをいうのだ。もちろんそれだけではないのだが、本体は複製コントロール権だ。
ここで複製とかコピーとか、そういう説明をすると、「それじゃ、コピーしなきゃいいんでしょ」と言われかねない。そこで、もう少し意味を説明してみよう。学者が著作権の講義をするわけではないので、イメージを捉えてもらうために学問的正確性は期さないので念のため。
著作権でいうところのコピーとは、他人に使わせることも含めての言葉だと理解して欲しい。物質的にクローンを作るという意味でのコピーばかりではなく、他人がそれをそのまま使ったり利用に供する行為自体もコピーに含まれる。
例えば、画家が絵を描いたとする。この絵は立派な著作物だ。そしてこの絵を画家が画商に売ったとする。画商は、少なくともこの絵の所有権を取得したことは間違いない。物体としての絵、つまりキャンバスという物体に絵の具という物体が載った「モノ」を買ったことは間違いがないから、この絵を転売するも捨てるも画商の自由だ。絵という「モノ」に対する権利は全面的に画商が持っている。
しかし、この絵を、画商が画集として出版したり、美術館に展示したりするのはどうだろうか。実は、この結論は、画商が絵という「モノ」に加えて画家から著作権も譲り受けたかどうかによって変わってくる。もし画家から著作権も譲り受けていたら(或いは許諾を受けていたら)、画集を出版したり美術館に展示することは構わない。しかしそうでなければ著作権侵害になるのだ。著作権というのは、「モノ」そのものに対する権利ではなく、創作的な「表現」という目に見えない価値を対象にしている。キャンバスに絵の具が載った物体ではなく、まさに絵という無体な表現そのものを権利の対象にしているのだ。だから、その絵という「表現」を画集という形で出版することはコピーしたことになって著作権侵害になるし、美術館に展示することは不特定多数の第三者の閲覧に供して絵という「表現」を受けとらさせるという行為としてやはり著作権侵害になる可能性が あるわけだ。

4,著作者人格権なんて不可思議なものもあったりして

この著作権、元々の発想が、文化の保護にある。せっかく創作的な表現をしても、これが何ら保護されないとしたら、後進は先人の表現をいくらでもパクってしまうことができる。先人の苦労は報われない。そうなるとそもそも先人が現れなくなってしまって、文化が発展しない。だから保護してあげよう。そういう発想が一つにはある。
そういう発想があるとすると、著作権というのは、まさにその著作物を創った「先人」の著作物に対する価値観とか、そういう人格的なものをも護ってやならないといけないというところにも行き着く。これが「著作者人格権」といわれるものだ。著作権の本体は複製をコントロールする権利だと言ったが、それに加えて、その著作物に勝手に手を加えられない権利も含まれている。
先ほどの画商が買った絵の例で言うと、画商にもそれなりに絵心があって、どうにも買った絵に一筆描き加えたいと考えたとする。自分が買った絵なんだから、捨てたって破ったって自由なんだから、まして一筆書き加える程度ならやってもいいだろうと考えて、実行してしまうと、これは著作者人格権侵害になってしまう。画家が描いたその絵は、その画家の芸術的人格に基づく表現だ。いかに画商がそれに賛同できなくても、その絵は画家の描いた状態で完結している。これに一筆書き加えるのは画家の芸術的人格を否定するに等しい。だから文化を保護する発想の著作権では、これを許されないものとするわけだ。

5,マルチメディア時代に何が著作権侵害になる可能性があるのか?

今回は著作権のごく概略にちょっと触れてみた。著作権を「小説とか音楽とかのアレ」としか考えていなかったかたにとっては、なるほど、という程度のお話にはなっただろう。しかし、それが実際の会社経営などにどう結びつくのかはなお判然とはしていまい。
そこで次回以降、著作権に関する話題を実際のビジネスに絡めてお話をしてゆくことにしよう。

小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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