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オーナー社長がボケた!?

テーマ:役員・株主

2004年9月30日

解説者

弁護士 小川義龍

1,オーナー社長がボケてしまったら・・・

オーナー会社にとって、会社=自分という意識は根強いだろう。
もちろん、会社は法人だから、法律的にも会計的にも区別しなければならないのは当然だ。しかし、そうはいっても社内的にも取引先的にも、オーナー社長あってこその会社という見方をされることもまた間違いない。特に、オーナー社長自身が創業者で力量があればなおさらのことだ。
こういうオーナー会社で、社長が元気溌剌仕事を続けてゆければ何も問題はない。しかし社長も人間である。いつの日か去らなければならない時が必ず来る。その去り際がボケであったら会社はどうなるだろうか。或いは事故で植物状態になってしまったらどうなるだろうか。


2,奥さんのピンチヒッターはダメ

普通はボケてしまった人の介護は奥さんであるとか子供であるとか親族が行うだろう。生活面での介護としては当然のことだ。
そうすると、会社も介護者となる親族に仕切ってもらえばいいのだろうか。例えば元々奥さんもオーナー社長夫人として事実上会社を切り盛りしていたような場合には、会社にしろ取引先にしろ「社長がボケたのなら、奥さんがピンチヒッターとして当面やってくれるんですよね」と期待されるところ大であろう。
しかし実は、法律上は、このようなピンチヒッターは当然認められるものではないのだ。社内にしろ取引先にしろ、関係者全員がそれで構わないという認識を持っている場合には、事実上、こういうやり方がまかり通ってしまうことも多い。しかし、法律上はダメだ。だから関係者の一部とでも何かトラブルになったときに、大きな法律問題が生ずる可能性をはらんでいる。
その理由はこうだ。即ち、オーナー会社は、会社の株式の過半数以上をその本人が保有していて、自分自身も社長として経営にあたっているケースが多かろう。オーナー会社は、イコール自分自身と考えがちなので、自分はもとより奥さんや子供に至るまで、自分に万一のことがあれば、親族が自分の意志を継いで適当に切り盛りすることに何の問題があろうかということになる。しかし、いかにオーナー会社であろうと、法人として設立されている以上、法律上、オーナーと会社は全く別の存在だ。会社=自分ではない。むしろ会社=他人というのが法律上の理解だ。そうなると、仮に社長や株主が仕事が出来なくなったとしても、会社は会社として今後の方針を立てて行かなくてはならない。見方を変えると、例えば上場企業の社長がボケてしまったとしたら、その社長夫人が出てきてピンチヒッターになるだろうか。誰もそうは考えまい。それと全く同じに考えなければならないということだ。オーナーであるかどうかは法律上関係ない、と覚えて頂きたい。


3,会社休眠の危機にもなりうる

さて奥さんがピンチヒッターになれないとして、そのまま会社を放置してしまうわけにも行かない。なぜなら、社長が不在だと会社は何も営業できなくなってしまう。簡単に言えば、対外文書にハンコを押す人がいなくなってしまうのだ。
では、別の社長を立てるのはどうか。この別の社長として奥さんなり何なり然るべき人を就任させれば文句ないだろう、と思うはずだ。これは確かに正解だ。オーナー会社だからといって、オーナー本人が社長をやらなくてはならないものではない。誰でもいいのだ。しかし、ここが一番大きな問題なのだ。
社長、即ち代表取締役も取締役であることに変わりはないが、この取締役は誰が選任するか。これは株主総会で選任しなくてはならない。役員だとかオーナーの身内が手を挙げて適当に就任することはできない。株主総会の過半数決議で選任することになる。ところが、会社の株式の過半数以上を持っているオーナー自身がボケてしまっては、そもそも株主総会の決議をすることが出来ない。もとより株主総会を開催することすらできない。万事休すだ。
結局、簡単に代わりの取締役を選任することも出来ず、そうなると会社の営業行為もストップしてしまうから、会社は休眠せざるをえない。オーナー自身に確たる意識があったらさぞかし虚しいことだろう。


4,成年後見制度

このような事態を避けるための方法として、成年後見制度を使うことができる。
もしオーナー社長がボケてしまった場合には、親族が家庭裁判所に申立をすることによって、後見人等を選任してもらうことが出来る。後見人等が選任されれば、そのオーナー社長がどのような状況にあれ、後見人等が代わって株主総会での意思表示をしたりすることができる。少なくとも、代わりの役員を選任することまでは可能だし、本人の資産保全も可能だ。
この成年後見制度は、「後見」「保佐」「補助」と本人の症状に応じて3段階のバリエーションがある。完全にボケてしまっているような場合には「後見」の決定を受けて、本人に代わって後見人が専ら資産管理をしてゆくことになる。軽度の場合には「補助」といって、殆ど本人が執り行い、第三者がこれを補助する程度になる。いずれも医師の診断(鑑定)が前提だ。


5,それ以外の予防策

しかしいかに成年後見制度があるとはいえ、ボケてしまってからその申立をして周囲に迷惑をかけるようでは、オーナー社長としては盤石の布石をした経営とはいえまい。優秀な経営者とは、会社や自分にとっての万が一を考えてリスクヘッジできるものであることはいうまでもない。このような観点からすると、今は全く問題が無くても、将来万が一の時のために今何ができるかを考えておく必要もあろう。
その一つとして「後見契約」がある。という契約を予め結んでおけば、わざわざ家庭裁判所に申立などしなくとも、ある程度同じことを実現することもできる。いわば保険的な意味合いで予防できる一つの制度であろう。ただ一定の形式的な要件が必要なので、ただ普通に書類を作っただけでは足りない。弁護士等の専門家に相談すべき事柄だ。
また、取締役の員数を4名以上にしておくという簡単な手もある。商法上、株式会社の取締役の最低人数は3名以上でなくてはならない。オーナー会社の場合は、オーナー社長自身が殆ど切り盛りしている場合もあって、このような場合に、取締役の員数は社長を含めて最低の3人にしかなっていないことが多い。そうなると、社長自身がいなくなってしまうと法定員数を欠くことになるので、先ほどお話ししたように改めて新取締役を選任しなくてはならない。しかし4名以上になっていれば、社長がいなくなっても、3名以上が残ることになるから、その残った取締役の中から暫定的にでも代表取締役を選任すればよい。代表取締役を誰にするかは株主総会の決議事項ではなく、取締役会の決議事項だからだ。
経営は必ずしも営業や経理だけではない。くれぐれも足下をすくわれないように、自分自身のことも(もとより健康管理も)怠らず見つめて頂きたい。


【関連情報】
ビジネスQ&A「事業承継」(J-Net21)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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