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『会社の健康診断はサービスか』

テーマ:労務一般

2006年10月26日

解説者

弁護士 米村俊彦

1 会社で毎年行われている健康診断は、従業員の福利厚生の一環で、従業員に対するサービスの一つだとお考えの方はいらっしゃいませんか。
実はそうではなくて、健康診断を行うことは事業者に課された義務です。
労働者の最低限の労働条件を定める労働基準法とあいまって、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的として、労働安全衛生法が定められています。
労働安全衛生法はこのような目的のために、事業者が労働災害の防止のための最低基準を守ること、快適な作業環境を実現することなど、事業者及び労働者の様々な権利義務を定めており、その一環として、事業者が健康診断を行うことを義務づけています。健康診断を行うことで、労働者の健康保持を実現することを目的としているのです。
このような健康診断は、雇い入れ時、一定の有害業務(高圧室内作業、放射線業務等々)への配置転換や海外派遣の時等、様々な場面で実施することが義務づけられていますが、ここでは、最も一般的であると思われる定期健康診断について一通り説明します。


2 定期健康診断
事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施しなければいけないとされています。なお、深夜業を含む業務や、坑内における業務など、特定の危険な業務に従事させる場合には、1年ではなく、6ヶ月以内ごとに1回実施しなければなりません。
ここでいう「事業者」とは、労働者を使用して事業を行う者のことであり、法人企業であればその法人自体であり、個人企業であれば経営者個人のことをいいます。そして、「常時使用する労働者」とはどのような労働者を指すのかについては、一般的な定義が法には存在せず、いろいろな考え方がありますが、期間の定めのない労働契約により使用される労働者は当然に含まれ、期間の定めがある期間雇用労働者であっても、6ヶ月以上継続して雇用される予定のある労働者を含むとして運用すれば問題はないと考えられます。
なお、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者であっても、一定の要件を満たす場合には、「常時使用する労働者」にあたるとされていますので、注意が必要です。
そして、実際に定期健康診断において診断を実施する項目は、労働安全衛生規則44条に定められており、具体的には、(1)既往歴及び業務歴の調査、(2)自覚症状及び他覚症状の有無の検査、(3)身長、体重、視力及び聴力の検査、(4)胸部エックス線検査及び喀痰検査、(5)血圧の測定、(6)貧血検査、(7)肝機能検査、(8)血中脂質検査、(9)血糖検査、(10)尿検査、(11)心電図検査です。ただし、これらの項目のうち受診者の年齢等によって検査を省略できるものもあり、労働安全衛生規則に細かく規定されています。


3 労働者の義務
定期健康診断を実施するのは事業者の義務ですが、同時に健康診断を受診するのは労働者の義務でもあります。ただし、労働者は、事業者の行う健康診断を受診したくない場合には、自分の選択した医師の診断を受けることも許されます。この場合、その結果を証明する書類を事業者に提出しなければなりません。


4 健康診断結果の扱い等
事業者は、健康診断の結果以上所見のあった労働者の健康を保持するために必要な措置について、3ヶ月以内に医師又は歯科医師の意見を聞く必要があります。そして、必要があるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講じなければならないとされています。
このような義務があることとも関連しますが、事業者は、労働者の健康診断の結果を知る権利を有しています。健康診断の結果は、労働者個人に通知されるとともに、事業者にも通知されています。この点で、プライバシーの侵害ではないかとの疑問の声を聞くことがあるのですが、定期健康診断は労働者の健康を保持するために事業者に課された義務であり、健康診断の結果に応じた措置を採る義務も課されていることからプライバシーに優先します。
ただし、個々人の健康情報は、その個々人にとって重要な情報であり、他人に知られたくないことも多いでしょうから、事業者の側にも配慮が求められます。そこで、健康診断の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはいけないとされており、これに違反した場合には罰則も設けられています。


5 このように、広く一般に行われている会社の健康診断は、決してサービスの一環で行われているわけではなく、詳細に定められた規定に基づいて行われる事業者の義務であり、事業者であれば法人であっても個人事業主であっても実施しなければなりません。労働安全衛生法には、健康診断以外にも労働者の健康の保持及び良好な職場環境の形成のために様々な義務を事業者に課しています。事業者の方は、この機会に労働安全衛生法上の責務を果たしているか、確認されてはいかがでしょうか。


(2006年10月執筆)


米村俊彦

昭和51年4月
 兵庫県神戸市生まれ
平成11年3月
 上智大学法学部卒業
平成12年4月
 司法研修所入所(54期)
平成13年10月
 弁護士登録(第二東京弁護士会)
 現在,栄枝総合法律事務所勤務

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