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債権回収のノウハウ(1)

テーマ:契約・取引

2004年8月19日

解説者

弁護士 小川義龍

1、売掛先が危ない!

前回、倒産した会社が売掛金を支払ってくれなくても、普通は詐欺にはならないというお話をした。倒産してからクレームを付けても、キャッシュはまず満額戻ってこない。
そこで、今回から何回かに分けて、倒産する前に何とか売掛金や貸金といった債権を効率よく回収したらいいか、そのテクニックをお話ししてみよう。


2、無理矢理回収しちゃいけない

倒産したり倒産寸前の会社から、例えば在庫商品を引き上げてしまうとか、什器備品を持って行ってしまったりする会社がある。しかしこれは絶対にやってはいけない。なぜなら、それは犯罪だからだ。立派な窃盗罪になる。
金を払えないなら、あるものを持っていかせてもらう、こういうやり方は、古来から野蛮な債権回収方法として行われている。残念ながら現在でも一部の債権者はこういうやり方をすることがある。しかし、相手の意向を無視して勝手に持って行ってしまうのは窃盗罪以外の何ものでもなく、相手が売掛金を支払ってくれなかったから、というのは全くこれを正当化する理由にならない。
では、相手に引き上げを無理矢理承諾させたらどうか。売掛金が払えないなら持ってゆくぞ、いいな?と言って、無理矢理承諾させてしまってから持ってゆくやり方だ。これも感心しない。こういう場面で、拒否できる債務者は少ないから、無理矢理承諾させる行為は強要罪とか恐喝罪に該当する可能性がある。仮に債務者が真実任意に引き上げを承諾したとしても、後に法的倒産手続に入った場合には、こういった引き上げや弁済行為は裁判所によって否認される可能性も大だ。犯罪にはなるわ、せっかく引き上げたものも返さなければいけないわ、踏んだり蹴ったりになる可能性があるから、やはり止めた方がいい。


3、そこで、頭を使おう

とはいえ、売掛金が焦げ付きそうな会社に多少の現金や債権、在庫商品があるのに、これを指をくわえてみているというのも合点がいくまい。
そこで、こんな方法を試してみたらどうだろうか。


(1)その会社が第三者に対する売掛金を持っている場合
この場合、その売掛金を債権譲渡してもらうという方法がある。債権譲渡してもらうには、相手の会社と任意に合意しなくてはならないが、契約書などを鷹揚に作る必要はない。債権譲渡通知書という文章に相手の会社に記名押印してもらって、それを内容証明郵便で当該第三者に発送してもらえばいいのだ。この発送作業は、こちらでやってしまって構わない。


(2)その会社に自社が納品した在庫商品がある場合
この場合、相手先に返品伝票を切ってもらって返品してもらえばよい。これはよくあることだろう。正式な返品伝票が切れないような緊急の場合には、相手先の会社の誰かに、返品を承諾する旨の一筆を書いてもらったらいい。このとき、前述のような強要にならないように注意する必要がある。


(3)その会社に他社が納品した在庫商品がある場合
この場合は多少注意が必要だ。返品伝票を切ってもらっても、自社が納品した商品ではないから、当然に受け取る権利があるわけではない。そこで、自社の売掛金相当額の当該他社売り商品を改めてその会社との間で売買契約を結ぶ。そうして、いま回収しようとしている自社の売掛金と、相手先の会社と今結んだ売買契約に基づく買掛金とを相殺してしまう。これで、キャッシュとしての売掛金の回収はできなくとも、その売掛金相当額の商品を入手することはできるわけだ。この売買契約は、契約書を作らなくとも、注文書+注文請書程度の最低限の書類で構わない。


4、大きな注意点を一つ

以上の方法は、一つのテクニックではあるが、完璧ではない。
なぜなら、これが倒産寸前に行われた場合には、法的手続きの中でこれらのテクニックも否認される可能性が大いにあるからだ。あくまでも倒産寸前ではなく、ぎりぎりで資金繰りはしている様子だが、なかなか売掛金を支払ってくれない会社に対するテクニックだと覚えて欲しい。
また、顧問弁護士などがいれば、予めよく指導を受けながら行うべきやり方でもある。危急時の債権回収は、素人が勝手に手を出すと、犯罪に問われたりせっかく回収したものを取り戻されてしまったり思わぬやけどをする可能性があるからだ。
(次回に続く)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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