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裁判いらずの公正証書

テーマ:契約・取引

2005年2月17日

解説者

弁護士 小川義龍

1,公正証書

公正証書という言葉を聞いたことがあるだろう。
イメージとしては、「なんとなく契約書の凄いやつみたいな」という感じをお持ちではなかろうか。正解。そのイメージはまずまず正しい。
この「契約書の凄いやつみたいな」公正証書は、使いどころを知っていれば、弁護士も裁判官も商売あがったりになるほどの効果があるのだ。


2,普通の契約書と公正証書の違い

たいがいの契約書は公正証書化することができる。公正証書にするには、最寄りの公証人役場に行って「作って下さい」と頼めばいい。もちろん、契約書を公正証書にする場合には、既に出来上がっている契約書があったとしても、公正証書にするに際して改めて契約の両当事者の署名押印(意思確認)が必要だ。一方当事者が勝手に公正証書にしてしまうわけにはいかない。
例えば、ある人が1000万円を借りたとする。
これを<借用証>というタイトルの書面にして、「本日金1000万円借り受けました。つきましては、○月○日までに一括してお返しします。云々」といった文章を書いて、借りた人に差し入れる。これはこれで有効な法律文書だ。


3,有効な文書ってなに?

弁護士が受けるありがちな法律相談の一つに、借用証なり文書を見せられて「先生、これは有効な文書でしょうか?」と尋ねられるというのがある。
実は、文章に有効も無効もない。尋ねる方としては、文書が有効かどうかが気になっているのではなくて、「先生、これで<回収できる>でしょうか」ということを尋ねたいわけだ。そのような観点からすれば、手書きのつたない文章であろうと、不動文字で印刷された定型の借用証書であろうと、さらには公正証書になっていようと、全て「借りた証拠にはなる」有効な文章だ。
しかし、お金を返してくれないために回収したいという場合に、その文章自体を持っていれば即回収できるかどうかは別問題だ。
文書が有効だということになれば、その文書を電車のチケットよろしく握りしめて現場に赴けば、裁判官だかなんだか正義の味方が金を返さない相手からキャッシュをふんだくってくれる、その引換券なんだから大切にしまっておかなくては、と大いに誤解している向きが多い。文書が有効であっても、それが返済金の回収チケットにはならないのだ。


4,裁判をするのが原則

お金を払わない相手から強制的にお金を回収する方法は、法律上「強制執行」というが、この強制執行をするためには、裁判を起こして「勝訴判決」をもらっておかなくてはならないのが原則だ。
つまり、(1)裁判で勝つ → (2)強制回収
という2段構えで漸くお金の回収ができる。ずいぶん手間がかかって面倒なもんだと思われるかもしれないが、それが法律だから仕方がない。この裁判で勝つための証拠として、借用証書などの有効な文書類が使えるわけだ。決して、強制回収するためのチケットとして直接使えるわけではない。


5,公正証書なら裁判を省ける

ところが、おなじ借用証書の文言が書いてあっても、これが公正証書になっていたとしたら、裁判で勝つ必要がない。つまり、公正証書そのものをチケットとして強制回収の手続を直ちに行えるのだ。これは凄い。なぜなら、裁判で勝つこと自体が、弁護士を依頼して時間と費用をかけて行うことが多い作業なのに、これを省くことができるからだ。
したがって、将来紛争になった場合に、裁判を省いて直ちに強制回収の手続に入りたいと考えるようなお金の絡む取引では、予め公正証書を作成しておくのが正解だ。作成の時点で、公証人に対して手数料を納める必要があるが、保険的意味合いで考えれば安いものだろう。
なお、似た制度に簡易裁判所の「即決和解」という制度もある。公正証書よりも作成手数料が安く、金銭問題に限られないというメリットがあるが、他方で一種の裁判手続きであるため柔軟性に欠き都市部では数ヶ月待ちという時間もかかる。このため公正証書とはケースバイケースで使い分けたらよい。
「契約書の凄いやつみたいな」公正証書どころか、弁護士や裁判官いらずの公正証書なのである。


(2005年2月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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