本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

企業が破産しても従業員の方に賃金を確保させる法的仕組みがあります。

テーマ:企業統制・リスク管理

2007年3月 8日

解説者

弁護士 田中弘人

本コラムをお読みの方には無縁と思われますが、経営者の方が資金繰りに窮して自ら命を絶たれたとの新聞記事を未だに目にします。従業員の方に賃金が支払えないことを苦にされた方も数多くいらっしゃったようです。
ただ、賃金に関して申し上げれば、企業が破産しても、必ずしも全額とは言えませんが、従業員の方に賃金を確保させる法的仕組みがあります。この点で、破産=従業員の方への賃金支払いはなし、と考えるのは早計です。今回は、この法的仕組みの概略をご紹介します。なお、紙面の都合上、今回は破産手続がなされたケースをとりあげます。


1 破産手続において賃金を確保させる方法

破産手続では、破産した企業の財産は各債権者への平等な按分弁済にあてられるのが原則です(弁済率は、債権額の数%が常態です。)。とすると、従業員の方が確保できる賃金も、未払額の数%しかないようにも思えます。
しかし、破産法上、賃金債権は以下のように優遇されています。
(1)破産手続開始決定前3ヶ月分の賃金債権は財団債権として優遇され、破産債権に優先して随時に弁済を受けることができます。
(2)破産手続開始決定前4か月以前の賃金債権でも、優先的破産債権として、破産債権の中では優先的に弁済を受けることができます。ただ、この優先弁済は、財団債権の支払い後、なお財産に残余がある場合に限られます。
このように、破産手続上、従業員の方は、(1)・(2)の優先権を主張することで、賃金を確保することができます。


2 未払賃金の立替払制度を利用して賃金を確保させる方法

また、従業員の方は、これからご紹介する未払賃金の立替払制度を利用して、賃金を確保することもできます。


(1)未払賃金の立替払制度とは?
企業が「倒産」したために、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について労働者健康福祉機構が事業主に代って支払う制度です。
ここでの「倒産」には、破産手続等が開始された場合はもちろん、これらの法的手続は開始されていないが、事実上、倒産していると労働基準監督署長が認める場合も含まれます。


(2)どのような場合に立替払いを受けることができるのか?
以下の要件を満たしていることが必要です。
[1] 労災保険の適用事業で1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業(法人、個人を問いません。)に、労働者として雇用されていたこと。
[2] 企業の倒産に伴い退職し、未払賃金があること(ただし、未払賃金の総額が2万円未満の場合は、立替払いを受けられません。)。
[3] 次のいずれかに該当すること。


  • 破産等の場合→裁判所に対する破産手続開始等の申立日の6か月前の日から2年の間に、企業を退職した人であること。
  • 事実上の倒産の場合→労働基準監督署長に対する倒産の事実についての認定申請日の6か月前の日から2年の間に、企業を退職した人であること。

(3)立替払いは賃金全額について受けることができるのか?
全額ではありません。立替払いの額は、退職日の6ヶ月前の日から労働者健康福祉機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している未払定期賃金・同退職手当の合計額(未払賃金総額)の100分の80の額です。
ただ、立替払いの対象となる「未払賃金総額」には退職時の年齢に応じて限度額が設けられています。この限度額を超えた場合は、その限度額の100分の80の額となります。限度額の詳細については、労働者健康福祉機構の下記HPに記載がありますのでご参照下さい。
労働者健康福祉機構 http://www.rofuku.go.jp/kinrosyashien/miharai.html


(4)どのような手続によって立替払いを受けられるのか?
[1] 破産した企業の財産を管理する破産管財人又は裁判所から、破産の申立日・未払賃金額等を証明する「証明書」の交付を受け、その他必要事項を記入のうえ労働者健康福祉機構に提出します。
[2] 労働者健康福祉機構は、提出された書類を審査し、請求の内容が法令の要件を満たしていることを確認したうえ、請求者が指定した金融機関を通じて立替払金を支払います。


以上のとおり、企業が破産することがあっても、従業員の方は、破産手続や未払賃金の立替払制度を利用して、一定額の賃金を確保することができます。
確かに、企業の破産は従業員の方にとって大きな負担となります。ただ、一方で、これらの法的仕組みを利用すれば、その負担をある程度軽減することができることも事実なのです。この点から、破産=賃金支払いはなし、と考えることは早計とお分かりいただけるのではないでしょうか。
なお、このご紹介は紙面の都合上概略にとどまります。詳細については弁護士・破産管財人・労働者健康福祉機構にご確認いただく必要があることを付言させていただきます。


(2007年2月執筆)


弁護士 田中弘人(たなかひろと)

1994年 早稲田大学法学部卒業
1999年 司法試験合格
2001年 弁護士登録(横浜弁護士会)
現在    立川法律事務所所属

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ