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法律コラム


2007年3月15日|弁護士 南繁樹

M&Aと税務(その5)

一 商法・会社法と税法


 前回は、適格合併を紹介しました。適格合併の場合には、法人段階での課税と株主段階での課税のいずれも生じません(先送りされます)。その理由は、合併前後で経済的実態には変更がなく、課税を行うのが妥当でないからです。
 このような組織再編税制は、企業のリストラクチャリング促進に大きな役割を果たしました。すなわち、平成13年以降の商法改正によって、株式交換・株式移転や会社分割が創設され、会社の柔軟な組織再編が飛躍的に容易になりましたが、これと軌を一にして、課税が組織再編の支障とならないように組織再編税制が整備されました。商法や会社法で多様な制度が創設されても、それらを利用する際に課税が生じるのでは、実際には活用できません。その意味で、税法の果たす役割が大きいといえるのです。


二 三角合併


 商法改正で整備された組織再編制度を、さらに一歩進めるのが会社法における組織再編の対価の柔軟化です。特に、三角合併が目玉とされています。これは、買収者が子会社を設立し、その子会社が親会社である買収者の株式を対価としてターゲット(対象会社)と合併するものです。この場合、買収者は現金の代わりに自社の株式を発行すればよいので、現金流出が避けられます。株式交換と同じ効果がありますが、外国会社が利用できる点がポイントです。このため、対価の柔軟化により外資による買収を促進されるとの声が高まり、施行が一年間延期されていましたが、今年5月1日から施行されます。


三 三角合併の税務


 会社法上の制度が設けられても、税法上の仕組みが明らかになってはじめて利用可能な制度かどうかが分かります。そこで、三角合併の際に課税が生じるかどうかが問題になります。
 税務上は、合併は個々の資産及び負債をまとめて移転するものとされます。このため、被合併法人(消滅会社)に資産の譲渡によるキャピタル・ゲインへの課税が生じ、また、株主には被合併法人に留保されていた(蓄えられていた)利益が吐き出されたとして、配当を受領したものとして課税されるのが原則です。この例外が適格合併ですが、三角合併も適格合併と認められるのでしょうか。
 この点について、昨年12月に公表された自民党及び財務省の平成19年度税制改正大綱(以下、「大綱」といいます。)は、合併などの組織再編について、自社の株式ではなく親法人株式を対価とする場合も組織再編税制に含み、適格要件を充足する場合には、課税が繰り延べられることを明らかにしました。つまり、三角合併も適格合併として課税を当面行わない(先延ばしにする)こととされたわけで、この点では、三角合併は利用しやすくなったようにみえます。


四 外国親会社の場合

 第三者間の合併である共同事業のための合併の場合、従来は、合併の当事者である合併法人(存続会社)と被合併法人(消滅会社)の間において適格要件が要求され、両者の事業が相互に関連することなどの要件を満たす場合に課税が繰り延べられるものとされていました。
 ところが、三角合併の場合、典型的には、買収者である外国会社が買収の受皿会社としての特別目的会社をペーパーカンパニーとして設立して、その会社が存続会社となってターゲットである消滅会社と合併することが想定されています。従来の組織再編税制が改正されない限り、ペーパーカンパニーでは適格要件を充足せず、結局、課税が発生してしまいます。
 この点に関し、自民党の大綱には、「共同で事業を行うための組織再編成に該当するか否かを判定する要件である『事業性』及び『事業関連性』について、運用面での取扱いの明確化を図るため、その判断基準を法令上明記する方向で具体的に検討を行う。」との記載があります。ペーパーカンパニーの場合は適格要件を充足しないようにも解されますが、具体的にいかなる場合に課税が生じるものとなるのかは、法人税法や関連する法令・規則において明らかにされるものと思われます。この規定の仕方で、外国会社によって三角合併が利用されるかどうかが左右されることになります。今後の議論が注目されます。

(2007年1月執筆)

南繁樹 (ミナミシゲキ)
弁護士 ( あさひ・狛法律事務所 )

(経歴)
1995年 東京大学法学部卒
1997年 弁護士登録(東京弁護士会)
2002年 米国ニューヨーク大学ロー・スクール修士(会社法)
2003年 同ロー・スクール修士(租税法)
2003年 ニューヨーク州弁護士登録
2005年 LEC会計大学院教授(租税法)

(著作)
主要論文 「有価証券報告書虚偽記載とディスクロージャー上の問題点」(ビジネス実務法務 2005年3月号)、「各種防衛策と新会社法の影響」(税務弘報2005年10月号)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2007年2月9日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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