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M&Aと税務(その2)

テーマ:事業承継・再生・廃業

2006年12月 7日

解説者

弁護士 南繁樹

一 M&Aと税務

今回は、前回に続き、M&Aにおける税務の重要な考え方を紹介します。なお、以下に示す計算は概算であり、実際には、さらに複雑な計算が必要です。


二 事業譲渡と課税

前回は、株式の譲渡による買収を取り上げました。これに代わるものとして、会社から事業を譲り受ける形での買収もあります。


1 売主である会社の課税
事業譲渡による買収は、税務上は、個々の資産及び負債の譲渡として扱います。従って、例えば、譲渡された事業に複数の不動産や動産が含まれているとすれば、個々の不動産や動産について適正な時価を算定した上、その時価から売主における帳簿価額を引いて、個々の資産の譲渡益(キャピタル・ゲイン)を算定します。この譲渡収入から譲渡減価(株式の取得価額)を控除したものが、売主である会社の益金または損金になります( 法人税法 第22条第2項・第3項)。例えば、帳簿価額1億円の建物の時価が10億円であれば、9億円が益金になり、その40%の3億6000万円が税額となります。
買主が支払った金額が、個々の資産の時価を算定し、それを積み上げた金額を上回ることがあります。例えば、個々の不動産や動産の時価の合計額が90億円であるのに対し、買主は事業全体を100億円で購入した場合です。この場合には、その差額である10億円は、個々の資産を超えた収益力を示す「営業権」に対する対価とされます。税務上は「資産調整勘定」と呼びます(法人税法62条の8第4項・第5項)。この営業権に対して支払った価額10億円は、売主の益金として課税対象となります。
なお、資産(建物や動産等)の譲渡につき消費税が発生しますが、土地、有価証券および貸付金等の譲渡は非課税です( 消費税法 第4条第1項・第6条第1項。)。


2 買主の課税
買主が買収のために支払った金額は、買主における個々の資産の取得価額として割り付けられます。この金額のうち、建物や機械、さらに営業権に割り付けられた金額は、減価償却により費用化(損金化)され、将来の税金を減らす効果があります(法人税法第31条第1項)。例えば、上記の資産調整勘定10億円は60ヶ月で均等償却されますので、概算で1年間に2億円の損金を生じさせ、約8000万円の税金を減らす効果があります。
なお、買主には、不動産取得税( 地方税法 第73条の2第1項)や登録免許税( 登録免許税法 第2条)の負担もあります。


3 売主である会社の株主の課税
事業譲渡は、会社が行う取引であり、それ自体では株主に課税関係は発生しません。但し、会社が全ての事業を譲渡した後、金銭を分配して清算した場合には、株主へ交付された金額につき、一部は配当、一部は株式の譲渡損益として課税されます。詳しく述べると、交付金額のうち、会社の利益積立金(留保利益)に対応する部分は、配当とみなされて課税されます( 所得税法 第25条第1項第3号・ 所得税法施行令 第61条第2項、法人税法第24条第1項第3号・ 法人税法施行令 第23条第1項第3号)。さらに、交付金額のうちみなし配当額を控除した残りの部分が譲渡収入とされ、そこから株式帳簿価額を控除した差額が株式の譲渡損益として課税されます(所得税法第33条、 租税特別措置法 第37条の10第3項第3号、法人税法第61条の2第1項・第7項)。


4 適格現物出資
以上のように事業譲渡に課税がなされると、事業の再編の障害となります。そこで、グループ内での事業の移転においては、事業への支配が継続しているとみられる限度において課税が繰延べられます(法人税法第62条の4第1項)。
具体的には、グループ内の会社への現物出資(株式と引換えに事業を出資する場合)です。<1>親会社から、発行済株式の100%を保有している子会社への譲渡の場合と、<2>親会社が50%超・100%未満を保有している子会社への譲渡の場合があります(法人税法第2条第12号の14イ・ロ)。後者の場合には、事業支配の継続性があるといえるために、主要な資産・負債や、従業者の80%が維持されていることなどが必要です。
さらに、共同で事業を営むための事業譲渡についても、繰延べが認められます(法人税法第2条第12号の14ハ)。課税が企業再編を阻害しないようにするためです。
適格現物出資の場合も、消費税や不動産取得税・固定資産税の負担には変わりがありませんので、注意が必要です。


三 次回は、合併について、取り上げます。

(2006年9月執筆)


南繁樹 (ミナミシゲキ)
弁護士 ( あさひ・狛法律事務所 )
(経歴)
1995年 東京大学法学部卒
1997年 弁護士登録(東京弁護士会)
2002年 米国ニューヨーク大学ロー・スクール修士(会社法)
2003年 同ロー・スクール修士(租税法)
2003年 ニューヨーク州弁護士登録
2005年 LEC会計大学院教授(租税法)

(著作)
主要論文 「有価証券報告書虚偽記載とディスクロージャー上の問題点」(ビジネス実務法務 2005年3月号)、「各種防衛策と新会社法の影響」(税務弘報2005年10月号)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年9月15日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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