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M&Aと税務(その3)

テーマ:事業承継・再生・廃業

2006年12月21日

解説者

弁護士 南繁樹

一 合併と課税(非適格合併)

(その2)はこちら


今回は、会社の組織再編成として行われるM&Aの典型である合併を取り上げます。なお、以下に示す計算は概算であり、実際には、さらに複雑な計算が必要です。
合併は、税務上は、(1)消滅会社から存続会社への資産及び負債の移転という側面と、(2)消滅会社から消滅会社株主に対する存続会社株式の交付という二つの側面があります。また、課税上の効果については、「適格合併」と「非適格合併」に大別され、このいずれに該当するかで発生する税金が大きく異なります。今回は、税法上、原則とされている非適格合併を取り上げます。


二 消滅会社の課税関係

消滅会社(被合併法人)と存続会社(合併法人)との間では、消滅会社がその所有する全ての資産及び負債を存続会社に譲渡し、存続会社は対価として存続会社の株式(及びその他の資産)を交付する取引がなされているとみることができます。従って、消滅会社は資産を譲渡したことによる譲渡損益(譲渡価額−帳簿価額)に対して課税を受けます( 法人税法 第62条第1項・第2項)。この点において、合併と事業譲渡は類似します。
従って、消滅会社が不動産や動産を所有しているとすれば、個々の不動産や動産について適正な時価を算定した上、その時価から消滅会社における帳簿価額を引いて、個々の資産の譲渡益又は譲渡損(キャピタル・ゲイン/ロス)を算定します(法人税法第22条第2項・第3項)。例えば、帳簿価額1億円の建物の時価が10億円であれば、9億円が益金になります。税率は、法人税・住民税(法人税割)・事業税の合計で約40%ですので、約3億6000万円が税額となります。
他方、消滅会社は、存続会社から存続会社株式を取得して、直ちに消滅会社株主に交付したとみられます(法人税法第62条第1項)。この点については、取得価額と譲渡価額が等しいので、課税は生じません。
なお、合併は、消費税の対象となる「資産の譲渡等」に該当しないと解されていますので、消費税を心配する必要はありません( 消費税法 第2条第1項第8号)。


三 存続会社の課税関係

存続会社においては、消滅会社の資産及び負債を引継ぎ、その対価として存続会社株式(及びその他の資産)を交付するものと捉えられます。資産及び負債については、時価で取得したものとして扱われるので、存続会社における帳簿価額は時価となります。
なお、存続会社には、登録免許税( 登録免許税法 第2条)の負担もあります。


四 消滅会社の株主の課税

消滅会社とその株主の間の側面においては、消滅会社株主がその所有する消滅会社株式を消滅会社に譲渡し、その対価として、消滅会社は、(存続会社が消滅会社に交付した)存続会社株式(及びその他の資産)を消滅会社株主に交付するものと考えます(法人税法第62条第1項)。この場合、消滅会社は解散しますので、株主に対する消滅会社の残余財産の分配と捉え、配当と取り扱います。つまり、株主に対する存続会社株式の交付を、一種の現物配当とみるわけです。この「みなし配当」の金額は、株主に交付された存続会社株式の時価が、消滅会社の資本金等の額のうち「交付の基因となった株式に対応する部分の金額」(※)を超える場合の、その超える部分の金額とされています(法人税法第24条第1項第1号、法人税法施行令第23条第1項第1号、 所得税法 第25条第1項第1号、 所得税法施行令 第61条第2項第1号)。これは、消滅会社に留保されていた(株主への)課税前の利益、すなわち、利益積立金に相当する額です。
※=〔消滅会社の資本金等の額〕
×〔株主の所有していた消滅会社株式の数〕÷〔消滅会社の発行済株式総数〕
みなし配当課税のほか、株式の譲渡損益課税が生じる場合もあります。これは、消滅会社の株主に対し、存続会社株式以外の資産が交付された場合に限られます(法人税法第61条の2第2項、 租税特別措置法 第37条の10第3項第1号)。この場合、株主に交付された存続会社株式の時価からみなし配当額を控除した額が、譲渡対価の額(収入金額)とされ、その額と消滅会社株式の譲渡原価の額(取得価額)との差額が、株式の譲渡損益となります(法人税法第61条の2第1項、租税特別措置法第37条の10第3項第1号・第1項)。


五 まとめ

以上のとおり、消滅会社においては資産についての時価課税、消滅会社株主においてはみなし配当課税(及び株式の譲渡損益課税)が行われます。これが合併を行う際の障害となることは言うまでもありません。そこで、次回は、課税が繰り延べられる適格合併について、取り上げます。


(2006年10月執筆)


南繁樹 (ミナミシゲキ)
弁護士 ( あさひ・狛法律事務所 )
(経歴)
1995年 東京大学法学部卒
1997年 弁護士登録(東京弁護士会)
2002年 米国ニューヨーク大学ロー・スクール修士(会社法)
2003年 同ロー・スクール修士(租税法)
2003年 ニューヨーク州弁護士登録
2005年 LEC会計大学院教授(租税法)

(著作)
主要論文 「有価証券報告書虚偽記載とディスクロージャー上の問題点」(ビジネス実務法務 2005年3月号)、「各種防衛策と新会社法の影響」(税務弘報2005年10月号)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年10月27日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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