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M&Aと税務(その4)

テーマ:事業承継・再生・廃業

2007年1月25日

解説者

弁護士 南繁樹

一 合併と課税(適格合併)

合併は、法律上は組織再編という組織法上の行為であり、消滅会社と存続会社の法人格が合一するものと説明されます。しかし、税務上は、あくまでも個々の資産及び負債をまとめて移転するものに過ぎません。従って、資産の譲渡によるキャピタル・ゲインへの課税が生じます。また、会社と株主の間においては、消滅会社に留保されていた(蓄えられていた)利益が吐き出されるものと捉えられ、株主は配当を受領したものとして課税されます。


二 適格合併

以上の原則に対する例外が「適格合併」です。適格合併の場合には、法人段階での課税と株主段階での課税のいずれも生じません(繰延べられます)。その理由は、法的には合併という組織再編があっても、経済的実態として移転される資産への支配が継続される場合には、経済的実態には変更がなく、課税を行うのが妥当でないと考えられるからです。そのような場合は二つあります。一つは、グループ内での合併、もう一つは、共同事業のための合併です。


三 グループ内での合併

1 100%支配関係
グループ内での合併は、さらに二つに分かれます。一つは、100%親子会社など、100%の支配関係がある会社の間における合併です。この場合には、もともと支配が完全に共通しているので、そのような会社同士の間で合併を行っていても、資産に対する支配は継続しているといえ、課税関係が生じません。
2 50%超・100%未満の支配関係
100%支配関係がなくとも、過半数支配がある会社同士、あるいは共通の親会社の支配下に置かれている会社同士であれば、合併をしても移転資産に対する支配の継続性が認められる基礎があります。ただし、100%支配ではない分、さらに支配の継続を根拠付けるための要件が必要です。まず、事業の継続が要求されます。次に、企業は「人」と「モノ」から成り立つものですので、従業者の引継ぎ(80%の引継ぎが必要です。)、資産・負債の引継ぎ(「主要な」資産・負債の引継ぎが要求されます)。
要は、同一支配下にある企業内の合併では、(1)「事業」(2)「人」(3)「モノ」が維持されれば課税が生じないと理解できます。


四 共同事業のための合併

支配関係が存在しない第三者の間のM&Aにおいても、適格合併と認められる場合があります。この場合、単なる資産・負債の譲渡ではなく、移転資産に対する支配が継続していることが積極的にいえなければなりません。そこで、(1)事業の継続、(2)従業者の引継ぎ、(3)主要な資産・負債の引継ぎに加えて、以下のような要件が付加されます。
まず、(4)双方の事業に関連性があることが必要です。そうでなければ、共同事業といえないからです。次に、(5)双方の規模に大差がないこと(5倍以内)又は双方が経営に参画すること(どちらの会社からも常務以上の役員が就任すること)が必要です。一方が他方に呑み込まれるような合併では、呑み込まれた会社は移転資産に対する支配を譲り渡したことになるからです。さらに、(6)従来の消滅会社株主が交付される存続会社株式を継続して保有する見込みが必要です。この要件は、消滅会社株主が、存続会社の株式の保有を維持することで、間接的に投資利益を維持することを要求するものです。
まとめると、第三者間のM&Aでは、「事業」「ヒト」「モノ」の維持に加え、「事業の関連性」、ある程度の「対等性」及び「株主レベルでの投資の継続性」が必要といえます。


五 共通の要件

以上のいずれについても、消滅会社株主に存続会社株式以外の金銭が交付されることが前提です。金銭は支配(の一部)の対価であり、株式・事業の売却と異ならないからです。また、支配に関する要件は、支配状態が合併後も維持されることが前提となります。


六 M&Aと適格合併

適格合併は、様々なM&Aの形態の中でも税負担が軽い形態として重要です。


(2006年12月執筆)


南繁樹 (ミナミシゲキ)
弁護士 ( あさひ・狛法律事務所 )
(経歴)
1995年 東京大学法学部卒
1997年 弁護士登録(東京弁護士会)
2002年 米国ニューヨーク大学ロー・スクール修士(会社法)
2003年 同ロー・スクール修士(租税法)
2003年 ニューヨーク州弁護士登録
2005年 LEC会計大学院教授(租税法)

(著作)
主要論文 「有価証券報告書虚偽記載とディスクロージャー上の問題点」(ビジネス実務法務 2005年3月号)、「各種防衛策と新会社法の影響」(税務弘報2005年10月号)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年12月12日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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