本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

違法なホームページのレンタルサーバ業者の責任

テーマ:自社HP・eコマース

2006年8月24日

解説者

弁護士 土谷喜輝

あるホームページの内容が自社の商標権を侵害するとして、そのホームページのレンタルサーバ業者に対し、ホームページ開設者の情報開示と損害賠償を求めた訴訟の判決が平成18年4月26日、東京地裁で出されました(平成17年(ワ)第24370号損害賠償等請求事件)。東京地裁は、プロバイダ責任制限法に基づき一定の情報の開示を認めましたが、損害賠償請求については棄却しました。他人の商標権を侵害するような内容を掲載しているウェブサイト開設者が損害賠償請求を受けるのは当然ですが、このような者にサーバを貸していただけでも責任を問われることがあるのかが本件で問題となりました。


事案の概要

原告は、株式会社平和という大手パチンコメーカーであり、被告は、レンタルサーバ業等を行う会社でした。被告は、平成17年8月頃、ある者(以下、「本件契約者」といいます)とレンタルサーバ契約を締結し、同契約に基づき、被告保有のレンタルサーバにウェブページを開設させました。本件契約者は、そのウェブサイトの中で「Project HEIWA」、「プロジェクトヘイワ」との名称でパチンコ機の打ち子を募集し、パチンコ機の攻略情報を提供していました。 原告代理人弁護士は、平成17年9月26日、被告に対し、上記ウェブサイトが原告の商標権を侵害し、不正競争防止法にも違反している(以下、まとめて「商標権侵害等」といいます)ので、本件ウェブサイトを閉鎖し、本件契約者の情報提供をするよう要求しました。これに対し、被告は代理人弁護士を依頼して回答を行うなどするとともに、同時に本件契約者に連絡を取ろうとしていた。本件契約者とは、うまく連絡が取れなかったが、最終的に同年10月6日に連絡が取れ、本件ウェブサイトの送信を停止することの了承を得ることができたため、同日、送信を停止しました。


原告の損害賠償請求の根拠

原告は、被告に対して、以下の理由により損害賠償を求めました。 〈1〉被告は、原告からの通知を受け取った後も平成17年10月6日まで本件ウェブサイトの送信を停止しなかったのであり、発信者として商標権侵害等の責任を負う。 〈2〉仮に、被告が発信者と認められなくとも、原告からの通知を受領後は、商標権侵害等を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったので、プロバイダ責任制限法3条1項1号または2号により賠償責任を負う。 〈3〉原告の商標権等の侵害は明らかであるにもかかわらず、被告は、本契約者の発信者情報を開示しないので、重大な過失があり、プロバイダ責任制限法4条4項に基づき責任を負う。


裁判所の判断

裁判所は、本件ウェブサイトが原告の商標権等を侵害していることは認めつつ、以下のような理由により、原告の損害賠償請求を棄却しました。 すなわち、本件ウェブサイトは、デッドコピーのように「HEIWA」や「ヘイワ」そのものが使用されていたわけではなく、商標権等の侵害の判断には、それなりの困難さがあった。したがって、被告を本件契約者と同視することはできず、発信者とは言えないので〈1〉の請求は認められない。また、同様に、平成 17年10月6日までに本件商標権等の侵害について知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったとも認められず、〈2〉の請求も認められない。さらに、裁判所の第1審判決も出されていない現段階において本件商標権等が侵害されたことが明らかであるとまでは言えず、また、原告が発信者情報の開示請求権を有していることを知らなかったことにつき、被告に重過失があるとまでは言えず、〈3〉の請求も認められない。


評釈

原告から通知を受領後、それなりの対応をして、10日後にウェブサイトの送信を停止した被告に対して、商標権侵害等の損害賠償責任(〈1〉および〈2〉)が認められなかったのは、結論として妥当と考えられます。レンタルサーバ業者としては、サーバの中の全ての情報の適法性を監視することは不可能ですし、また、商標権侵害との通知を受けただけで送信を停止すれば、契約者から損害賠償請求を受ける可能性もあるので、10日間程度の調査は認められるべきでしょう。 裁判所は、発信者情報を開示しなかったこと(〈3〉)について、「本件商標権等が侵害されたことが明らかであるとまでは言えない」ことも理由として、損害賠償請求を否定していますが、この点は、論理矛盾があると思われます。すなわち、裁判所は、一定の発信者情報の開示を認めていますので、開示請求者の権利侵害が明らかであること(プロバイダ責任制限法4条1項1号)または発信者情報が開示請求者の損害賠償請求のために必要であること(同項2号)は認めていることになります。したがって、この場合に、被告の損害賠償請求を否定するためには、損害について重過失がないことを言う必要があることになります(同条4項)。 発信者情報が開示されなかったことについて、原告が損害を被った(訴訟中に契約者が行方不明になった等)ということを主張・立証しなければなりませんので、本件では、結論として損害賠償請求は認められないことになるかもしれません。しかし、重過失の認定が厳格に過ぎると、プロバイダは、自ら開示という判断を行わない傾向が強まり、ネット上で権利侵害された者が侵害者を特定するために多大な労力が必要となってしまうということにもなりかねませんので、もう少し、具体的に重過失を判断していくべきではないでしょうか。


(参考サイト)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律−逐条解説−(総務省)

平成18年4月26日東京地裁判決(裁判所)


(2006年6月執筆)


土谷喜輝
   ニューヨーク州法曹資格
   
主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000)   等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年6月30日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ