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法律コラム


[人事・労務|2010年4月 1日]
弁護士 石井邦尚

人事・労務の基礎(9) 労働者派遣(1)

弁護士 石井邦尚

1.労働者派遣とは

 労働者派遣については、労働者派遣法により規制されています。労働者派遣法は、労働者派遣を自己の雇用する労働者を、当該雇傭関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることと定義しています。
 堅苦しくてわかりにくいかもしれませんが、「他人」というのは、派遣労働者を受け入れる会社(「派遣先」といいます)です。労働者を派遣する会社(「派遣元」といいます)が、自社で雇用する労働者を派遣先に派遣します。そして、その派遣労働者は、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事するというのが労働者派遣です。
 ポイントは、(1)雇用契約は派遣元と派遣労働者との間で結ばれること、(2)実際の労働は派遣先の指揮命令を受けて行うこと、です。(1)により、例えば、賃金を支払うのは派遣元になります。

2.労働者派遣の規制の歴史

 労働者派遣を理解するには、規制の歴史を簡単に知っておくとよいでしょう。
 戦前は、鉱山、土木建築、港湾荷役などで、労働者を供給契約に基づいて他人に使用させる「労働者供給」が行われていました。しかし、労働者供給には、中間搾取の問題や、使用者責任が不明確であるなど、さまざまな弊害があり、戦後は全面的に禁止されました。労働者派遣も、「労働者供給」の一類型として禁止されていました。
 その後、労働者の就業意識の変化、就業状態の多様化などに対応し、昭和60年に労働者派遣法が制定され、労働者派遣が認められました(労働者派遣事業は許可制です)。もっとも、上記のような歴史も踏まえ、当初は派遣が認められる業務(「派遣業務」)が極めて制限されていました。また、労働者派遣法は、次のような観点から様々な規制を課しています。

  • (1)不当な搾取を防止する
  • (2)派遣労働者の就業条件を整備し、明確化する
  • (3)派遣労働についての責任主体を明確にする
  • (4)常用労働者の雇用への配慮

 (1)から(3)は、派遣労働者の保護という観点からのものですが、(4)は、いわば長期雇用システムの保護というものです。当初は、派遣業務の範囲がこうした観点から比較的弊害の少ないと考えられた一定の専門的業務に限定されていました。その後、経済界の規制緩和の要請なども受けて、数回の改正で派遣業務の範囲が広げられていきました。そして、平成15年の改正により、派遣業務には原則として(一部例外あり)制限がなくなりました。
 こうした改正に伴い、派遣労働者の数も増え続け、平成20年度の派遣労働者数は約399万人に達したとのことです(厚労省の資料による)。
 このように、これまでの労働者派遣法の改正は、いわば規制緩和の歴史といえるものでした。ところが、リーマンショック後の金融危機に伴う不況の影響から、労働者派遣契約の大規模な打ち切りなどが相次ぎ、「派遣切り」「年越し派遣村」といった言葉がマスコミなどを通じて注目を集めました。こうした背景もあり、現在は、これまでの流れとは異なり、再び労働は派遣への規制を強めるべきであるという議論がなされています。

3.「派遣切り」の法的問題

 いわゆる「派遣切り」には、大きく分けて

  • (1)契約期間満了時に労働者派遣契約の更新を拒絶する
  • (2)期間満了前に労働者派遣契約を解除する

という二つの類型があります。
 労働者派遣契約は、派遣元と派遣先との間で結ばれる契約です。したがって、(1)も(2)も、あくまでも企業間の契約が終了したにすぎません。しかし、これにより派遣労働者が失職するケースが多発しました。
 会社は直接雇用している従業員を簡単に解雇することはできません。ところが、「1.労働者派遣とは」で解説したとおり、派遣労働者は、派遣元と雇用契約を結んでいるため、派遣先に対しては、雇用契約に基づく請求などは原則としてできません。派遣先は、派遣元との労働者派遣契約を終了させただけであり、派遣労働者を「解雇」(=雇用契約を解除)したわけではないのです。派遣労働者が、自分とは契約関係のない派遣先に対して、直接何らかの法的な請求を行うことは、ハードルが高いと言えます(もっとも、今回の問題を契機に、今後の訴訟などでどのような判決がなされていくかは注目されます)。
 特に、(1)の類型については、一般には契約更新は単なる「期待」にすぎず、法的に保護されないケースが多いと思われます。
 また、(2)の類型については、派遣元は、派遣先に対して損害賠償などを請求する余地があるケースも少なくないと思われますが、実際には、派遣先と派遣元との合意解約として処理するなどして、損害賠償請求などは行わないケースが多いようです。派遣元としては、景気が回復したら再度契約してもらいたいといった期待などもあり、派遣先に対して強い態度を取りづらいところがあるのでしょう。しかし、それにより派遣労働者が大きな不利益を被ってしまいます。
 このように、派遣労働者は、派遣元との間で雇用契約を結ぶという仕組みそのものに内在する問題により、法的には不安定な地位にあると言わざるを得ません(なお、こうした問題に対処すべく、厚労省から通達も出されていますが、法的拘束力はないという問題があります)。ある会社との契約が終了しても、別の会社に派遣されるという環境であれば問題はないのですが、今回のように、景気が一気に落ち込んだような場合は、そうした前提が崩れます。今後、労働者派遣をどのように制度設計していくか、慎重な議論が必要と思われます。

 本稿執筆後の平成24年3月、労働者派遣法が改正されました(同年10月施行)。平成24年改正では、法律の正式名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と変更される、法の目的規定(1条)にも「派遣労働者の保護等を図り」と記載されるなど、派遣労働者を保護するという趣旨がより前面に出されました。
 平成24年改正では、以下のような規制強化がなされています。

○ 日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)。
○ グループ企業内の派遣について派遣先の派遣割合を8割以下とする。
○ 離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることの禁止。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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