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法律コラム


[人事・労務|2010年3月25日]
弁護士 石井邦尚

人事・労務の基礎(8) 叱責はパワハラ?

弁護士 石井邦尚

【パワハラとは】

 「パワー・ハラスメント」「パワハラ」とはどのようなことを指すのでしょうか。
 セクハラと異なり、パワハラを直接の対象として規制・禁止するような法律はなく、法律上の定義もありません。
 厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の報告では、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義しています。この定義は現段階ではおおむね一般に受け入れられているパワハラの意味を適切に示しているといえるでしょう。

 もっとも、「職場内の優位性」といっても、上司から部下に対する行為だけが問題なのではなく、先輩社員と後輩社員、年上の同僚と年下の同僚、社内の「派閥」、正社員と派遣社員など、様々な関係で問題となり得ます。そして同僚同士や部下から上司に対する行為であっても、パワハラになり得るとされています。
 また、「精神的・身体的苦痛を与える」といっても、同じような言動でも、上司と部下との関係(例えば、普段からの信頼関係の強弱)、パワハラを受ける側の感じ方などの要素がからんでくるので、簡単に判断できないのが悩ましいところです。

 実際に、ミス・軽率な行動に対する注意、部下を育てるための激励・指導などの中には、境界線を引くのが難しいものが少なくないでしょう。上司が「パワハラ」という言葉に過度に萎縮し職場の規律が保てなかったり、かえって職場がぎくしゃくするようでは、社員にとっても職場環境が悪化してしまい本末転倒です。
 もっとも、ミスを注意しただけ、部下を育てるための激励・指導であるなどと言っても、それと同時に自分のいらいらをぶつけていないかということや、特に必要性もないのに他の社員の面前で怒鳴りつけていないか、といったことは意識し、反省する必要があります。特に上司の立場にある人は、本当に「部下のため」を思ってのことなのか、自問するという姿勢が大切です。
 なお、「怒鳴りつける」などの行為だけでなく、無視する、不当に権限を奪う、孤立させる、冷淡な態度で扱うなども問題となり得ます。

【パワハラの法的責任】

 パワハラを直接の対象として規制・禁止する法律はないと述べましたが、パワハラに法的責任が問われないということではありません。
 パワハラが、暴行罪・傷害罪といった刑事事件にまで至るようなケースは論外ですが、そこまで至らなくても民事上の責任が問われることがあります。
 具体的には、「加害者」本人は民法上の不法行為責任を問われ、損害賠償責任を負うことがあり得ます。その場合、会社も不法行為を行った加害者の「使用者」として同様の損害賠償責任(使用者責任)を負うことがあります。もちろん、パワハラと言われたら直ちにこのような責任を負うということではなく、それぞれの要件が認められた場合の話ですが、実際にこのような損害賠償責任が認められた裁判例は複数あります。

 さらに、会社には社員に対する労働契約上の義務である「安全配慮義務」「職場環境配慮義務」があります。要は、良好な職場環境を維持する義務です。パワハラが起きたときに適切な対処をしない場合、こうした義務に違反したものとして、会社が損害賠償責任を負うこともあります(そのような裁判例もあります)。
 また、パワハラとしてよく問題となる類型に退職の「強要」があります。会社は退職を「勧奨」することはできますが、「強要」することはできません。さらに、一般には会社の意思を無視して、上司が部下に退職を「勧奨」する権限はないでしょうから、そのような場合は「勧奨」であってもパワハラとして問題となり得るでしょう。こうしたケースも損害賠償の対象となり得ます。

【会社の対策】

 パワハラかどうかの境界線があいまいなこともあり、セクハラ以上に会社としてのパワハラ対策には難しさが伴うように思います。
 具体的な対策としては、まずは社内研修などを通じて、特に上司にあたる人たちに正しい知識を持ってもらうことが大切です。その際には単にパワハラをしないように注意しようと呼びかけるだけでなく、例えば、どうすればパワハラにならずに効果的に「部下を育てるための激励・指導」を行えるかということを具体的に考えてみるとよいと思います。
 また、実際に問題が起きたような場合に、社員が相談できる「窓口」を適切に準備しておくことも大切です。セクハラでもそうですが、加害者が被害者の直接の上司ということが十分に考えられるので、そのライン以外に相談相手がいるというのは、問題を早期に発見・解決する上で非常に意義があります。

 さらに、問題の申出があった場合には、事実確認等の調査を慎重に行うことが必要です。「加害者」と言われた人に対しても、安易に決めつけて責め立てる態度は慎まなければなりません。パワハラに該当するかどうかの判断自体難しいことですし、「加害者」と言われる人、「被害者」と訴えている人の人間関係、あるいはその周囲の人たちとの人間関係にも影響する非常にセンシティブな問題です。ときには積極的に外部の専門家などに相談しながら進めることも必要でしょう。
 そして、パワハラは問題を突き止めただけでは解決になりません。被害者のダメージを回復し、さらには職場環境を良好にする(良好な状態に戻す)ところまでできて、ようやく解決と言えます。
 なかなか大変なことですが、パワハラ対策というのは決して後ろ向きなことばかりではなく、見方を変えれば、良い職場環境を作る、良い上司と部下の関係を作るといったことであり、むしろ生産性の向上にもつながり得るものです。また、パワハラをする社員、パワハラが横行する職場の社員というのは、えてして顧客や取引先に対しても不適切な態度を取りがちです。こうした観点からも、パワハラのない職場作りは会社にとって大切なことと言えるでしょう。

【職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告より】

 なお、前述の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の報告では、職場のパワハラを予防するための主な取り組み例として、次の5つを提示しています。

  • ○トップのメッセージ(組織のトップが、職場のパワハラは職場からなくすべきであることを明確に示す。)
  • ○ルールを決める(就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する。予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。)
  • ○実態を把握する(従業員アンケートを実施する。)
  • ○教育する(研修を実施する。)
  • ○周知する(組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。)

 また、同報告は、パワハラが発生してしまった場合の解決の主な取り組み例として、次の2つを提示しています。

  • ○相談や解決の場を設置する(企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める。外部専門家と連携する。)
  • ○再発を防止する(行為者に対する再発防止研修を行う)

【関連リンク】
パワーハラスメントとは(J-Net21)

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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