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全株式譲渡制限会社による募集株式の発行(6)

テーマ:資金調達

2010年7月22日

解説者

弁護士 戸谷 景

【金銭出資の履行(会社法208条1項)】

 募集株式の引受人は、払込期日または払込期間内に、会社が定めた払込取扱金融機関において、割り当てられた株式の払込金額の全額を払い込まなければならず、これを怠ると、募集株式の株主となる権利を失ってしまいます(会社法208条5項)。
 もっとも、会社が第3回目のコラムにおいて説明した申込証拠金制度を採っていた場合、引受人は、引受けの申込みの時点で、すでに会社が定めた払込取扱金融機関に払込金相当額を払い込んでおり、払込期日においては、会社がこれを払込金額に充当する扱いになるので、なんら特別な行為は必要とされないことになります。


【現物出資の履行(会社法208条2項)】

 現物出資をするべき引受人は、払込期日または払込期間内に、募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならず、これを怠ると、やはり当然に失権してしまいます(会社法208条5項)。
 なお、この「給付」には、対抗要件具備に必要な行為も含まれると解されているので、例えば、現物出資財産が不動産であった場合には、移転登記に必要な行為も完了させなければなりません。


【引受人からの相殺の禁止(会社法208条3項)】

 募集株式の引受人は、金銭の払込みや財産の給付をなすべき債務と会社に対する債権とを相殺することができません。
 それでは、会社のほうから相殺することや、会社と引受人との合意によって相殺することも禁じられるのでしょうか。
 前回コラムで説明したとおり、会社に対する金銭債権を現物出資財産とする場合において、当該金銭債権の弁済期がすでに到来しており、かつ、募集事項として定めたその価額が当該金銭債権にかかる負債の帳簿価額を超えないときは、検査役の調査が不要となります(会社法207条9項5号)。
 そうであれば、引受人の会社に対する金銭債権の弁済期がすでに到来しており、かつ、相殺する額が当該金銭債権にかかる負債の帳簿価額を超えない場合には、会社のほうから相殺することや、会社と引受人の合意によって相殺することも許されるように思われます。
 しかし、このような要件を満たさない場合にまで会社からの相殺や合意による相殺を認めることは、検査役の調査が要求される現物出資であるにもかかわらず、これを回避することを認めるのと同じ結果になってしまうので、許されないと考えます。


【変更登記】

 募集株式の発行の効力は、払込期日または払込期間内に、引受人による払込みまたは給付がなされることによって生じます(会社法209条1項1号参照)。
 募集株式の発行の効力が生ずると、登記事項である発行済株式総数や資本金の額に変更が生ずるので(同法911条3項5号・9号)、会社は、2週間以内に変更登記をする必要があります(同法915条1項、2項)。
 募集株式の発行による変更登記申請の際には、次の書類を添付する必要があります。


  1. 募集事項の決定や割当ての決定に関する議事録(商登法46条2項〜4項)。
  2. 募集株式の引受けの申込みまたは総数引受契約を証する書面(同法56条1号)
  3. 金銭出資の場合は払込みを証する書面(払込取扱金融機関に設けた口座の残高証明書や預金通帳の写しなど)(同法56条2号)
  4. 現物出資について検査役が選任されたときは、検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類(同法56条3号イ)
  5. 現物出資財産が有価証券であるときは、その市場価格を証する書面(同法56条3号ロ)
  6. 現物出資財産の価額が相当であることについて弁護士等の専門家の証明を受けた場合には、証明を記載した書面及びその附属書類(同法56条3号ハ)
  7. デット・エクイティ・スワップを行った場合には、現物出資財産である金銭債権について記載された会計帳簿(同法56条3号ニ)
  8. 検査役の報告に関する裁判があつたときは、その謄本(同法56条4号)
  9. 株主割当ての場合に、株主への募集事項等の通知から申込期日までの期間を短縮したときは、株主全員の同意書
  10. 資本金の額が法令の規定に従って計上されたことを証する書面(商登規61条5項)

 添付書類については、いろいろな書式例が載っている書籍も市販されていますので、ぜひ参考にしてみてください。


氏名:戸谷 景

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
2008年大宮法科大学院大学卒業

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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