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人事・労務の基礎(6) 宿直・日直

テーマ:労務一般

2009年12月24日

解説者

弁護士 持田光則

【宿直・日直が必要な業種】

少し前に映画で話題となった納棺師。納棺師の活躍する葬儀業界では、病院などから昼夜を問わず連絡が入ります。
 このため、葬儀自体が日中や夕方に行われるとしても、24時間体制で連絡を受け付ける従業員が必要になるようです。
 葬儀業界以外でも、コンピューターサーバーのトラブルに対応するため、ビルの管理のためなど、24時間体制で従業員の確保が必要な業種があります。
 24時間体制で従業員を確保する必要がある場合、通常の勤務時間とは異なり、たまにかかってくる電話の対応など、軽い業務となることが多くなります。
 先の葬儀業界の例では、担当する地域等でお亡くなりになる方が少なく、夜間に1件も連絡の入らない日があるかもしれません。コンピューターサーバーの管理でも、夜間にトラブルがなければ、待機していた従業員は何もすることがありません。このような待機時間のために、深夜勤務や休日出勤として割増賃金を支払うとなると、労働者側の負担と比べて会社側の人件費の負担が重くなります。宿直や日直をさせる場合に、比較的低額の手当を支給し、正規の超過勤務手当(残業代)の支給まではしない会社も多いのではないでしょうか。


【宿日直に関する法制度】

断続的な業務を扱う宿日直については、通常の労働時間と異なる扱いが認められています。
 通常の勤務時間では、1日8時間、週40時間の勤務時間の上限規制があります(労働基準法32条)。その時間を超えて勤務をさせるには、労働者側と協定を結んで届け出る必要があり(労働基準法36条)、超過勤務をさせる場合には、超過勤務手当の支給が必要となります(労働基準法37条)。
 これらの規制をそのまま適用し、仮に一人の従業員に平日午後6時から翌朝8時までの宿直をさせる場合を考えてみると、14時間分の超過勤務手当(通常の時間単価の1.25倍以上)の支給が必要で、うち午後10時から朝5時までの7時間分は、深夜勤として1.5倍の時間単価による手当の支給対象となります(労働基準法施行規則20条)。通常の勤務における時間労働単価1000円の従業員の場合、一晩あたり1万9250円の支給が必要となってしまいます(変型労働時間制などを考慮しない一般的な勤務形態を前提としています)。
 このような雇用者側の負担を減らすため、宿日直につては、規制の一部が緩和されています。
 すなわち、法律では、断続的な業務を行う宿日直について、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合に、労働時間の規制が外れます(労働基準法施行規則23条、労働基準法32条)。労働時間の規制対象外となり、超過勤務手当の規定も適用されず、独自の手当の支給によることが出来ます(ただし、労働基準局通達などにより、宿日直の許可基準として「相当な手当」の支給が要求されているようです)。


【宿日直として認められない(超過勤務手当の発生する)ケース】

宿日直については、上記のように通常の労働時間とは異なる扱いが認められますが、それでも超過勤務手当の発生するケースについて確認しておきましょう。
 まず、労働基準監督署長の許可を受けていない事業所での宿日直については、労働時間規制の対象となるので、超過勤務手当が発生します。宿日直で通常の勤務時間と異なる扱いが認められるのは、労働基準監督署長の許可を受けた場合に限られるからです。
 また、宿日直を労働時間規制の対象外とするのは、断続的な業務をさせることを前提としているため、労働基準監督署長の許可を取った事業所であっても、宿日直の時間を利用して事務処理などをさせる場合には、正規の超過勤務手当を支給する必要があります。
 葬儀会社の元従業員からの依頼で私が担当した実際の事件でも、会社側が宿日直の許可を取っていなかったため、2年分(労働債権が消滅時効にかかる期間)の超過勤務手当(深夜勤を含む)として500万円を超える未払賃金と、退職後の損害金年14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、賃金の支払の確保等に関する法律施行令1条)を、会社側が支払わなければならないケースがありました。
 会社の労務担当で心当たりのある方は、早めに弁護士か社会保険労務士に相談されることをお勧めします。


【今回のまとめ】

低額の手当で従業員に宿日直をさせるには、労働基準監督署長の許可が必要です。許可のある場合も、事務処理など通常業務をさせる場合には、残業代を支払わなければなりません。退職後の労働債権の未払いには、年14.6%もの損害金を支払う必要があり、2年前までさかのぼって支払うことになると大変な金額となるので気をつけましょう。


氏名:持田光則

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
2002年・東京弁護士会所属

学歴:
1991年都立昭和高校卒業、1996年専修大学法学部卒業

得意分野等:
不動産トラブル、債権回収、交通事故、医療過誤、離婚、相続、倒産処理など一般民事事件を幅広く扱う。実家が青梅市にあり生梅や梅干の生産をしていることから農業経営にも興味を持ち、若手農業経営者への支援にも取り組んでいる。

所属事務所:
立川北法律事務所(東京都立川市)

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