本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

取締役と刑事罰(6)インサイダー取引(2)

テーマ:役員・株主

2010年12月16日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 今回は前回に引き続き、「インサイダー取引」の要件の定義について説明していきます。これらの定義は非常に詳細なので、すべて暗記する必要はまったくありません。しかし、自社や関連会社の株式の売買等の際には必ずチェックし、法改正などによる変更にも日頃から目を配っておくことが大切だと思います。


【「公表」とは】

 インサイダー取引は、重要事実が「公表される前」の取引が対象になりますから、公表された後はインサイダー取引規制が解除されることになります。そこで、この「公表」の定義が重要になってきます。


 金融商品取引法の細則を定めた法令によれば、「公表」とは、以下の3つの場合のいずれかにあたる場合をいうとされています(金融商品取引法施行令第30条)。


  1. 上場会社等の代表取締役が、2つ以上の報道機関に対して重要事実を公開したときから12時間が経過すること(12時間ルール)
  2. 重要事実にかかる事項の記載がある有価証券報告書等が公衆縦覧に供された場合
  3. 重要事実が証券取引所のホームページ上で公開された場合

 通常の場合でいえば、会社が各取引所へ重要事実を情報伝達システムで発信すると、各取引所のホームページに掲載されることになりますので、この段階をもって、一般的に周知された(公表された)といえると考えられます。


 注意しないといけないのは、自社のホームページに掲載されたからといって、「公表」されたとはいえないということです。ですから、会社のホームページで業務提携などの重要事実が掲載されたからといって安心してその会社の株式を購入したりすれば、購入目的のいかんにかかわらずインサイダー取引に該当してしまいます。


【「株式等の取引」とは】

 さて、インサイダー取引によって売買等の取引が禁止される株式等については、金融商品取引上は、「特定有価証券等」と呼ばれています(金融商品取引法163条1項)。


 これは主に「特定有価証券」と「関連有価証券」の二つに分類されます。
「特定有価証券」とは、会社法上の株券、新株予約権証券、社債券などがそれにあたります(金融商品取引法施行令27条の3)。
「関連有価証券」とは、投資信託の受益証券等で、多岐にわたりますが、細かくなりすぎるので列挙しません。細かな定義は金融商品取引法施行令27条の4に記載されています。


 ここで覚えておいた方がよいのはむしろ、金融商品取引法166条6項によって、インサイダー取引の適用除外とされている有価証券等の取引ではないかと思います。
 以下のような場合がこれにあたります。


  1. ストック・オプション(新株予約権)の行使による株券の取得
  2. 役員・従業員の持株会による定時・定額の買付け
  3. 株式累積投資(自分が選択した株式の銘柄を毎月一定額ずつ購入していくという株式取引。いわゆる「るいとう」)
  4. 重要事実を知る前に締結された契約の履行や計画の実行のような特別の事情に基づく売買であることが明らかな場合

 ただし、これも1.でストック・オプションを行使した後に株式を売却するような場合や、2.で持株会から株式を引き出した後に売却するような場合は、インサイダー取引規制の対象となりますので、注意が必要です。


【法定刑など】

 法定刑は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(金融商品取引法197条の2 13号)となります。懲役と罰金の併科もあります。
 また個人だけではなく法人に対する罰則もあります。行為者が法人の計算でインサイダー取引を行った場合には、法人に対しても5億円以下の罰金が科せられます。


 また、インサイダー取引で得た財産は、利益だけではなく、売却代金全額が没収されます。
 さらに、刑事罰の対象にはならなくとも、行政上の措置として課徴金納付命令が出される場合があります。


このように、インサイダー取引は、形式犯であるにもかかわらず、非常に厳しい処罰の対象となっているといえます。


そこで次回は、うっかりインサイダーに巻き込まれないためには、取締役及び会社がどのように対策を講じればよいのかについて説明したいと思います。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ