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法律コラム


[組織・運営|2010年12月 9日]
弁護士 高橋弘泰

取締役と刑事罰(5)インサイダー取引(1)

弁護士 高橋弘泰

 これまでは、会社法上の刑罰法規について述べてきましたが、今回からは、会社関係者の犯罪として特に気をつけた方がよいと思われる「インサイダー取引」について簡単に説明します。

 インサイダー取引については細かく説明するときりがなくなるので、まずこの犯罪の正確な定義について説明し、その後に、うっかりインサイダー取引に巻き込まれないために、取締役及び会社がどのような対策を講じればよいのかについてのポイントを述べたいと思います。

 「インサイダー取引」という言葉はよく目にしますが、その言葉から一般的に受ける印象というと、「会社の内部情報を知っていることを利用(悪用)して、株式等を売却して不当な利益を得ること」でしょうか。

 このような理解でおおむね間違いではありませんが、会社の取締役は、うっかりインサイダー取引に関与してしまわないために、その中身について正確に理解しておくことが必要です。

 先ほどの定義をもう少し詳しく述べると、インサイダー取引とは、「会社の経営・財務など投資判断に影響を及ぼすような未公開の『重要情報』にもとづいて、役員・従業員・主要株主などある一定の立場ゆえに知るに至った者(『会社関係者』)が、その情報が『公表』される前にその会社の発行する『株式等の取引』を行うこと」(金融商品取引法166条参照)ということになります。

 ここで重要なのは、インサイダー取引は、「利益を得る目的(図利目的)」や「利益を得た事実」がなくとも成立してしまうということです。つまり、立場上「重要事実」を知った人が、その情報が「公表」される前に「株式等の取引」を行えば、それで犯罪成立となります。

 このように、インサイダー取引は、主観的な犯意を必要としない形式犯であることから、犯罪を構成する事実の意味を正確に理解しておかないと、うっかり巻き込まれる危険が大きいわけです。

 そこで、それぞれの用語の意味についてやや詳しく見ていくことにします。

【「会社関係者」とは】

 インサイダー取引の主体となるのは、役員・従業員・主要株主・取引先などある一定の立場ゆえに知るに至った者であり、広い範囲に及んでいます。  従業員には、契約社員や派遣社員など、いわゆる正社員以外も全部対象になります。  主要株主は、一般に、帳簿閲覧権を行使することにより内部情報を知りえる、議決権の3%以上を所有する大株主を意味します。取引先については、法人・個人を問いません。  その他に、許認可権を持っている省庁の公務員も対象となります。  そして、退職した場合にも1年間は対象となりますので、注意が必要です。

 また、「情報受領者」といって、上記の者から情報を伝達された者(家族・友人・知人など)も規制の対象となります。居酒屋などでたまたま情報を耳にした場合はどうかという問題はありますが、場合によっては情報受領者に該当するとみなされる可能性がないとはいえませんから、危険な話には飛びつかない方が安全でしょう。

【「重要事実」とは】

 次に、知っていればインサイダーとなる「重要事実」は、「決定事実」、「発生事実」、「決算情報」、「バスケット条項」の4つに大別されます。

 「決定事実」とは、株式の発行、分割、交換や自己株式の取得・処分、業務提携や合併などにつき、会社の意思決定機関(通常は取締役会)で決定した事実のことをいいます。

 「発生事実」とは、災害による損害のような、会社の意思とは関係なく起こった事実のことです。業務遂行の過程で生じた損害も含まれます。また、油田のような資源を発見した場合にも株価に影響しますから、このカテゴリーの重要事実に該当します。

 「決算情報」は、業績予想・配当予想が大きく修正されるような場合、株価に影響がありますから、重要事実となります。

 「バスケット条項」とは、上記の事実以外でも、会社の運営、業務、財産に関する重要な事実で、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実のことをいいます。これについては個別具体的に判断するしかなく、その基準も必ずしも明確とはいえませんが、巨額の架空売り上げと主力薬品の副作用情報がそれに該当するとされた判例があります(日本商事事件、最高裁平成11年2月16日判決)。

 本稿執筆後の平成25年6月、金融商品取引法が改正され、インサイダー取引に対する規制が改正(主に強化)されました。改正法は、交付の日から1年以内の政令で定める日からの施行が予定されています。今回の改正には、情報伝達・取引推奨行為に対する規制など、重要なものが含まれていますので、こちらも必ず確認してください。

 次回も引き続き、それぞれの用語の定義について見ていきます。

【関連リンク】

氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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