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法律コラム


[インターネット|2011年1月27日]
弁護士 石井邦尚

インターネット上の発言と法的責任:名誉毀損(4)

弁護士 石井邦尚

 インターネット上の発言と法的責任について、過去3回に引き続き、名誉毀損を扱います。今回はインターネットでの言論の応酬と名誉毀損について解説します。
 インターネット上では名誉毀損的な発言に対しても、反論することが容易なことが少なくありません。このことが名誉毀損の成否に影響するでしょうか。
 また、インターネット上では、意見交換がヒートアップして、互いに相手を傷つけるような発言に発展することもあります。こうした場合も名誉毀損となるのでしょうか。

1.反論すればよいのだから、名誉毀損とはならない?

 インターネット上では、一般の人々も容易に発言をできる場があります。したがって、名誉を毀損するような発言に対しても、黙っているのではなく、反論することが可能です。
 特に、ネット掲示板などでの発言に対しては、同じネット掲示板などで反論できることが多いです。
 これは、従来のテレビ、新聞、雑誌といったメディアではあり得ないことでした。これまではメディアが一般個人に対して名誉毀損をした場合、個人がそれに対等の形で反論することは極めて困難という前提で、名誉毀損の問題も議論されていたと言えます。
 ところが、インターネット上では、対等の立場で反論できるのだから、名誉を毀損するような発言がなされたとしても、反論をすればよいのではないか、反論できるときには、名誉毀損として扱う必要はないのではないか、という議論がなされるようになってきました。

 そして実際に、パソコン通信の事案ではありますが、「被害者の反論が十分な効果を挙げているとみられるような場合」には、名誉毀損は成立しないとした東京地方裁判所の裁判例(民事で損害賠償が請求されたケース)もあります。

 一方で、同じくパソコン通信の事案で、民事上の損害賠償等が請求されたケースで「反論することは容易であるが、言葉汚く罵られることに対して、反論する価値も認めがたく、反論が可能であるからといって、罵倒することが言論として許容されることになるものではない」として、名誉毀損の成立を認めた東京高等裁判所の裁判例もあります。

 それでは、どのように考えればよいでしょうか。
 インターネット上の発言に対しては、反論することが理屈上は可能であっても、反論することによりかえって火に油を注ぎ、結果的に損害が拡大する危険性があり、実質的には反論が困難あるいは不適切な場面は少なくありません。さらに、反論したからといって低下してしまった社会的評価が回復するとも限りません。
 そうするとやはり、反論可能性があるというだけでは、原則として、名誉毀損の成否に影響がないと言うべきでしょう。

 インターネット上の発言と法的責任:名誉毀損(2)で紹介した最高裁判決(最高裁判所平成22年3月15日判決)も刑事事件の事案ですが、その判決文の中で「一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもない」と指摘しています。

 もっとも、例外的に名誉毀損の成立は認められても、実際に反論がなされて、それが有効に機能しているような場合には、回復すべき「損害」がないとして、損害賠償請求は否定されるという可能性はあるかもしれません。
 しかし、それは例外的な場合に限定されるでしょう。インターネット上で発言をするときは「相手方が反論すればよいだけだ」「反論がくるに決まっている」などと安易に考えたり、反論を誘発しようなどと挑発的な書き方をして、名誉毀損になるようなことがないように注意が必要です。

2.言い合いであっても名誉毀損となる?

 ネット掲示板やブログなどでは、お互いに発言をしあって、意見を交わしたり戦わせたりすることができることが魅力の一つとなっています。しかし、それがだんだんヒートアップして、互いに相手を傷つけあうような状況や罵倒しあうという状況に発展することもあります。そしてそのような中で、個々の発言をとらえると名誉毀損となるような発言がなされているケースも少なくないようです。
 このような場合に、一部の発言だけをとらえて名誉毀損の責任を問うことが妥当であるかは疑問です。そこで、こうした言い合い(言論の応酬)のケースでは、一定の場合には名誉毀損とはならないとされています。

 具体的には、インターネット上の発言の事案ではありませんが、最高裁判例は「自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉、信用を毀損するがごとき言動をなすも、かかる行為はその他人が行った言動に対比して、その方法、内容において適当と認められる限度をこえないかぎり」違法性を欠き、名誉毀損は成立しないとしています。

 簡単にまとめれば、(1)やむをえず行ったものであること、(2)適当と認められる限度を超えないこと、の2つの要件を満たせば、名誉毀損は成立しないことになります。インターネット上の言論の応酬についても同様に考えられるでしょう。
 もっとも、実際にこの要件が満たされるかどうかはケース・バイ・ケースで判断するしかありません。

 インターネット上で、例えば、自社の名誉や信用が毀損されるような発言がなされた場合、これに反論するかどうかは判断に悩むところです。反論することにより、かえって損害が拡大しないかも考えなければなりませんが、やはり反論をして会社としての毅然とした態度を示す必要がある場面もあるでしょう。そうした場合、その反論がかえって名誉毀損にあたるような内容となっていないか、名誉毀損的な反論をしなければならない場合であれば、上記のような違法性が阻却される要件を満たしていないか、慎重に見定めることが肝心です。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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