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取締役と刑事罰(4)

テーマ:役員・株主

2010年12月 2日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 今回も引き続き、会社法上の取締役に対する刑罰法規を説明します。今回は、「株主等の権利の行使に関する贈収賄罪」と「株主の権利の行使に関する利益供与の罪」について説明します。


【株主等の権利の行使に関する贈収賄罪】

 「株主等の権利の行使に関する贈収賄罪」は、「以下の事項に関して、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束」をしたときに成立します(会社法968条第1項)。「利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者」も同様です(同条第2項)。
 「以下の事項」に含まれるのは、次のような行為です。


  • 株主総会における発言等
  • 株主総会決議取消訴訟・代表訴訟等の提起
  • 株主提案権の行使等の少数株主権の行使等
  • 取締役に対する行使差止請求
  • 株式発行差止請求権の行使等

 本罪の主体は、取締役だけに限られません。収賄罪(第1項)の主体は、上記の権利を行使できる者、つまり株式引受人や株主のことになります。また、これらの権利を行使できる者、たとえば株主総会の発言や議決権の行使の委任を株主から受けた者も含まれます。
 贈賄罪(第2項)の主体には制限がありません。


 前回のコラムで紹介した「取締役等の贈収賄罪」(967条)は、取締役がその職務に関して不正を行うことを防止するためのものであるのに対して、本罪は、株主らの不正な権利行使を防止するためのものです。


 そして本罪の主な狙いは、いわゆる総会屋による会社荒らしの取締りにあります。たとえば、会社役員が経営上の失敗の追及を免れるために、株主総会で一般株主の発言を妨害することを総会屋に依頼し、金銭を支払う行為がこれにあたります(最高裁昭和44年10月16日、東洋電機カラーテレビ事件)。


 しかし、本罪が成立するためには「不正の請託」が必要であるため、「不正の請託」の意味を厳密に解釈すれば、適用範囲が狭くなりがちです。


 そこで、総会屋対策のためには、次に説明する「株主の権利の行使に関する利益供与罪」(昭和56年の商法改正により導入)が、その実効性を発揮するようになりました。


 法定刑は贈賄側と収賄側ともに「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」です。
 収賄側には国外犯もあります。


【株主の権利の行使に関する利益供与の罪】

 「株主の権利の行使に関する利益供与の罪」は、「株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与したとき」(会社法970条)に成立します。
 利益の供与を受け、又は要求した側も処罰されます。


 本罪は総会屋の排除を目的として昭和56年の商法改正により設けられた罰則であり、その適用範囲はかなり広いものになっています。


 本罪のポイントは、「株主の権利の行使に関して」いれば、それが正当な行使であっても罰せられるということです。ですから、たとえば株主総会の議事の円滑な進行を依頼して対価を支払った場合にも成立します。


 そして、当該株式会社のみならず、「その子会社の計算で」対価を提供することによっても成立します(第3項)。


 さらに、株主の権利の行使は、利益の供与を受けた株主自身の株主権の行使に限られず、第三者たる株主の権利の行使に関する場合でもかまわないので、この場合、利益を受ける者は株主である必要さえありません。


 以上のように、本罪の適用範囲はかなり広くなっています。本罪の導入により、総会屋が株主総会から姿を消すことになったのも、このような罰則の定め方によるところが大きいといえるでしょう。


 法定刑は、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」です。
 供与を受け、又は要求する時に、威迫の行為があった時には、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」になります(第4項)。
 利益の供与を受けた方には国外犯もあります。


 なお、株主の権利の行使に関する利益の供与は、会社法120条でも禁止されています。こちらは民事上の責任として、利益を受けた側の返還義務や、取締役の損害賠償義務を定めています。


【欠格事由】

 これまで述べたような、会社法上の刑罰を受けた者は、たとえ罰金刑であっても、取締役の欠格事由にあたるため、取締役になることができません。その期間は、執行猶予中および刑の執行が終わりまたは刑の時効が完成した後2年を経過するまでの間に及びます(会社法331条1項3号)。


 以上、会社法における取締役の刑罰について述べてきました。取締役にとっては気の重い話かもしれませんが、間違っても自らの不注意により犯罪に加担することのないよう気をつけたいものです。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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