本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

全株式譲渡制限会社による募集株式の発行(4)

テーマ:資金調達

2010年7月 8日

解説者

弁護士 戸谷 景

【申込みをする者による通知】

 前回までに説明したとおり、会社が新たに募集株式を発行しようとするときは、まず募集事項等を決定し、原則として、引受けの申込みをしようとする者に対してこれらの事項を通知しなければなりません。


 次に、引受けの申込みをする者は、自己の氏名または名称、住所および引受けようとする募集株式の数を会社に対して通知することになりますが、この申込みは、書面によるべきこと(会社の承諾がある場合は電磁的方法も可)とされています(会社法203条2項、3項)。


 募集株式の発行が無事に完了し、変更登記を申請する際には、この申込みを証する書面の添付が要求されますので(商登法56条1号)、会社としては、これをしっかり保管しておく必要があります。


 なお、株主割当ての場合は、あらかじめ会社が申込みの期日を定め、これを株主に通知することとされているので、引受けを希望する株主は、その期日までに申込みをしなければならず、これをしなかったときは割当てを受ける権利を失ってしまいます(会社法204条4項、202条1項2号、203条2項)。


【失権株の処理】

 株主割当ての場合に、一部または全部の株主が申込期日までに申込みをせず、それによって失権株が出てしまうと、会社は予定していた募集株式の発行による資金調達ができなくなってしまいます。


 そのようなときには、他の者に失権株を割り当てることができたら都合がいいのですが、改めて第三者割当ての手続を踏むのはいささか面倒です。
 そこで、失権株が出る可能性がある場合には、失権株を引き受ける者をあらかじめ決めておき、失権株が出ることを停止条件とする第三者割当てによる募集手続を、株主割当てによる募集手続と並行して行うことにして、改めて株主総会を開催するなどの手間を省くことも考えられます。


【割当て(会社法204条1項)】

1.第三者割当ての場合

(1)割当ての決定を行う機関
 募集株式の引受けの申込みを受けた会社は、次に、申込者のうちの誰に対して、何株の募集株式を割り当てるかを決定することになります。
 譲渡制限株式を発行する場合、その決定は、取締役会を設置している会社であれば取締役会が、取締役会を設置していない会社であれば株主総会が行う(特別決議(会社法309条2項5号))のが原則となりますが(会社法204条2項本文)、定款で他の機関をその決定機関として定めている場合には、当該機関が行うことになります(同項ただし書)。


(2)申込株数と割当株数
 会社は、申込者が引受けを申し込んだ株数よりも少ない株数で割当てを行うことができます(会社法204条1項後段)。
 多くの契約は、申込みに対して、これに合致した承諾があったときに成立します。
 例えば、AさんがBさんに対して、「私が持っている江頭先生の『株式会社法 第3版』、4000円で売ってあげますよ」と申し込み、これに対してBさんが、「分かりました、4000円で買いましょう」と承諾したときは、AさんとBさんの間で、江頭先生の『株式会社法 第3版』を目的物とする代金額4000円の売買契約が成立したことになります。


 しかし、このときBさんが、「3000円に値切ってみよう」と考え、Aさんに対して、「3000円なら買いますよ」と答えた場合には、申込みに変更を加えた承諾をしたことになり、これは新たな申込みとみなされますので(民法528条)、Aさんが「3000円でもいいでしょう」と承諾したときに、はじめて売買契約が成立することになります。


 この一般原則を募集株式の引受契約に適用すると、会社が申込株数よりも少ない株数で割当てを行うことは、新たな申込みとみなされることになりそうですが(そうすると、これに対する承諾がなければ引受契約は成立しない)、会社法204条1項後段の規定があることにより、会社が申込株数よりも少ない株数を割り当てた場合であっても、その株数について当然に引受契約が成立することになるのです。


(3)割当株数の通知
 会社は、割当ての決定を行った後、払込期日の前日または払込期間の初日の前日までに、申込者に対して、割り当てる株式の数を通知しなくてはなりません(会社法204条3項)。


2.株主割当ての場合

 これに対し、株主割当ての場合は、申込期日に申込みをすることによって、申込みをした株主は当然に引受人となると考えられているので、割当ての決定を行う必要はなく、したがって割当ての通知も必要なしということになります。


氏名:戸谷 景

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
2008年大宮法科大学院大学卒業

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ