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人事・労務の基礎(4) セクハラは社員のモラルの問題?

テーマ:労務一般

2009年11月26日

解説者

弁護士 石井邦尚

1.セクハラ対策は法的義務

 「セクシュアルハラスメント」「セクハラ」という言葉はすっかり定着しました。法律でも次のように定められ、事業主(会社)にセクハラ対策が求められています(男女雇用機会均等法11条1項)。


  • 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 会社はセクハラについて、(1)労働者の相談に応じる体制の整備、(2)適切に対応する体制の整備、(3)その他の必要な措置が求められます。その具体的な内容については、「セクシュアルハラスメント指針」と呼ばれる厚労省の告示(正式には「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」。以下「セクハラ指針」と呼びます)が定められています。
 セクハラ対応は、従業員(特に女性従業員)が安心して仕事に集中できる環境を整え、生産性を向上させるために大切なものです。また、上記法律に違反して適切な措置を講じておらず、厚労大臣の勧告(是正指導)を受けても応じない場合には、厚労大臣は企業名を公表できるとされていますので、注意が必要です。


2.セクハラとは

 セクハラという用語は多義的に使われますが、「相手方の望まない性的な行為(言動)」といった定義が一般的です(もう少し狭く定義することもあります)。「相手方の望まない」という判断が難しいのですが、一般に「平均的な女性労働者の感じ方」(被害者が女性の場合)、「平均的な男性労働者の感じ方」(被害者が男性の場合)を基準に判断されます。とはいえ、不快に感じている人に対して、「平均的な感じ方を基準とすればセクハラではない」などとして、不快な言動が続けられればセクハラとなり得ます。
 いずれにせよ、「自分がどう感じるか」ではなく、「相手がどう感じるか」が重要です。「自分ではセクハラのつもりはなかった」という言い訳はできません。
 セクハラの具体例としては、性的な冗談を言う、性的体験談を話す、性的な事実関係を尋ねる、食事に執拗に誘う、ヌードポスターを掲示する、腰や胸などに触る、性的な関係を強要する、などがあります。
 上記の男女雇用機会均等法の対象とされるのは職場のセクハラです。セクハラ指針では、職場のセクハラを、「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に整理しています。


3.対価型セクハラとは

 対価型セクハラとは、セクハラに対する労働者の対応(拒否したり抵抗したり)により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるものです。セクハラ指針では、次のような具体例が示されています。


  • 事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇した。
  • 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、その労働者に対して不利益な配置転換をした。
  • 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること。

4.環境型セクハラとは

 環境型セクハラとは、職場における性的な言動により労働者の就業環境が害されるものです。セクハラ指針では、次のような具体例が示されています。


  • 事務所内で上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下している。
  • 同僚が取引先で、他の労働者に関する性的な内容の情報を意図的、継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかない。
  • 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できない。

5.「職場」とは

 先ほども述べましたが、男女雇用機会均等法で対象とされるのは「職場」のセクハラです。では、会社の事務所の外でのセクハラは対象とならないのでしょうか?
 労働者は、会社の事務所以外でも業務を行うことが多々あります。例えば、取引先の事務所に行く、取引先を飲食店で接待する、営業社員が顧客の自宅を訪問する、出張する、上司や顧客とタクシーで移動する、などです。会社の事務所以外であっても、このように業務を遂行する場所は「職場」であり、そこでのセクハラは男女雇用機会均等法上の問題となります。
 それでは、忘年会などの宴会の席や、社員旅行などはどうでしょうか?
 単なる従業員同士のプライベートな飲み会や旅行であれば、会社として管理監督することは困難で、さすがに「職場」とはされません。一方、取引先の接待や研修旅行など、明らかに職務として行われるものは「職場」です。このように明確なものであればよいのですが、実際にはその中間の形態が少なくないでしょう。そうした場合は、職務との関連性、参加者、参加が(事実上)強制的か任意かなどを考慮して、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ません。
 一般には、会社主導で恒例で実施している忘年会や社員旅行は「職場」にあたるという前提でセクハラ対応を考えておいた方がよいでしょう。宴会の場で「セクハラ」にあたるイベントを企画するなどは論外ですが、度が過ぎてセクハラが行われているのに、見て見ぬふりをするようなことのないよう、注意が必要です。
 次回は、会社でセクハラ対応として実施すべきことについて解説します。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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