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債権回収(4)〜債権管理の注意点〜

テーマ:契約・取引

2009年9月24日

解説者

弁護士 宮武洋吉

1.はじめに

 売掛金の回収等、債権回収を確実に行うためには日常業務における与信審査、与信管理が重要ですが、ここでは法的な側面からの債権回収のポイントについてご説明します。


 2006年5月1日施行の会社法では、従来定められていた最低資本金制度(株式会社では1000万円、有限会社では300万円)が廃止され、資本金1円でも株式会社を設立することができるようになりました。このため、財政的基盤の乏しい会社が設立され、会社債権者の利益が害される危険性が高くなっています。したがって、取引先の与信審査、与信管理はこれまで以上に慎重に行うことが必要です。


2.契約書作成

 (1)売掛金の支払いが遅れ、債権回収の場面となった際に決定的に重要なものが契約書です。
 契約書の必要性は、(a)契約内容を明確にするため、(b)訴訟や仮差押などの法的手続に不可欠なため、(c)債権回収をスムーズにするための特約をあらかじめ契約書に盛り込んでおくことができるため、ということが挙げられます。
 ここでは、(c)の債権回収をスムーズにするための特約の例をいくつかご紹介します。


 (2)期限の利益喪失条項
 契約で代金支払などの履行期限が定められている場合、期限が到来するまで債務の履行が猶予されることを「期限の利益」といいます。よって、期限の利益を喪失した場合には、履行期限が到来していなくとも、債務者は直ちに債務を弁済しなければなりません。
 民法137条は、(一)破産手続開始の決定を受けたとき、(二)債務者が担保を滅失、損傷、減少させたとき、(三)債務者が担保提供義務を怠ったときは、債務者は期限の利益を主張することができないと規定しています。これ以外にも、例えば、債務者が手形の不渡事故を起こしたときや、債務者に対して差押、仮差押の申立があったとき、分割金の支払いを1回でも怠ったとき、のいずれかの場合には期限の利益を喪失する、と契約書に規定しておけば、このような場合にも直ちに債権回収に着手できます。


 (3)契約解除条項
 上記の信用不安の際には、取引先との契約は解除される、等の解除条項を定めておけば、取引先に預けている商品を取り戻す等の行為がスムーズに行えます。


 (4)利息・損害金条項
 利息・損害金に関する合意がない場合には、取引先が代金を支払わない等の場合、民事では年5%、商事では年6%の利息・損害金しか請求できません。
 契約書に利息・損害金について定めておけば、これを上回る利息・損害金を請求できます。利息制限法による制限を踏まえ、年15%の範囲で定める契約書が一般です。


3.抵当権等の設定

 前回のコラムで述べましたとおり、取引先が破産、民事再生の開始決定を受けた場合でも、抵当権等の担保権は別除権として、破産手続・再生手続とは別に担保を実行して債権回収を行うことができます。


4.保証契約

 取引先が倒産した場合でも、取引先の代表者や他の会社等と保証契約を締結しておけば、保証人の財産に対して権利行使をして債権を回収することができます。
 2004年の民法改正により、保証契約は書面でしなければその効力を生じないこととなりました(446条2項、3項)。
 また、保証人となる会社が取締役会のある株式会社である場合には、会社が保証人となることを承認する旨の取締役会の議事録が必要です。


5.信用不安の場合の対処

 以上、信用不安となる前の事前の備えについて述べましたが、実際に取引先が信用不安状態に陥った際、どのような対応が考えられるのでしょうか。


 (1)契約解除
 契約解除は、法律の規定に要件が定められた法定解除権と契約によって認められた約定解除権とがあります。取引先に信用不安が発生した場合、これらの解除の要件(解除事由)を満たしているかを確認することが必要です。 解除事由がある場合でも、基本契約書等に特約がある場合を除き、契約を解除するためには「契約を解除する」旨の意思表示を取引先に到達させることが必要です。通常は配達証明付内容証明郵便で解除通知を送付します。


 (2)商品の引揚げ
 取引先に信用不安が発生した場合でも、まだ商品の所有権等が取引先にある場合には、これを勝手に引揚げることはできません。これを強行すると、かえって窃盗罪等の刑事責任を問われることにもなりかねません。
 商品の引揚げは、(a)契約が解除された場合、(b)契約上所有権が当社に留保されている場合、(c)契約で定めていた商品引揚条項に該当する場合、等の場合に行うことができます。


 (3)債権譲渡
 取引先の販売先に対する売掛金等を譲り受けて債権回収を行う方法もあります。このような合意による債権の移転を債権譲渡といいます。
 債権譲渡に際しては、譲渡を受けた債権の債務者や他の取引先等の第三者に対して、債権を譲り受けたことを主張するために、債権譲渡の通知をすることが必要です。ここで注意しなければならないのは、この通知を発送するのは債権の譲渡人でなければならないことです。上記の場合、譲渡人は取引先になります。この通知は債権が二重譲渡された場合に備えて、配達証明付の内容証明郵便で行うべきです。


 (4)相殺
 取引先に対して売掛金等を有する一方で、取引先から資金を借り入れている等の債務を負っている場合、この売掛金(例えば1000万円)と借入金(例えば700万円)を対当額(700万円)で相殺することができます。
 相殺を行うためには、双方の債務が弁済期にある場合に、相殺の意思表示を行うことが必要です。これも配達証明付内容証明郵便で行うべきでしょう。


 (5)訴訟等の手続
 債権回収を訴訟等の手続で行う場合については、本コラムの「債権回収(1)〜取引先が代金を支払ってくれないとき」に説明がありますので是非お読みください。


6.時効

 売掛金等の債権は、支払期限等から一定期間を過ぎると消滅時効が完成し、回収ができなくなるので注意が必要です。
 消滅時効の時効期間は権利の種類によって異なります。以下にその例を挙げます。


  • 1年:運送賃など
  • 2年:売掛金債権など
  • 3年:請負工事代金など
  • 5年:一般の商事債権
  • 10年:一般の民事債権

 時効には中断の制度があり、時効の進行期間中に、時効の中断事由が生じた場合には、その時点から新たに時効期間がスタートすることになります。時効の中断事由は、(一)請求(訴訟提起など)、(二)差押え、仮差押・仮処分、(三)債務の承認、があります。ここでの「請求」は、訴訟提起等の手続に限られるので、請求書の発送だけでは中断にはなりません。


7.債権法改正

 以上述べました債権回収に関する様々な点は、民法の債権に関する規定(債権法)に多くが規定されていますが、2009年11月から、法務省の法制審議会・民法(債権関係)部会において、民法のうち債権関係の規定の見直し(改正)についての調査審議が行われています。
 以上述べました点についての多くの点が見直しの対象とされていますので、今後の法改正の動向にも注意が必要です。


(2009年9月作成)


氏名:宮武洋吉(みやたけ ようきち)

生年:1966年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
東京大学法学部卒業

得意分野等:
交通事故、マンション管理、親族・相続・後見等。最近は、損害保険代理店と連携しつつ中小企業のリスク管理に関与する場面も増加している。

所属事務所:
立川北法律事務所

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