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会社名やブランド名、商品名などの使用と保護(4)商標権侵害と言われたら(1)

テーマ:デザイン・ブランド

2013年11月15日

解説者

弁護士 石井邦尚

 ビジネスでは会社名やブランド名、商品名、サービス名など、様々な名称が使われます。それに併せて、ロゴマークなどが使われることもよくあります。
 こうした名称やマークなどを保護する代表的な法律が商標法です。前回前々回は商標を登録する側の視点から商標法について解説しました。


 今回は、商標の出願・登録をしていない会社(や個人事業主)が、他社から商標権侵害と主張された場合に、どのような反論が考えられるかを解説します。


 例えば、何年も前から、地元密着の小さなレストランを営業していたところ、そのレストランの名称と類似した商標が登録されてしまい、商標権者から、レストラン名の使用を取りやめるように求められたというケースで、レストランの経営者としてどのような主張ができるかを考えてみます。


【まずは商標の調査・確認を】

 こうした場合、まずは特許電子図書館(IPDL)のウェブサイトなどで、商標権の内容を確認することが必要です。


 最初に問題となっている商標と、自ら用いている標章(レストラン名)が類似しているかを確認・検討します。
 商標の類似は、「同一又は類似の商品・役務に付した場合、出所混同を生じるほど似ているか」といった観点から検討されますが、具体的な取引状況等も踏まえ、総合的に判断されます。商標の類似性自体に疑問があるような微妙なケースでは、専門家に相談して意見を聞くべきです。


 次に、指定商品、指定役務の確認が大切です。商標権侵害となるのは、商標登録出願の際に指定された商品や役務(=指定商品、指定役務)と同一又は類似の商品・役務に、登録商標と類似の商標が使用された場合です。商品・役務の類似性は、「類似の商標を付した場合に出所の混同を引き起こすほどに似ているか」といった観点から検討されます。こちらも、商品取引、役務の提供の実情もふまえ、総合的に判断されます。


 また、後述の先使用権の主張や、次回解説する不使用取消審判の請求の検討にあたっては、「出願日」「登録日」を確認することも大切です。
 商標の類似性か、商品・役務の類似性のどちらかが否定されれば、商標権侵害にはなりません。


【先使用権の主張】

 自ら用いている標章(冒頭の例ではレストラン名)と登録商標との類似性、指定商品・指定役務との類似性を否定できない場合でも、先使用権(商標法32条1項)により、商標権者の許諾なしに、標章(レストラン名)を使い続けられることがあります。


 原則としては、たとえ他人の商標が出願・登録される前から使用していたとしても、他人の商標登録がされた場合は、それと同一又は類似の商標を、指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務に使用すれば、商標権侵害となります。
 しかし、未登録であっても、既に使用されて信用が蓄積されてきた商標(冒頭の例で言えば、何年も営業して地元のお客さまに浸透してきたレストラン名)がすべて使用できなくなるというのも酷です。


 そこで、日本国内において、不正競争の目的でなく、他人の商標登録出願前から使用した結果、その商標登録出願の際に、現にその商標が自己の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているときは、その者が継続してその商品又は役務についてその商標を使用する場合には、その商標について使用することができるという先使用権(商標法32条1項)が認められます。


 注意しなければならないのは、商標の登録日ではなく、「出願日」が基準となることです。
また、「需要者の間に広く認識されているとき」(周知性)というのは、次回、「無効の主張」の項で解説する商標法4条1項10号よりも、狭い地域での周知性で足りると考えられています。他の地域や他県からわざわざお客が来るような有名店でなくても、その地域で何年も営業し、地元で知られているレストランであれば、この要件を満たす可能性は高いと思われます。


 もっとも、先使用権により登録商標と、それと同一又は類似の未登録商標とが併用されると、消費者にとっては紛らわしく、両者を混同しかねないという問題があります。そこで、商標権者は先使用権者(冒頭の例ではレストランの経営者)に対し、例えば、「○○とは関係ありません。」といった混同防止表示を付けるように請求することができます(商標法32条2項)。


 先使用権者は、このように混同防止表示という負担を負うことになるので、先使用権が認められる場合でも、次回に解説する登録商標の無効の主張や不使用取消審判の請求なども検討してみる価値があります。


 次回は、引き続き、冒頭のケースに基づいて、他に考えられる主張等として、周知商標を理由とする無効の主張と、不使用取消審判の請求について解説します。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
専門は企業法務。30年ほど前に小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられずに、今でもITを愛好していることの影響から、企業法務の中でも、特にIT関連の法務を専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。

所属事務所:
カクイ法律事務所 http://www.kakuilaw.jp

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