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取締役と刑事罰(3)

テーマ:役員・株主

2010年11月25日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 今回も引き続き、会社法上の取締役に対する刑罰法規を説明します。今回は、「株式の超過発行の罪」と「取締役等の贈収賄罪」について説明します。


【株式の超過発行の罪】

 株式の超過発行の罪は、「株式会社が発行することができる株式の総数を超えて株式を発行したとき」(会社法966条)に成立します。


 これは、取締役に新株を自由に発行できる枠を与える代わりに、その枠を勝手に超える発行行為について刑罰を科したもので、刑法の特別法ではない、会社法に特有の犯罪といえます。監査役は、新株の発行自体には関与しないので、本罪の主体には含まれません。
 「発行することができる株式の総数」とは、定款で定められた発行可能株式総数のことをいいます。


 本罪の注意点は、その株式発行によって定款で定められた発行可能株式総数を超えるという認識があれば、故意があるとされるということです。つまり、その株式の発行が犯罪であるという認識まで持たなくとも成立してしまうので、注意しないと、本人がことさらに犯罪に加担する気がなくとも刑事罰の対象となる可能性があるのです。


 払込みなしに株式を発行する、いわゆる「カラ株」の発行は、本罪の対象とはなりません。この場合には、刑法上の有価証券虚偽記入罪あるいは有価証券偽造罪が成立することになります。


 法定刑は、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」です。本罪では、懲役と罰金が併科されることはありません。国外犯も処罰されます。


【取締役等の贈収賄罪】

 取締役等の贈収賄罪は、「その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」(会社法967条)に成立します。


 これは、刑法の贈収賄罪(刑法197条以下)の特別法といえますが、刑法の贈収賄罪の主体は公務員であり、公務員は「不正の」請託でなくとも犯罪となりますから、刑法では会社法の取締役よりも厳しい処罰が規定されているといえます。


 主体は、特別背任罪の主体(取締役、監査役、取締役の職務代行者など)に加えて、会計監査人等も含まれます。


 「不正の」請託とは、役員等の職務に関し不正な行為をすること、又は当然しなければならない行為をしないことを依頼することをいいます。請託の内容である不正行為が現実に行われる必要はありません。


 「不正」は「違法」と言い換えてもほぼ同じで、法令・定款・株主総会決議に違反する行為は不正な行為にあたります。取締役は会社経営に関して広範囲な権限を持ちますから、取締役の裁量内の行為であれば一般には不正とはいえません。しかし、その裁量が職務上の義務に違反していたり、著しく不当な場合はこれにあたるといえます。


 もっとも、取締役が不正な請託に応じて賄賂(リベート)を受け取るような場合は、前々回のコラムで述べた「特別背任罪」(会社法960条)にも該当することが多く、実際にはこちらで立件されるのが実態のようです。


 賄賂を提供する側も処罰の対象となります。利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者については、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科せられます(会社法967条第2項)。


 実際の事件で、会社役員が贈賄で逮捕されるケースがよく報道されますが、その場合、賄賂を受け取る相手方(収賄側)は監督官庁などの公務員であることが多く、取締役は刑法上の贈賄罪で逮捕・起訴されることになります。ちなみに、刑法上の贈賄罪の法定刑は、「3年以下の懲役または250万円以下の罰金」です(刑法198条)。


 取締役は、賄賂をもらう側にも受け取る側にも立ちうる地位にあり、各々に罰則が設けられていますが、これは取締役の持つ権限の大きさの表れといえ、十分な自覚と注意が必要です。


 取締役の収賄罪の法定刑は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」です。懲役と罰金が併科されることはありませんが、受領した利益は没収または追徴されます。
 国外犯は、収賄側(賄賂を受け取る側)のみが処罰されます。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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