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全株式譲渡制限会社による募集株式の発行(3)

テーマ:資金調達

2010年5月27日

解説者

弁護士 戸谷 景

【申込者→引受人→株主】

 第三者割当てによってある会社の株式を引き受け、その会社の株主になるためには、原則として、まず申込者となり、それから引受人となり、最後に株主になるという段階を踏むことになります。
 申込者というのは、自己の氏名または名称、住所、引き受けたい株式の数を記載した書面を株式会社に交付し、これによって株式引受けの申込みをした者のことであり(会社法203条5項、2項)、これに対して会社が募集株式の割当て(同法204条1項)を行うことによって申込者は引受人となり(同法206条1号)、引受人は、払込期日または払込期間内に出資の履行をすることでめでたく株主となります(同法209条)。


【株式申込証拠金制度】

 多くの会社は、払込期日の前に申込期日または申込期間というものを設定し、申込者に対してその申込期日または申込期間内に株式払込金と同額の申込証拠金を払い込むことを求め、申込証拠金を払い込んだ申込者に対してだけ株式を割り当てて、払込期日に申込証拠金を株式払込金に充当する仕組みを採用します。
 これが株式申込証拠金制度です。


【引受けの申込みをしようとする者に対する通知事項】

 募集事項等の決定の次に会社が行わなければならない法定の手続は、引受けの申込みをしようとする者に対する募集事項等の通知です。


1.第三者割当ての場合

 第三者割当てによる場合、会社が申込みをしようとする者に対して通知すべき事項は、以下の4つです(会社法203条1項)。
 (1)会社の商号
 (2)募集事項
 (3)金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
 (4)このほか、法務省令で定める事項(会社法施行規則41条参照)


2.株主割当ての場合

 株主割当ての方法で募集株式の発行を行う場合には、次の事項を株主に対して通知しなければなりません(会社法202条4項)。
 (5)募集事項
 (6)その株主が割当てを受ける募集株式の数
 (7)申込期日
 さらに、株主割当ての場合には、申込みをしようとする者、つまり株主に対して、上記(1)から(4)の事項も通知しなければなりません。
 したがって、株主割当ての場合には、株主に対して2つの通知を行うべきこととなりますが、現実に2回に分けて通知する必要はなく、(1)から(7)の事項をすべて記載した1通の通知で済ませてもよいこととされています。


【通知の期限】

 (1)〜(4)の通知の期限は法定されていませんが、申込みの前にすべきことは明らかであり、実際には申込期日または申込期間の前になされることになるでしょう。
 これに対し、株主割当ての場合に要求される(5)〜(7)の通知は、申込期日の2週間前までに行うべきことが法定されています(会社法202条4項)。したがって、株主割当ての場合に、(1)〜(4)の通知と(5)〜(7)の通知を1回で済ませる場合には、申込期日の2週間前までに通知することが必要となります。
 もっとも、この2週間の期間は、株主全員の同意があれば短縮できると解されています。そのようにして期間を短縮する場合には、募集株式発行後の変更登記の際にその同意書を添付しなければならないので、忘れずに作成しておきましょう。


【通知の方式】

 (1)〜(4)の通知に関しては、申込者が会社に対して通知した住所(申込者が別に通知を受ける場所または連絡先を会社に通知していた場合は、その場所または連絡先)にあてて発すればよいと規定されているのみで(会社法203条6項)、特に方式は定められていません。
 (5)〜(7)の通知についても、特に方式は定められていませんが、これは株主に申込みの機会を与えるための通知であるため、公告によることはできないとされています。
 後に通知の有無や内容についてトラブルが発生しないとも限らないので、そのような場合に備えて、きちんと記録に残る形で通知しておいたほうが無難でしょう。


【通知に問題があった場合の効果】

 取締役が、引受人の募集をする際に通知しなければならない重要な事項について虚偽の通知をした場合や、申込みを勧誘する際に用いた資料に虚偽の記載をしていた場合には、これによって損害を受けた第三者に対し、取締役個人が損害賠償責任を負うことになりかねません(会社法429条2項1号イ)。
 このような場合には、錯誤(民法95条)や詐欺(同法96条1項)などを理由として、株式引受け自体が無効とされたり、取り消されることもありえます。
 さらに、通知事項のうち重要なものについて通知が欠けていた場合には、そのことが株式引受けの無効事由または取消事由になるとも解されています。
 なお、錯誤や詐欺等を理由として引受けの無効または取消しを主張できる期間は、引受人が株主となった日から1年までに制限され、その期間内であっても、株主として権利を行使した後は、もはやそのような主張ができないとされています(会社法211条2項)。


氏名:戸谷 景

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
2008年大宮法科大学院大学卒業

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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