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役員の法律(3)名前だけの取締役?

テーマ:役員・株主

2010年5月 6日

解説者

弁護士 高橋弘泰

【「名前だけだから...」という言い訳は通用するか?】

 いわゆる閉鎖会社や同族会社においては、会社の業務に関与しない、いわゆる「名目的取締役」が置かれていることがしばしばあります。中小企業の経営者の中にも、「名前だけだから...」と言われて取締役に就任したり、就任を依頼した経験を持つ方々は珍しくないのではないでしょうか。
 では、実際に会社がトラブルを起こし、取締役の責任が追及されることになった場合、「名前だけだから...」という事情は考慮されるのでしょうか。


 結論からいえば、ノーです。 役員である取締役が会社あるいは第三者に対して責任を負う場合があることについては、前回と前々回のコラムで述べてきたとおりですが、ここでいう「取締役」とは、創立総会または株主総会で適法に選任された者であればよく、その業務実態を問わないとされています。いわゆる「名目的取締役」であることを理由に責任を軽減できるというような法律は存在しないのです。


 現に、非常勤のいわゆる社外重役として名目的に取締役に就任した者について、社長の業務執行をまったく監視せず、取締役会の招集を求めたりすることもなく、社長の独断専行に任せている間に、社長が代金支払いの見込みもないのに商品を買い入れて売主に対し代金相当額の損害を与えた場合に、売主に対する損害賠償責任を認めた判例があります(最高裁昭和55年3月18日民集129号331頁)。


【新会社法における判断】

 もっとも、過去の裁判例では、報酬を受けていないことなどを理由に、通常の取締役より責任を緩和している場合がないわけではありません。
 しかし、そのような裁判例は、現在の会社法制定以前に、小規模なものも含め株式会社すべてに3人以上の取締役を置くことが義務付けられていた時代のものであることに注意すべきです。会社法の下では、取締役は1名でも足りることになりましたから(会社法326条)、取締役を3人以上置くというような制限がなくなった現在の会社法の下では、名目的取締役について再び厳しい判断がなされる可能性が高いと考えられます。
 また、責任を問われるかどうかにかかわらず、名目上の取締役として就任することを会社と合意した者であっても、他の取締役や業務執行一般に対する監視義務を負うことに変わりはありません。


 ですから、「名前だけだから...」と言われて取締役に就任してしまったら、いつの間にか思ってもみなかった重い責任を追及される危険があると考えるべきでしょう。借金の保証人と同じで、「絶対に迷惑はかけないから...」といった口約束ほどあてにならないものはないということです。現在「名目的取締役」に就任している役員の方がいたら、名目的ではない取締役としての監視義務を果たさなければなりませんし、そうすることができないのであれば、報酬は受け取らないか、場合によっては辞任することも考えるべきでしょう。


 逆に、「名前だけだから...」といって他の人に取締役の就任を依頼することも控えるべきと思われます。その人に迷惑をかける可能性があることはもちろんですが、機関構成の柔軟化が図られ、会社が多様な機関構成を選ぶことが可能な現在の会社法の下では、わざわざ名目的取締役を置くメリットは存在せず、まして、実質的な仕事をしない取締役に報酬を支払うことには経営上何の意味もないからです。また、現行法では、無報酬で名目的取締役を置く理由もないといえるでしょう。


【事実上の取締役】

 ちなみに、「名目的取締役」とは逆の例として、中小企業において、正式に取締役として選任されていないにも関わらず、事実上会社の業務を執行している者について、第三者に対する責任を認めた例もあります。
 これには、(1)取締役に就任していないのに不実の就任登記を行い、そのことに積極的に関与したことを理由とするもの、と(2)事実上取締役として会社を主宰していたことを理由とするもの、の二つのパターンがあります。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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