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労働者派遣法の改正について(3)

テーマ:採用・雇用

2012年4月19日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 前に述べたように、今回の労働派遣法改正は、平成22年に民主党政権が提出した改正案が、野党の反対により成立しなかったため、もともとの改正案の一部に修正を加えたものになっています。今回はこの修正部分について説明します。


【製造業務派遣】

 平成22年版改正案(以下「改正案原案」といいます)では、物の製造業務(物の加工、組立てその他の物を製造する工程における作業として政令で定めるものに係る業務)を、労働者派遣事業を行ってはならない業務に追加するものとされていましたが、修正案により原則禁止が見送られました。製造業派遣の原則禁止は、次に述べる登録型派遣の原則禁止と並んで、本改正の主要部分でした。製造業について労働者派遣を禁止すべきか否かについては多くの議論のあるところであり、法改正後も速やかに検討すべきとの付帯決議がなされています。


【登録型派遣】

 さらに、改正案原案では、派遣元事業主は、その常時雇用する労働者でない者について労働者派遣を行ってはならないものとされ、いわゆる登録型派遣が原則禁止されていましたが、これも修正案により禁止が見送られました。


 登録型派遣とは、派遣労働を希望する労働者が、あらかじめ派遣会社に登録しておき、派遣先が決まった時点で、一定の期間を定めて雇用され、派遣期間が終わると雇用関係も終了するという派遣の形態です。賃金は派遣先での就業期間中にのみ支払われることになります。派遣労働者にとっては、派遣労働契約の契約期間のたびごとに雇用と離職を繰り返すことになり雇用が不安定になります。実際には派遣労働の大半がこの形態であり、2008年の金融危機で一気に表面化した「派遣切り」の問題は、自動車・家電などの大手製造企業が相次いで派遣会社との派遣契約を打ち切ったため、職や住まいを失う派遣労働者が急増したことから生じた社会問題といえます。


 付帯決議では、「登録型派遣の在り方、製造業務派遣の在り方及び特定労働者派遣事業の在り方については、本法施行後1年経過をめどに論点を整理し、東日本大震災による雇用状況、デフレ・円高等の産業に与える影響及び派遣労働者の就労機会の確保等も勘案して労働政策審議会での議論を開始すること」とされています。


【日雇い派遣について】

 改正案原案では、日雇い派遣の定義は「日々雇入または2か月以内」でしたが、修正案により、「日々雇入または30日以内」となり、適用除外の職種も追加されました。日雇いの定義が狭くなったことにより、現実にどの程度影響があるかは分かりませんが、この点も改正原案からの後退とはいえるでしょう。


【労働契約申込みみなし制度の施行期日】

 派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働の労働条件と同一内容の労働契約を申し込んだものとみなすという制度(労働契約申込みみなし制度)について、改正案原案では施行期日が改正案施行日からとされていましたが、修正案により、改正案施行日より3年を経過した日とされました。簡単にいえば3年間先送りされたということで、この間に何らかの経過措置が取られることになります。


 この点につき、付帯決議においては、(1)労働契約申込みみなし規定の適用に当たっては、事業者及び労働者に対し期間制限違反に該当するかどうか等の助言を丁寧に行うこと、(2)いわゆる偽装請負の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に実施するように改めること、(3)労働契約申込みみなし規定が適用される「偽装する意図を持っているケース」を具体的に明確化すること。併せて、事業者及び労働者に対し、偽装請負に該当するかどうかの助言を丁寧に行うとともに、労働者派遣と請負の区分基準を更に明確化すること、(4)労働契約申込みみなし制度の創設に当たり、派遣労働者の就業規則が縮小することのないよう、周知と意見聴取を徹底するよう努めること、とされています。


【その他】

 今回の改正では直接触れられていませんが、(1)いわゆる専門26業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、専門26業務の見直しあるいは追加が必要なのか、(2)これも今国会で法改正された有期労働契約と登録型派遣の関係、など今後議論すべき問題も多く、労働者派遣法の動きについては今後も注視すべきと思われます。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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