本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

競業行為とは何か(3)取締役の競業行為

テーマ:役員・株主

2011年12月 1日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 前回までは、従業員及び退職後の職員の競業行為について説明してきましたが、競業行為といえば最も問題となるのはやはり現職の取締役です。


 会社法では、取締役が自己または第三者のために事業の部類に属する取引をしようとするときは、株式会社の承認を得なくてはならないと定めています(会社法356条1項1号)。取締役は、会社のノウハウ、顧客その他の会社の重要情報を入手しやすい地位にあることから、その競業行為については、法的な規制が定められているのです。今回は、取締役の競業行為の問題点について説明します。


【競業の範囲】

 競業にあたるのは、会社の「事業の部類に属する取引」です。この「事業の部類に属する」かどうかは、目的物(商品・サービスの種類)及び市場(場所・流通段階など)が競合するかどうかで決まります。会社が現実に行っている取引ばかりでなく、これから行おうとしている取引も含まれます。その判断にあたっては、形式的に定款に記載されているかどうかよりも、実際に進出を予定し着手しているかどうかが重要です。


 具体的な裁判例としては、「山崎パン事件」が有名です。この事件では、関東地域一帯で製パン業を営んでいたX社の代表取締役Yが、X社の承認を得ることなく、別会社を設立して関西地区で製パン業を営んだことにつき、X社がYに損害賠償を求めました。裁判所はYの行為を競業避止義務違反にあたるとしましたが、そのポイントとなったのは、X社が関西市場進出のための市場調査を進めていたことでした。


 競業は「自己または第三者のため」になされることが必要ですが、この意義について、自己または第三者が権利の主体となる場合と解するか、自己または第三者に利益が帰属する場合と解するか両方の立場があります。現在では、経済的な効果が誰に帰属するかが重要であることから、後者の立場が通説です。


【会社の承認とは】

 取締役の競業行為には会社の承認が必要ですが、承認する機関は、取締役会のない会社では株主総会(会社法356条1項1号)、取締役のある会社では取締役会(同法365条1項)となります。


 競業取引しようとする取締役は、承認を得るにあたり、取引に関する重要な事実を開示しなくてはなりません(同法356条1項、365条1項)。ここでいう「重要な事実」とは、取引の相手方、取引の種類、目的物、数量、価格、取引期間など、取締役会や株主総会が判断するのに必要な情報のことです。取引の度に承認を得なくとも、十分な情報の開示があれば、包括的な承認も可能です。


【競業取引違反の効果】

 競業行為をするのは会社ではなく、取締役なので、株主総会や取締役会の承認を得なくとも無効にはなりません。ただし、競業取引によって会社に損害を与えた場合には、取締役は任務懈怠に基づき損害賠償責任を負います(同法423条1項)。また、競業取引によって取締役が得た利益が会社の損害額と推定されます(同条2項)。これは、損害を被った会社側の立証の困難さを軽減するためです。


 この点につき、取締役が競業事業を行う別会社を設立して、その会社が損益計算上常に赤字だった場合、あるいはその取締役が受け取っていた報酬が非常に低額・無報酬だった場合はどうなるかという問題があります。実際の裁判例では、単純に取締役が受け取った報酬額を利益として算定すると、認定できる損害額が著しく低額になってしまうとして、「実質的に」取締役が得たといえる利益(本件では別会社の役員の全報酬額の約5割)を損害額と推定するという考え方を取ったものがあります(名古屋高裁平成20年4月17日判決)。


 ちなみに、旧商法では、取締役が競業行為により得た権利・利益を会社に移転させる権利(介入権といいます)が認められていましたが、現在の会社法ではこの制度は廃止されています。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ