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商取引の基礎知識(3)宅配便での荷物の紛失―荷受人に対する責任

テーマ:契約・取引

2011年5月19日

解説者

弁護士 島岡清美

 宅配便などの物品運送は企業活動においてもよく利用します。大抵の場合滞りなく配送がされていると思いますが、万一、配送途中に品物が紛失した場合、宅配業者はどのような責任を負うのでしょうか?
 今回は、宅配業者が商法上負っている責任についてお話したいと思います。


【商法の規定】

 商法では宅配業者のことを「運送人」と呼びます。宅配業者に荷物の配送を依頼した人は「荷送人」、配送先の人を「荷受人」といいます。


 商法では、運送品が滅失毀損したときには、運送人が、運送品を受取るとき、引き渡すとき、保管するとき、運送するときにおいて注意を怠っていないことを証明できなければ、その損害賠償責任を負うとしています(商法577条)。
 これは、一般的な民法の債務不履行責任と同じことと解釈されており、特別重い責任が課されているものではありません。注意を怠ったために滅失毀損したのなら、賠償するのは当然ということです。


 また、運送人についても、前回まで見てきた場屋の主人と同様に、高価品についての特則が設けられています。
 商法578条は「貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たり、その種類及び価額を明告したのでなければ運送人は損害賠償の責任を負わない」と規定しており、高価品であることを明らかにせずに配送を依頼していた場合は、途中で紛失等があっても、運送人に損害賠償を請求することはできないとなっています。


 前回までホテルの場合に見てきたことと同様に、高価品であればそれ相応の注意をもって運送し、たとえば保険をかけるとか、割増運賃を請求するなどして体制を整えて運送することが可能であったのに、その機会を逸したのですら、運送人に責任を負わせるのは酷であるという考え方に基づくものです。


【約款】

 商法では、このような規律がされているのですが、これも前回と同様、任意規定ですので、運送契約(実際には宅配便約款としてあらかじめ定められていることが多いと思います)において、別途約定を交わしておけば、そちらが優先します。


 上記の規律の中で、宅配業者として、できる限りリスクを縮小化しようと思ったとき、どのような約款にしたらいいでしょうか?


 紛失の原因を問わず(故意過失を問わす)責任免除とするという方法がもっともリスクを避けられることだと思いますが、さすがにこれでは公序良俗や信義則に反することになり、効力は認められないと思われます。そこで、賠償責任を負うことになるのはやむをえないとしても、その金額の限度を定めておこう(責任制限)と考えることになります。
 国土交通省が定めている標準宅配便約款でも、「当店は、荷物の滅失による損害については、荷物の価格を送り状に記載された責任限度額の範囲内で賠償します」と定められており、ほとんどの宅配業者はこの約款を採用しているものと思われます。


 また、このような約款が、宅配業者に故意はもちろんのこと、重過失がある場合にまで適用されないことは、ホテルの場合と同様です。


【不法行為との競合】

 約款というのは、契約責任を規律するものですが、その契約関係にある運送人と荷送人の間でも、不法行為の要件(権利侵害、違法性、故意過失、損害と因果関係)が満たされるなら、不法行為に基づく損害賠償請求もできることになります。


 ではその場合、約款の効力は不法行為に基づく請求にも及ぶでしょうか? この点は、法律構成が異なるだけで、実質は同じであるのに異なる結論になるのは相当ではないですから、約款の趣旨に鑑みて、不法行為の構成をとっても責任制限されるという判例があります。
 債務不履行と不法行為は、現実に起こっている事象としてはほとんど同じですから、このような結論は妥当であると思います。


【契約当事者以外からの請求】

 しかし、契約当事者ではない者に対し不法行為が成立する場合、約款の効力はどうなるのかということが、次に問題となります。


 前回まで見てきたホテルなどの例では、ホテルと利用客という当事者間だけの問題であったものが、物品運送となると、配送を依頼した荷送人と依頼を受けた運送人という契約当事者以外に、荷受人や物品の所有者など、実際に損害を被った人が荷送人以外の人であることがあり得るのです。


 当然ながら、約款というのは契約当事者のみを拘束するものですから、第三者には効力が及びません。したがって、第三者が損害を被り、不法行為に基づいて損害賠償請求をしてきた場合に、これに対して約款は力を発揮しないことになるのです。
 しかし一方で、運送業務において、荷送人以外の人の存在というのは当然予定されているものですから、人が違うだけで、約款で守られたり、そうでなかったりするのは、運送人に酷であるともいえます。


 そこで次回は、荷送人以外に損害が発生し、不法行為に基づいて損害賠償を請求された場合の運送人の責任をどのように考えるべきか、実際の判例を見ながら考えてみたいと思います。


氏名:島岡清美

生年:1973年生

弁護士登録年・弁護士会:
2002年弁護士登録、東京弁護士会所属

学歴:
1996年3月 中央大学法学部卒業

得意分野等:
多種多様な事件を手がけておりますが、基本的には、社会から理解されないことによって苦しんでいる方の手助けをすることが多いです。これまでの経験において比較的取扱いの多い業務分野あるいは特徴的な分野を挙げるとこのようになります。
 ・一般民事事件(賃貸借、請負、貸金、売買、不法行為等)
 ・企業法務(契約書作成・確認、法務相談への対応等)
 ・離婚、婚姻費用分担、DV(保護命令申立)、セクハラ訴訟
 ・刑事事件(示談交渉、刑事弁護、被害者参加)
 ・農地法関係(行政との交渉等)
 ・子どもの人権関係(体罰事件、親子関係不存在確認訴訟等)
 ・児童福祉法関係(児童相談所と親権者との関係調整、行政不服審査請求手続等)
 ・破産、個人再生、任意整理

所属事務所:
堀法律事務所 http://hori-laws.jp/

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