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有期労働契約について(3)有期労働契約の問題点・その2

テーマ:採用・雇用

2012年3月22日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 前回に引き続き、有期労働契約に関する問題点とそれに関する議論について説明します。ちなみに、3月16日に労働政策審議会が、昨年末に提出された報告書に基づいて、厚生労働大臣に法改正を答申し、開会中の通常国会に改正法案が提出される予定です。報告書と答申の具体的な内容は次回のコラムで説明します。


【契約終了に際しての手当支給の是非】

 有期労働契約に伴う労働者の雇用不安への対応策の一つとして、契約の終了に際し、一定の手当を使用者が支払うという制度を導入すべきだという意見があります。こうした手当を支払う仕組みを労使合意で設けることは自由であり、実例も存在しますが、手当の支払を使用者に義務付けるような法制度はありません。フランスでは、契約終了の際に一定の手当の支払を法律で事業主に義務付けているようです。
 もっとも、雇止めに関する労使紛争を金銭的に解決する手段としての手当の制度化には反対する声もあります。


【契約期間中の処遇や雇用管理】

 有期契約労働者と期間の定めのない労働契約で雇用される労働者との間の均等・均衡待遇について、法的に対応すべきではないかという議論があります。
 労働契約法は、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとしています(3条2項)。


 短時間労働者については、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」いわゆる「パートタイム労働法」により、職務の内容や人材活用の仕組み、運用等の面から正社員と同視し得る場合には厳格な均等待遇(差別的取扱いの禁止)を導入しつつ(8条)、その他の者については、正社員との均衡を考慮しつつ、その職務の内容・成果、意欲、能力及び経験等を勘案して待遇を決定することを促す(9条)とともに、待遇についての説明責任を課す(13条)という均衡待遇の仕組みが設けられています。また、短時間労働者であれば、契約期間の定めの有無に関わらず、パートタイム労働法が適用されます。ただし、これには私法上の効果がないと解されており、労働者の救済につながっていないという意見もあります。


 有期契約労働者の均等・均衡待遇の問題は、正社員の待遇の在り方にも関わり、有期契約労働者の均等待遇あるいは均衡待遇を考慮する際の比較対象となる労働者としてどのような労働者を想定し、また、どのような方法で推進するのかが問題です。


【正社員への転換の推進】

 正社員(使用者から直接雇用され、契約期間の定めがない、いわゆる正規型の労働者)としての就職を希望しながらそれが叶わず、やむを得ず有期契約労働者として働いている人もいます。短時間労働者については、事業主は、通常の労働者への転換を推進するための一定の措置を講じなければならないものとされており(パートタイム労働法第12条)、国は有期契約労働者を正社員に転換させる制度を設け、実際に転換させた事業主を対象とした助成金を設けています。正社員への転換による人材活用に取り組む企業においては、「勤務地限定」、「職種限定」の期間の定めのない労働契約など、多様な雇用形態を用意している事例もみられます。


 そこで、有期契約労働者の正社員転換について法的に対応すべきという議論があります。これについては、期間の定めのない雇用へ転換することと、正社員へ転換することがどのように違うのかということも含めて考える必要があります。


【1回の契約期間の上限等】

 有期労働契約の1回の契約期間にいても議論があります。
 労働基準法は、長期の労働契約による人身拘束の弊害を排除するため、契約期間の最長期間を制限しています(14条1項)。平成15年の労働基準法改正において、最長期間が原則1年から3年に延長されましたが、暫定措置として、1年を超える期間の労働契約を締結した労働者についても契約期間の初日から1年を経過した日以後においてはいつでも退職することができるものとされました(労働基準法附則第137条)。
 一方で、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間中に解雇できないとされるなど(労働契約法第17条第1項)、労働契約の期間の定めは、期間中の雇用を労働者に保障するものともなっています。


 実態調査によれば、1回の契約期間が1年を超える労働契約は、有期労働契約全体の1割強であるといわれています。労働契約の期間には、その上限を制限することによって、主として人身拘束の弊害から労働者を保護する機能と、契約期間中の雇用を保障する機能との両面があり、人身拘束を防ぐという趣旨で契約期間の上限を短くすべきという意見と、より長期の契約期間を定められるようにすることは、雇用の安定に資するものであるから、上限はむしろなくすべきという意見が対立しています。


 次回は、これらの問題点を踏まえて、今後の法改正の方向性について説明します。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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