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取締役の利益相反取引とは(2)

テーマ:役員・株主

2010年6月24日

解説者

弁護士 高橋弘泰

【利益相反かどうか微妙なケース】

 前回は取締役の利益相反取引について、その類型や違反した場合の効果について述べましたが、今回は応用問題ということで、利益相反かどうか、少し分かりにくいケースについて考えてみたいと思います。


【直接取引の場合】

 利益相反取引のうち、「直接取引」と呼ばれる類型は、取締役が当事者として会社と取引する場合をいいます。ここでいう「当事者」とは、自己のために取引する場合と、他人の代理人・代表者として第三者のために取引する場合の両方を含んでいます。


 この場合、取締役の取引の相手方である会社を代表するのが、その取締役本人であっても、他の取締役であっても、利益相反取引にあたり、株主総会または取締役会の承認が必要となります。それは、別の取締役が会社を代表する場合にも、両者が通謀して不当な利益を図る危険があるからです。


 ところで、次のようなケースはどう考えるべきでしょうか。


 A社の取締役Bが代表取締役を勤めるC社が、A社と取引する場合、A社において株主総会または取締役会の承認は必要でしょうか。


 いくつかの場合に分けて考えてみましょう。


1.A社を代表するのがBである場合。

 この場合には、A社において承認が必要です。なぜなら、BはA社とC社の両方を代表すると見ることができるからです。C社の代表者がB以外の代表取締役であった場合にも同様です。


2.A社を代表するのがBではなく、かつC社の代表者がBである場合。

 この場合にも、A社において承認が必要と考えられます。なぜなら、C社を代表するのがBである以上、取締役BがA社と取引する場合と同視できるからです。


3.A社を代表するのがBではなく、かつC社の代表者がB以外である場合。

 通説では、この場合には、A社において承認は不要と解されています。2.の場合とは違って、C社を代表するのがB以外の代表取締役であれば、取締役BがA社と取引するとはいえないから、というのがその理由です。
 しかし、利益相反の危険を実質的に考えて、C社を誰が代表するかにかかわらず、A社において承認が必要であると考える立場も有力です。
 承認を受けない取引は無効となるという強い効果が生じることから、取引の安全に配慮して、通説のように形式的に考えるのが分かりやすいとはいえます。もっとも、株主や会社債権者に与える現実的なリスクを考慮すると、実務的には実質説の立場を取るべきではないかと思います。


 なお、承認を要求するのは株主の利益保護のためですから、会社とその全株式を有する株主との取引や、直接取引であっても株主全員の同意がある場合には、取締役会の承認は不要とするのが判例の立場です。


【間接取引の場合】

 「間接取引」とは、取締役が会社との契約の当事者となるのではなく、会社が取締役の債務を保証する場合のように、取締役以外の者との間で会社・取締役間の利害が相反する取引をしようとする場合をいいます。債務の保証が典型的ですが、債務引受けや物上保証のようなものも含まれます。


 ここで、直接取引のときと同じような問題があります。たとえば、次のようなケースはどうでしょうか。


 A社の取締役Bが代表取締役を勤めるC社の債務を、A社が保証する場合、A社において株主総会または取締役会の承認は必要でしょうか。


 これも場合分けして考えてみます。


1.A社を代表するのがBである場合。

 判例は、この場合、承認が必要であるとしています。


2.A社を代表するのがBではない場合。

 直接取引とは異なり、BがC社を代表するという行為はないので、これ以上の場合分けはありません。そして、直接この場合に該当する判例は存在していません。 しかし、実質的に考えれば、A社を代表するのがBであるかどうかにかかわらず、利益相反の危険は生じるといえるでしょうから、承認を得るのが適切ではないかと考えます。


 ここで忘れてはいけないのは、承認さえあればきわどい取引もすべて許されるという意味ではないということです。


 前回も述べたように、取締役会の承認を得ていた場合でも、結果的に会社に損害を与えた場合には、その取引を行った取締役、及び取締役会で承認に賛成した取締役は、連帯して損害賠償責任を負うことになりますから、利益相反取引の承認には慎重さが求められます。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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