本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

役員の法律(2) 取締役の善管注意義務とは?

テーマ:役員・株主

2010年4月30日

解説者

弁護士 高橋弘泰

日本では、従業員から取締役に昇進する例が多く、従業員と取締役を兼務する「使用人兼取締役」も多いので、つい取締役を従業員の延長線上で考えてしまいがちです。しかし、従業員と取締役はまったく別の地位であり、その責任は大きく異なります。今回は、取締役に課せられている善管注意義務を中心に、取締役の責任を解説します。


【取締役の善管注意義務とは】

 会社法上、株式会社の取締役は会社から経営の委任を受けていると考えられており、その関係には、民法の委任に関する規定が適用されます(会社法330条)。民法は、委任を受けた者は「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」(民法644条)と定めており、これを「善管注意義務」といいます。
 一方、会社法でも「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」(会社法355条)と定められています。これは「忠実義務」と呼ばれていますが、善管注意義務とは別個の義務を定めたものではないと解されています。
 善管注意義務の中身をもう少し具体的に言うと、「会社経営に携わる者として、その会社の規模、業種等のもとで通常期待される程度の注意義務」であり、単なる従業員とは異なり、取締役としての職務や地位に値するだけの高度な注意力が要求されます。


【善管注意義務違反の例】

 取締役が善管注意義務に違反したことにより会社に損害を与えた場合には、会社に対し損害賠償責任を負うことになります。
 いわゆる放漫経営などはその典型ですが、取締役の善管注意義務が問われるのは、不作為、つまり会社としてなすべきことを怠ったことによる場合の方がむしろ多いといえます。たとえば、会社が借りていた不動産の賃貸借契約が解除された後、そのまま会社が不動産の占有を続けていたという事例につき、代表取締役に善管注意義務違反が認められた裁判例があります。さらにこのケースでは、他の取締役は代表取締役を監視すべき義務を怠っていたとも判断されました。


【他の取締役を監視する義務】

 このケースもそうですが、何かトラブルがあった場合にしばしば問題になるのは、取締役が他の取締役の不適切な行為を監視・監督しなかったという、いわゆる「監視義務」の違反です。取締役には、他の取締役を監視し、不適切な行為があれば、取締役会を自ら招集し、業務執行の適正化を図るという義務もあるのです。この監視義務は、取締役会の議題になった事項だけでなく、会社の業務一般が対象となります。


【経営判断の原則】

 なすべきことをしなかったという、いわゆる「消極ミス」とは異なり、取締役が経営上の判断を誤ったために損失を招いたという「積極ミス」についても、善管注意義務違反が問題となります。
 この場合は、通常の経営者としての知見や経験を基準として、事実の認識や行為の選択に著しい不合理があったといえるかどうかがポイントになります。これは、企業経営に関する判断は、流動的な状況で行わざるを得ず、ある程度のリスクも伴うものであることから、取締役の裁量権がある程度認められるべきだという考え方によります。この考え方は「経営判断の原則」と呼ばれています。
 つまり、取締役は、会社の利益のために行動する限り、仮にその行動が失敗したとしても、その失敗自体が善管注意義務違反となるわけではありません。ただし、その行動は合理的な根拠と判断に基づいていることが必要です。合理的というのは、その業界における通常の経営者のレベルを基準にして、ということですから、それなりの高度な専門知識や能力を前提にしていることを忘れるべきではありません。


【その他の義務】

 今回は詳しく触れることができませんが、取締役には他にも、自分や第三者のために会社の事業と同様の商取引を行ってはいけない「競業避止義務」や、自分や第三者のために取引して会社に不利益をもたらしてはいけない「利益相反取引禁止義務」も課せられています。もちろん、これらの義務違反には損害賠償責任が伴います。
 このように、取締役の負う責任や義務は、従業員とはまったく異なるものであり、従業員から取締役になった社員は、そのことをよく自覚し、責任の中身を熟知しておく必要があります。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ