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パワハラ関連の裁判例(2)

テーマ:労務一般

2012年3月 1日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 今回も、前回に引き続き、職場でのいじめ・嫌がらせやいわゆるパワーハラスメントについて実際に裁判で争われた例について紹介します。


【上司による電子メール】(東京高判平成17年4月20日)

 この事案の概要は、勤務先の上司であるYが「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールをXとその職場の同僚に送信した行為に対して、Xが名誉毀損又はパワーハラスメントで不法行為を構成すると主張して慰謝料100万円を請求したというものです。
 判決は、控訴の一部を認容し、Yに慰謝料5万円の支払いを命じました。


 判決の内容は、上司の送信したメールについて、「その表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠くものであって、Xに対する不法行為を構成するというべきである」としました。その理由は、メールの文面に会社にとって不必要な人間であるとも受け取られるおそれのある表現が盛り込まれており、人の気持ちを逆撫でする侮辱的言辞と受け取られても仕方のない記載などのほかの部分ともあいまって、Xの名誉感情をいたずらに毀損する内容であったことです。


 一方、このメールが「上司が部下を指導したり叱咤激励するというものではなく、部下の人格を傷つけるもので、いわゆるパワーハラスメントとして違法である」というXの主張は認められませんでした。その理由は、メールの表現方法が不適切であり、Xの名誉を毀損するものであったとしても、その目的は、Xの地位に見合った処理件数に到達するようXを叱咤督促する趣旨であることがうかがえ、その目的は是認することができるので、Yにパワーハラスメントの意図があったとまでは認められないというものです。


 パワーハラスメントかどうかは、上司の主観的認識、つまり部下の人格を傷つける意図で行われたものかどうかが分かれ目になるという見方といえます。


【部下の私生活上の問題への介入】(横浜地判平成2年5月29日)

 上司が部下の私生活上の問題に介入することはどの程度認められるのでしょうか。
この事案の概要は、勤務先Y1の従業員であったXが、取引先の部長Y2から借りていた建物に関し、Xの直属の上司Y3らが、Xに対し人事権、考課権をたてに本件建物の明渡を強要し、Xが明渡を拒否したため、不当な人事考課がなされた結果、精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求したというものです。
判決は、請求の一部を認容し、Y1とY2が連帯して慰謝料30万円を支払うことを命じました。


 判決の内容は、一般論として「企業内において、上司が部下の私生活上の問題につき、一定の助言、忠告、説得をすることも一概にこれを許されないものということはできない」としながらも、「会社の都合で上司が職制上の優越的地位を利用して、家主との和解ないしは明渡要求に応じるよう執拗に強要することは、許された説得の範囲を越え、部下の私的問題に関する自己決定の自由を侵害するものであって、不法行為を構成するものというべきである」と述べています。この場合、上司としての優越的地位を利用する行為がパワハラに該当するといえます。


 このケースでは、直属の上司(Y3)が、Xに対し、人事上の不利益をほのめかしながら、少なくとも2ヶ月間8回にわたり執拗に本件建物を明け渡すことを説得し続けたと認定されています。これは上司として許された説得の範囲を越えた違法な行為とされました。また上司の不法行為が会社の事業の執行に関してなされたことが明らかであるとして、会社は使用者として上司と連帯して損害賠償責任を負うとされました。


【職場でのいじめ】(さいたま地判平成16年9月24日)

 この事案の概要は、病院Yで勤務するAが、職場の先輩であるY1らのいじめが原因で自殺したとして、両親であるXらが、Yに対しては雇用契約上の安全配慮義務違反による債務不履行責任を、Y1に対してはいじめ行為による不法行為責任を理由に損害賠償を求めたというものです。
 判決は、YがXらに対し慰謝料各250万円(Y1との連帯債務)、Y1がXらに対し慰謝料各500万円(各250万円の限度でYとの連帯債務)を支払うことを命じました。


 判決の内容は、Y1によるいじめ行為を認定して不法行為責任を認めた上で、「Yは、Aに対し、雇用契約に基づき、信義則上、労務を提供する課程において、Aの生命及び身体を危険から保護するように安全配慮義務を尽くす債務を負担していたと解される。Y1らのAに対するいじめは3年近くに及んでいるなど、Yは本件いじめを認識することが可能であったにもかかわらず、これを認識していじめを防止する措置を採らなかった安全配慮義務の債務不履行があったと認めることができる。」として、病院の責任も認めました。
 この判決では、職員のいじめ行為を放置したことが雇用主の安全配慮義務違反にあたると明確に述べられています。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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