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下請取引の問題点(2)ソフトウェア開発に関する最近の裁判例

テーマ:システム

2011年9月 8日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 前回に引き続き、下請取引における紛争事例を扱います。特にトラブルの多い事例として、コンピュータソフトウェア開発委託を取り上げます。今回は、ソフトウェア開発に関する最近の裁判例(東京地裁平成22年7月22日判決)に基づいて具体的に説明したいと思います。


【事案の概要】

 この事件は、インターネットによる人材派遣業務システムの運営を企画していた注文者(原告)が、請負業者(被告)との間で人材派遣業務システムに係るコンピュータのソフトウェア(いわゆるマッチングサイト)の開発委託契約を締結し、これに基づいて請負業者から仕様書や試作品の納品を受けるなどしていたにもかかわらず、突然、請負業者から追加費用を支払わなければソフトウェアの開発を続行できないと告知され、契約を一方的に解除されたために、ソフトウェアが完成することを前提に支出した営業費用等に相当する金額の損害を被ったと主張して、損害賠償を請求したというものです。
 つまり、注文者側から請負業者に対して、仕事が完成しなかったことについて損害賠償を求めたというケースです。


【主な争点】

 この種の事案によくあることですが、本件では、そもそも本件契約がどういう内容であったかに争いがありました。すなわち、注文者である原告と請負人である被告との間で、契約内容である業務の範囲に大きな認識の違いがあったということです。
 具体的には、マッチングサイトとしての機能のほかに、シフト管理機能、勤怠評価機能、課金機能等についても開発委託の範囲に含まれるかどうかが争点になりました。


 原告(注文者)は、(1)被告(請負業者)の債務不履行責任、(2)被告の告知義務違反、(3)被告の契約締結上の過失に基づく責任、の3点に基づいて損害賠償を請求しました。


 (1)の債務不履行責任というのは、具体的には、被告が契約締結後に下請け業者を3回変更した上、結局ソフトウェアを完成させることができなかったことについての原告の責任を問うものです。


 (2)告知義務違反というのは、原告は、仕様変更により代金を変更しないと履行できないような事情があることが分かった時点で、それを被告に告知すべきだったのに告知しなかったため原告に損害が生じたというものです。


 (3)契約締結上の過失に基づく責任というのは、被告が契約通りのソフトウェアを完成させることができないにもかかわらず完成させると原告を誤信させ、支出させた責任です。


【裁判所の判断】

 これらの点について裁判所はどう判断したのでしょうか。


 まず、本件契約の内容について、裁判所は、「原告と被告の間に本件ソフトウェアの仕様に関する詳細かつ具体的な合意は形成されていなかった」と判断した上で、本件契約内容として、マッチングサイトの作成以外に、シフト管理機能、勤怠評価機能、課金機能等の作成も含まれていたとする原告の主張を斥けました。


 この判断にあたって、裁判所は本件契約締結の前後における事実経過を詳細に認定しています。
 その中で、上記の判断に至った理由としては、(1)原告と被告の打ち合わせ(少なくとも6回の打ち合わせがあったと認定されています)の中で、本件ソフトウェアの機能として主に「高レベルマッチング」を「売りにする」という旨の発言があったことを踏まえ、被告は、その大枠で作成し、その他の機能については契約金額の範囲内に収まる程度のものとして開発することを想定したこと、(2)本件ソフトウェアの仕様については契約締結までに固まらず、企画の段階に過ぎなかったと被告の技術担当者が認めていること、などが挙げられています。


 また、本件ソフトウェアの形態について、原告は、サイト、パッケージソフト及びASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)の3つにする合意があったと主張していましたが、本件契約締結までの間に作成されたいずれの書面にもパッケージソフト及びASPに関する記載が存在しないことから、この点についての原告の主張も斥けられました。


 次回は、原告が損害賠償請求の理由とした上記3点の各争点について裁判所がどのように判断したか、そしてこの事例から学ぶべき注意点について説明したいと思います。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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