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債権回収(2)〜仮差押・訴訟・強制執行〜

テーマ:契約・取引

2009年8月20日

解説者

弁護士 持田光則

1.取引先からの財産流出の阻止〜仮差押

 取引先(今回も債務者の意味で使います)が代金等を支払わないのに財産を処分しようとしている場合(取引先所有の不動産を売却して他社の債務を弁済しようとしているケースが典型例)、裁判所に対して取引先の財産を仮に差押えるよう申立てることができ、これを仮差押といいます。
 仮差押は、差押(競売等の前段階の手続)の状態を訴訟の結果を待たずに仮に形成するものです。仮差押の決定がでると、取引先は対象となった財産の処分が制限されます。法律上、仮差押の対象となった財産の処分ができないわけではありません。しかし、将来、訴訟等を経て仮差押から差押(仮差押に対して「本差押」と呼ばれます)になったとき、仮差押後に取引先から対象財産を取得した者に対して、優先して差押の効力を主張でき、その財産を競売等にかけて売却代金から配当を受けることができます。仮差押がある場合、取引先から対象財産を取得しようとする者は、将来権利を失うかもしれないという不安定な地位に置かれるため、通常の取引では取得しようとする者がいなくなるというわけです。
 このように、仮差押は取引先に大きな負担をかけることから、いつでもできるというわけではありません。仮差押の決定を得るには、被保全権利の存在(代金債権等があること)と訴訟を待たずに仮差押をする必要性(その財産を処分されると代金の回収が困難となる事情など)の2点を、証拠等で裁判所に認めてもらう必要があります。さらに、仮差押の決定には、通常、裁判所の指定する金額と方法により担保を立てることが条件となります。担保の額は、被保全権利の確実性や保全の必要性、取引先の受ける不利益などを考慮して決められ、仮差押えの対象財産の価格(被保全債権の額を考慮する場合もあります)の5%から40%程度で決まることが多いようです。
 仮差押の対象となる財産には、不動産のほかにも動産(商品在庫)や、銀行の預金口座(預金債権)などが含まれ、財産価値のある権利であれば原則として対象となる建前です(この点は、後述の差押と同様です)。「建前」としたのは、経済的価値のはっきりしない財産について、事実上、仮差押の困難な例があるためです。
 仮差押の利用を考える場合、日々の取引では、仮差押の対象となる取引先の財産に関する情報(取引銀行、会社所有不動産、連帯保証人である代表者が持家か借家か、取引先(売掛金債権の相手方)はどこかなど)を取得しておくことや、被保全債権(代金債権など)が発生した根拠となる資料(契約書、納品書、受取書、取引明細書など)をしっかり保管しておくと役に立ちます。


2.強制執行の準備〜訴訟

 仮差押により将来の強制執行可能な財産を確保できたとしても、それだけでは取引先の財産を現実にお金に換える強制執行ができるわけではありません。強制執行をするには「債務名義」と呼ばれる文書が必要です。債務名義には、取引先との合意に基づいて公証役場で作成する公正証書や裁判手続で合意した場合に作成される和解調書などがありますが、取引先の協力を得られない状態となった後は、訴訟を提起して判決を得て判決書を債務名義とすることになります。
 訴訟については、説明する必要が無いかもしれませんが、勝訴判決を得るためには、代金債権等の成立することが立証され、かつ、取引先が請求を拒める理由のないこと(取引先が主張しないか立証できないこと)が必要となります。
 日々の取引では、代金債権等の成立を立証するため、仮差押の場合と同じように契約書や納品書、受取書、取引明細書などの書類をしっかり管理しておくことが役に立ちます。また、取引先とのトラブルがある場合には、業務日報などに取引先の主張内容や主張された時期、交渉経緯などを記載しておくと、取引先が請求を拒むための主張に対する反論のための証拠・資料として役に立つと思います。


3.取引先の財産をお金に換える〜強制執行

 判決を得ても取引先が任意に支払わない場合、取引先の財産を強制執行にかけなければなりません。具体的には、訴訟で得た判決書などの債務名義を添付して特定の財産を差押えるよう裁判所に申立て、差押えた財産を競売にかけてお金に換えます。
 このとき不動産を差押えると、不動産の価格を評価人に評価させて最低競売価格を決めるなどするので、評価人の費用を裁判所に納める必要があります。この費用も不動産を換価したお金から回収できますが、競売にかけても買い手がつかないと申立人の負担になってしまいます。
 すでに判決等で確定した債権を根拠としているため、債務名義さえあれば特段の立証は必要ない点で、仮差押とは異なります。また、担保を立てる必要もありません。
 日々の取引では、仮差押と同様に、取引先の財産に関する情報を収集しておくことが重要です。たとえ判決で数千万円の債権が認められても、取引先の財産についての情報がなければ回収できません。逆に、取引先の重要な取引相手などの情報を把握していれば、その取引相手に強制執行される状況を知られたくないために、任意の支払いに応じる場合も出てきます。


4.今回のまとめ

 裁判所を介して強制的な債権回収をするためには、取引先の財産に関する情報収集が非常に大切です。日々の取引では、取引先の個別の財産の情報だけでなく、重要な取引相手などの情報があると債権回収の際に非常に役に立つので、興味を持って収集しておくことをお勧めします。


氏名:持田光則

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
2002年・東京弁護士会所属

学歴:
1991年都立昭和高校卒業、1996年専修大学法学部卒業

得意分野等:
不動産トラブル、債権回収、交通事故、医療過誤、離婚、相続、倒産処理など一般民事事件を幅広く扱う。実家が青梅市にあり生梅や梅干の生産をしていることから農業経営にも興味を持ち、若手農業経営者への支援にも取り組んでいる。

所属事務所:
立川北法律事務所(東京都立川市)

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