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法律コラム


[インターネット|2011年4月 7日]
弁護士 石井邦尚

インターネット上の発言と法的責任:プロバイダ等の責任(2)

弁護士 石井邦尚

【プロバイダ責任制限法の制定】

 前回、過去の裁判例で、インターネット掲示板や動画共有サイトの管理者、プロバイダなど(以下では「プロバイダ等」と総称します)が、名誉毀損等について被害者に対する損害賠償責任を問われたケースがあるという話をしました。

 しかし、こうした裁判例を参考にしても、プロバイダ等は損害賠償責任を免れるためにどのように行動すればよいのか、具体的なケースで判断に迷うという問題がありました。そこで、プロバイダ責任制限法が平成14年に施行され、「このような要件をみたせばプロバイダ等は損害賠償責任を負わない」ということが明確にされました。

【被害者に対する責任と情報発信者(加害者)に対する責任】

 プロバイダ等は、上記のとおり名誉毀損等の被害者に対して損害賠償責任を負いますが、プロバイダ等が安易に発言等を削除した場合、逆に加害者と言われている情報発信者に対して損害賠償責任を負う可能性もあります。プロバイダ等は、情報発信者との間の契約違反あるいは不法行為を根拠として損害賠償責任を負うことがあり得るのです。

 そこで、プロバイダ責任制限法は、被害者に対する責任の制限と、情報発信者(加害者といわれている人)に対する責任の制限の両面について定めています。

【被害者に対する責任の制限】

 被害者に対する責任、すなわちプロバイダ等が発言の削除などを行わないことを理由とした責任については、まず、そもそもプロバイダ等が、その情報(発言等)の送信を防止する措置が技術的に可能であることが必要となります。プロバイダ等に不可能を強いることはできないからです。

 その上で、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合でなければ、プロバイダ等は被害者に対する損害賠償責任を問われないとされています。

  • (1)プロバイダ等が、その情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
  • (2)プロバイダ等が、(a)その情報の流通を知っており、かつ(b)その情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

 (1)(2)のいずれの場合も、単にある情報が流通していること(発言等が掲載されていること)を知っているだけでなく、それが被害者の権利を侵害しているということまで知っていたか((1)の場合)、権利侵害であると知ることができた((2)の場合)とういことまで要求されています。

【情報発信者に対する責任の制限】

 プロバイダ等が発言等を削除したような場合の、その情報の発信者(加害者と言われている人)に対する責任については、発言削除等の措置が必要な限度において行われたことに加えて、次の(1)又は(2)のいずれかを満たす場合であれば、発信者に対して損害賠償責任を負わないものとされています。

  • (1)プロバイダ等がその情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
  • (2)(i)被害者と主張する者から、(a)権利を侵害したとする情報(侵害情報)、(b)侵害されたとする権利、及び(c)権利が侵害されたとする理由(侵害情報等)を示してプロバイダ等に対し侵害情報の送信を防止する措置(送信防止措置)を講ずるよう申出があった場合に、(ii)プロバイダ等が、発信者に対し侵害情報等を示して送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会したものの、7日を経過しても発信者から送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

 プロバイダ等からすれば、発言等が明らかに名誉毀損等にあたるような場合には(1)の要件を満たすと判断して発言の削除などを行うこともあり得ますが、少しでも判断に迷うようであれば、まずは(2)の手続きをとるものと思われます。

【被害者となった場合の対応】

 以上をふまえると、名誉毀損等の被害者となった場合は、次のような対応が考えられます。

 まず、プロバイダ等が、問題の発言等が掲載されていることを知ることがスタートになります。プロバイダ等が、個々の発言等をすべてチェックするというのは現実的ではありませんから、被害者の側で、プロバイダ等に問題を知らせる必要があります。

 そして、できる限りの資料を準備した上で、なぜその発言が問題なのかを説得的に伝える必要があります。プロバイダ等とすれば、被害者との関係では、【被害者に対する責任の制限】(2)(b)の要件で、権利侵害であると知ることができたと認められるだけの「相当の理由」がない限り、発言等を削除しないことについて損害賠償責任を負いません。
 それどころか、プロバイダ等は、情報発信者との関係では、【情報発信者に対する責任の制限】(1)の「相当の理由」がない場合に発言等の削除を行えば、損害賠償責任を負う可能性があります。

 したがって、プロバイダ等とすれば、「相当の理由」があると判断できなければ発言等の削除は行わないというのが合理的な対応となります。そして、この「相当の理由」があるということは、プロバイダ等が主体的に調査することは期待できず、被害者の側で示す必要があります。

 また、名誉毀損等であることが一見して明らかであるような場合を除けば、被害者の側でどれほど資料等を準備したとしても、プロバイダ等は、【情報発信者に対する責任の制限】(2)の手続きをふみ、情報発信者の意見を聞くと思われます。名誉毀損等の判断は簡単ではなく、相手方の反論を聞かないで名誉毀損等であると判断することは、プロバイダ等にとってリスクが大きいからです。
 情報発信者から、削除に同意しない旨の回答があった場合には、プロバイダ等は双方の意見及び資料等を参照して、「相当の理由」の有無を判断することになります。この段階で、被害者の側が十分な資料等を示せていなければ、プロバイダ等による(プロバイダ責任制限法により損害賠償責任を免れるための)自主的な削除は期待できず、裁判手続きが必要になります。

 なお、プロバイダ等によっては、被害者と称する人からの通知があれば、特に資料等を吟味することなく、まずは【情報発信者に対する責任の制限】(2)の要件に基づき、情報発信者に対して意見照会を行い、何の意見もなければ削除するという処理をすることも考えられます。資料等を準備するのにはどうしても時間がかかるので、被害者となった場合には、プロバイダ等のこうした対応を期待して、まずは急いで通知を行うということも一つの方法です。

 ただし、これはプロバイダ等の任意の対応であり、法律で求められているわけではありません。迅速性を重視して急いで通知を行ったとしても、情報発信者から削除に同意しない旨の回答がある可能性も考慮して、すみやかに資料等の準備を進めるべきです。また、そもそも削除に同意しない可能性が高いことが最初からわかっているケースでは、このような方法による削除は期待できず、やはり資料等を十分に準備しておく必要があります。

 そして、名誉毀損等の判断は簡単ではなく、資料等の準備をする上では弁護士などの専門家の協力を得ることが望ましいです。この問題は裁判手続きが必要となる可能性も少なくありません。会社にとって重大な問題であれば、できるだけ早い段階から弁護士の協力を得て、迅速に行動するようにしましょう。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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