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法律コラム


[インターネット|2011年1月13日]
弁護士 石井邦尚

インターネット上の発言と法的責任:名誉毀損(2)

弁護士 石井邦尚

1.名誉毀損行為であっても免責される場合

 名誉毀損というのは、他人の社会的評価を低下させる行為であり、ある記事や発言等がそのような行為にあたるかは、一般読者や一般視聴者を基準に判断されます。
 名誉毀損とされると、民事上は不法行為として損害賠償等の対象となり、刑事上は名誉毀損罪(刑法230条1項)等に問われます。
 発言等で摘示された事実が、たとえ真実であろうと、名誉毀損が成立するのが原則です。「本当のことを言っただけだ」というだけでは、弁解にならないのです。しかし、それでは本当に大切な記事や発言等も行えず、表現の自由が害され不都合です。

 そこで、刑法は、次の要件をすべて満たす場合には名誉毀損行為であっても処罰しないとしています(刑法230条の2)。
 (1)問題の記事、発言等が公共の利害に関する事実に係り
 (2)その目的が専ら公益を図ることにあったと認められ
 (3)事実が真実であることの証明があったとき

 また、判例では、(3)の要件が緩められ、真実の証明がない場合でも、(3)'行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときには、名誉毀損罪が成立しないとされています。
 民事上も、これとほぼパラレルの要件が認められる場合には、不法行為責任は問われないとされています。

 ここで注意しなければならないのは、例え真実であっても、それに加えて(1)(2)の要件が必要なことです。単に個人を誹謗中傷するだけの発言等では、真実であっても名誉毀損の責任は問われるのです。
 また、発言をするときには真実であると信じていても、後に訴訟等で真実と立証できるかはわかりません。名誉毀損にあたりうるような発言等をする場合には、(3)'の要件を満たせるよう、十分に調査し、資料を揃えておく必要があります。その上で、適宜、弁護士などの専門家の意見を得ておくことが望ましいです。

2.インターネット上の発言に、特別の免責が認められるか

 上記1で述べた免責の要件は、新聞、雑誌、テレビなどの従来からのメディアを前提に判例などを通じて築き上げられてきたものです。
 しかし、インターネット上では一般の人々も容易に発言等を行うことができますが、個人が上記(3)や(3)'の要件を満たすよう、十分な事実調査を行うことは必ずしも容易ではありません。

 そこで、インターネットの個人利用者による名誉毀損については、これまでとは異なる免責事由が認められるべきではないか問題提起がなされました。このことが、刑法上の名誉毀損罪の成否について裁判で争われ、昨年、最高裁判決が出されました(最高裁判所平成22年3月15日判決)。
 この事件は、自らが開設したホームページ上で、フランチャイズによる飲食店の加盟店等の募集及び経営指導等を行っている会社(被害者)がカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章を掲載するなどしたというものです。

 第1審(東京地裁)では、1で述べた(1)(2)の要件は満たすものの、(3)や(3)'の要件は満たさないとされました。そうすると、そのまま名誉毀損罪成立となるはずですが、裁判所は新たな基準を設け、被害者には反論を要求しても不当とはいえない状況があり、被告人がインターネットの個人利用者に対して要求される程度の情報収集をした上で本件表現行為に及んだものと認められることからすると名誉毀損の罪責は問えないとして、被告人に無罪を言い渡しました。

 このような新しい免責の基準を定立したこともあって、この判決は注目を集めましたが、控訴審(東京高裁)及び最高裁は、このような新たな免責事由は認められないとして、名誉毀損罪の成立を認めました。

 この裁判では、結局、インターネット特有の免責事由は認められませんでしたが、インターネット上の発言に、従来からの新聞、雑誌、テレビなどのメディアを前提とした名誉毀損の法理をそのまま適用してよいのかは、重要な問題提起であり、今後も検討が必要ですし、裁判例も出てくると思われます。とはいえ、実際に発言等をする場面では、従来からの法理論を前提に慎重に判断する必要があります。

 次回は、名誉毀損に関する、その他のインターネットに特有の問題について解説したいと思います。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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