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取締役と刑事罰(2)

テーマ:役員・株主

2010年11月18日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 今回も前回に引き続き、会社法上の取締役に対する刑罰法規を説明します。今回は、「虚偽文書行使等の罪」と「預合いの罪」について説明します。


【虚偽文書行使等の罪】

 虚偽文書行使等の罪とは、「株式、新株予約権や社債又は新株予約権付社債を引き受ける者の募集をするにあたり、会社の事業その他の事項に関する説明を記載した資料若しくは当該募集の広告その他の当該募集に関する文書であって重要な事項について虚偽の記載のあるものを行使し」たとき(会社法964条)に成立する犯罪です。


 たとえば、目論見書などへの不実記載がこれにあたります。会社のホームページに目論見書を掲載する場合や電子ファイルなどの媒体を用いるときも同様です。


 日本の刑法では、公文書とは異なり、私文書の偽造は、医師の診断書のような特殊なものを除いて、記載内容を偽ること(これを無形偽造といいます。これに対し、作成名義を偽ることを有形偽造といいます)を罰しないのが原則ですが、株式会社の株式引受けの募集広告のような、社会的に大きな影響力を有する文書について、虚偽内容の記載があった場合は、その「行使」につき取締役を罰するというものです。刑法の文書偽造とは違って、「作成」のみでは本罪は成立しません。


 「行使」とは、相手方がその内容を知ることのできる状態におくことをいいます。ですから、株式引受けを勧誘するポスターや立看板の掲示なども、その重要な事項について内容が虚偽であれば文書の行使にあたることになります。


 「重要な事項」とは何かは、個別具体的な事情によって判断されますが、一般的にはその事実が虚偽であることを知っていれば、文書を見た人が申込みをしなかったであろう事項ということになります。いわゆる誇大表示が虚偽記載に当たるかどうかは微妙なところですが、あまりに過大な表現は虚偽記載とされるおそれがありますので注意が必要です。


 主体は、特別背任とほぼ同じで、取締役のみならず、監査役その他、取締役の職務代行者も含まれます。
 法定刑は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」であり、懲役と罰金の併科もあります。


 なお、金融商品取引法でも株式等の募集に関する文書の虚偽記載に対する罰則がありますが、主体が取締役に特定されていないことから、取締役に関しては本罪が優先して適用されることになります。


【預合いの罪】

 預合いの罪とは、「株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったとき」(会社法965条)に成立する犯罪です。


 条文上「預合い」の明確な定義は規定されていませんが、預合いとされる典型は、取締役等が、払込取扱銀行から借入をし、これを頭金にして株金の払込みを仮装し、他方において借入金の返済があるまで頭金の引き出しをしないと約束することです。判例は、預合いの罪が成立するためには、取締役と払込取扱銀行(の役職員)との間に、払込みを仮装するということについての通謀が必要であるとしています。


 預合いに似た行為として「見せ金」というものがあります。見せ金は、取締役が取扱銀行以外の第三者から借入れをして、これをもって払込みにあて、株式発行後に取締役が直ちに払込金を払込銀行から引き出して、借入先に返済するというものです。


 「預合い」と「見せ金」の違いは、資金の借入先が銀行か銀行以外の第三者かという点にあります。そして、見せ金の場合には、通常、会社の取締役と払込取扱銀行(の役職員)との間には通謀がないということになります。


 民事上は、見せ金による払込みは無効とされています。刑事上は、刑罰法規の明確性の観点から、見せ金と預合いを同視することはできないので、見せ金は新株発行の変更登記につき公正証書原本不実記載罪に問われることになります。


 なお、払込取扱銀行からの借入金を会社が従業員や代表者への債務の弁済にあて、それを従業員らが株式払込金として充当した場合に、従業員らの債権が実際に存在し、かつ、これを弁済する資力が会社にあれば、預合いの罪は成立しないとした判例があります。


 預合いの罪の主体は、特別背任や虚偽文書行使等の罪とほぼ同じです。
 法定刑は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」で、懲役と罰金の併科もあります。 国外犯も処罰されます。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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