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米国スパムメール禁止法成立(2)

テーマ:インターネット一般

2004年7月 8日

解説者

弁護士 土谷喜輝

「 [2004.07.01] <eビジネスアベニュー>米国スパムメール禁止法成立(1) 」は、2003年12月16日に成立し、2004年1月1日から施行されているスパムメールを禁止する連邦法(Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing Act of 2003 、通称「CAN-SPAM」)において禁止されている行為の概要を説明しましたが、今回は、この法律が採用しているオプトアウト方式やメール受信拒否リスト("do not e-mail" list)について説明し、合わせて州法との関係についても触れたいと思います。


オプトアウト(opt out)とオプトイン(opt in)

前回説明したとおり、CAN-SPAMは、商業的電子メールを送信する場合には、受信者が今後の受信拒否を要求するための方法を明記しなければならないと定めています。このように、一度、受信した人が今後は受信したくないということを要求して、リストから外してもらう方式をオプトアウト(opt out)方式と言います。日本の迷惑メール防止に関する法律もこの方式を採っています(詳細は、当サイト掲載の拙著コラムをご覧下さい)。
これに対し、最初に業者が商業的電子メールを送信してよいかどうかを尋ね、よいと回答した人にだけ商業的電子メールを送ることができるという方式をオプトイン(opt in)方式と呼びます。カリフォルニア州やデラウェア州のスパムメール禁止法が、このオプトイン方式を採用しており、スパムメール防止の効果は格段に高いとされています。


各州法との差異・関係

前回も述べた通り、米国では、34の州が独自のスパムメール禁止法を制定しており、カリフォルニア州やデラウェア州のようにオプトイン方式を採用して、スパムメールを厳しく取り締まろうとしている州もあります。ところが、今回、オプトアウト方式を採用した連邦法が制定されたことで、このような州法を適用することができなくなるのではないかという懸念も出ています。一般論としても、連邦法と州法では、連邦法が優先するのが原則ですし、CAN-SPAMもSection 8で商業的電子メールの送信に関する州法より優先すると規定されています。
また、15の州の法律では、商業的電子メールの件名に広告を示す「ADV:」などの表示を義務づけているのですが、CAN-SPAMは、このような特定を要求しませんでした。英文の広告メールで件名に「ADV:」と記載されたものを受け取った方もおられると思いますが、メールソフトの振り分け機能を利用すれば、この表示があれば自動的にゴミ箱に送ったり、受信しないこともできます。しかし、CAN-SPAMでは、このような特定の表示を義務づけていないため、スパムメールを自動的に排除することができない状態が続くことになります。
その他にも、CAN-SPAMは、スパムメールを受け取った個人が送信者に対して訴訟を提起する権利を制限していたり、スパムメール送信者の違法性を立証するための要件が厳しすぎるなど、スパムメール対策としては、多くの州法に比べて甘すぎるのではないかという批判が出ています。


メール受信拒否リスト("do not e-mail" list)

CAN-SPAMのSection 9では、法律施行後6ヶ月以内にFTC(Federal Trade Commission、「連邦取引委員会」)が「メール受信拒否(do not e-mail)」登録のためのプランとタイムテーブルを策定することとされています。米国には、有名な「電話拒否リスト("do not call" list)」というものがあり、テレマーケティングを行う業者は、FTCのこのリストに登録されている電話番号には電話をかけることはできず、これに違反すると罰則が科せられます。米国では、電話による勧誘に悩まされている人が多かったようで、受付開始後4日間で1000万件以上の番号が登録され、全米に1億3000万件ある家庭の電話のうち5300万件以上の番号が既に登録されています。
"do not e-mail" listもこのメール版として期待されています。確かに、このリストに登録したからといって、自動的にスパムメールのリストから除外されるわけではなく、違法なスパムメールを送信する業者は、このようなリストを無視して送信を続けるのではないかとも言われています。しかし、このような懸念は、"do not call" listの時にもあったのですが、テレマーケティングの量は大きく減り、テレマーケティングを行っていた多くの人が失業する自体にまで至っていることからしても、一定の効果はあると思われます。特に、電話以上にメールは証拠が残りますので、違法なメールを受け取った人がFTCに通告することも容易だと考えられます。勿論、違法なメールを送信した者を特定することは、違法な電話をかけた者を特定するよりも困難であるという問題はありますが、少なくともオプトアウト方式を採用してしまったCAN-SPAMを補足するものとしては機能するのではないでしょうか。


今後の予測

世界中で送信されている電子メールの半数以上がスパムメールであるとの調査結果もあるほどスパムメールは増加しています。連邦法が制定されたからといって、即座にこの状況が改善されるとは思われませんが、"do not e-mail" listが普及し、違法なスパムメール送信者を特定する体制が法的にも技術的にも高まれば、スパムメールは減少するのではないかと期待されます。そうでなければ、「メール送信毎に課金すること、これが一番のスパムメール対策だ」という意見が現実のものとなりかねません。メールの送受信は無料であるとの利益を我々が受け続けるためにも、今回の連邦法制定がスパムメール減少の一助になることを期待したいと思います。


<参考サイト>
・CAN-SPAM条文
  連邦取引委員会(Federal Trade Commission)


土谷喜輝
ニューヨーク州法曹資格

主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000) 等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2003年9月12日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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