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消費者保護規制(1) 説明義務と消費者契約法

テーマ:契約・取引

2010年6月 3日

解説者

弁護士 持田光則

【消費者の保護に関する規制】

 2009年9月、消費者庁が発足しました。消費者庁は消費者保護関連の法律を所管する役所で、これまで省庁間でバラバラに扱われていた消費者保護関連の規制を統括していくことになります。
 消費者保護というと、事業者側からは営業の自由を制約するイメージですが、事業者側で消費者保護を徹底することは、顧客とのトラブルを減少させ、その事業が社会から信用を得ることにつながり、事業の繁栄に貢献します。
 今回は、消費者保護規制のなかで最も基本的な法律である消費者契約法を中心に、事業者側の説明義務について考えてみたいと思います。


【消費者契約法の適用場面】

 消費者契約法の説明義務についてお話しする前に、消費者契約法の目的と適用場面を確認しておきます。
 この法律の目的は、事業者のもつ情報の質や量およびこれを利用した交渉力が、消費者のそれと比較して圧倒的に有利な状況にあるという認識の下で、その不均衡を是正することにあります。
 ですから、この法律は「消費者」(個人です。事業のために契約する場合の個人を除きます)と「事業者」(法人、団体、事業のために契約する場合の個人を含みます。)との間の契約に適用されます。
 不均衡を是正する具体的な方法としては、事業者側に一方的に有利な契約条項を無効としたり、事業者側の説明が不適当なときに消費者側に契約の取消しを認めたりします。 そして、事業者側の説明義務に着目した規制は、後者です。


【事業者側の説明義務】

 消費者契約法は、第4条を中心に、業者側の不適当な説明により消費者に誤解を与えた場合に、消費者に契約の取消権を与えます。
 具体的には、契約に際して、(1)重要事項(商品やサービスの質・用途、対価やその他の取引条件)について事実と異なることを告げたために消費者がこれを事実と誤信したときや(4条1項1号)、(2)商品等の将来の価格などの変動が不確実な事項について断定的判断を提供したことにより、消費者が将来の価格等を確実であると誤信したときに(4条1項2号)、契約の取消を認めます。
 また、(3)重要事項((1)と同じです)や、これに関連する事実について、事業者が消費者の利益となる説明をしながら、同じ重要事項に関連する消費者にとって不利益な事実を故意に告げなかったときには、契約の取消を認めます。


 (1)については、細かい説明はいらないでしょう。提供する商品・サービスの質や対価、取引条件について、事実と異なる説明をしたのでは、まともな商売とはいえません。この取消権は、民法95条でも詐欺を理由とする取消が認められているので、その要件(事業者側に騙す認識などが要求されます)を緩和したものです。


 (2)については、注意が必要です。商品に関する将来の資産価値などについて、「必ず騰がる」(実際には、「○○の高騰で品薄になる」「将来の約束された画家である」などの具体的理由のついているケースがほとんどです)といった将来の不確実な事情を、断定的に説明してしまうケースです。昔は、セールストークとしてよくみられたのではないでしょうか。このようなセールストークまで規制するに至ったのは、合理的な行動を期待できる人間像を前提とした民法と違い、消費者契約法では、十分理解しないままに契約してしまう場合がありうる人間像を前提に、事業者側に重い説明責任を負わせたものなのです。地方から都会に出てきたての人の良い若者や、認知症になりかかった高齢者などをターゲットにした悪徳商法が頻発したことを受けて、法令が想定している人間像を修正したものといえます。


 (3)については、一方で10年間無償修理を保証すると説明してアナログテレビを販売しながら、他方で3年後には地上波デジタル放送に方式が切り替わり受信できなくなることを隠していたようなケースが想定されます。説明した事実には嘘がないとしても、故意に説明しなかった事実を考え合わせれば、騙したといえるケースです。これも表面的な詐欺行為がないときでも、契約を取消せるよう、民法95条の詐欺取消の要件を緩和したものといえます。


【どの程度の説明をすればよいのか?】

 消費者契約法の要求する事業者側の説明義務は、分かりやすく表現すれば「消費者が契約しようとする動機に誤解を生じさせない程度」要求されているといえると思います。
 普通の事業者(経営者)であれば、顧客が誤解するような説明をしないことなど当たり前かもしれません。ここで皆さんに考えていただきたいのは、従業員が良い成績を得るために、顧客を誤信させるような説明をしてしまっていないかということです。特に、成果主義の報酬制度や重い営業ノルマを課している営業職の従業員が、顧客にどのような説明をしているか、改めて検証してみる必要があるのではないでしょうか。
 私が経験したケースでは、急成長していたエステ店の従業員が、断るのが苦手な若者を相手に不必要なエステ契約を数百万円分も結ばせているというものがありました。本社宛に契約の取消等の連絡と抗議の通知をすると、すぐに本社の総務部の担当者から謝罪の連絡とお金の返金の提案がありました。


【今回のまとめ】

 消費者契約法における事業者側の説明義務は、顧客が契約する動機となる事項に誤解を与えない程度のものが要求されます。ただし、経営者の意図とは別に、過大なノルマや成果主義報酬制度により現場の営業員レベルで説明義務に違反するケースを生じることがあるので、営業現場の説明内容を検証してみると、顧客とのトラブルの防止に役立つと思います。


氏名:持田光則

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
2002年・東京弁護士会所属

学歴:
1991年都立昭和高校卒業、1996年専修大学法学部卒業

得意分野等:
不動産トラブル、債権回収、交通事故、医療過誤、離婚、相続、倒産処理など一般民事事件を幅広く扱う。実家が青梅市にあり生梅や梅干の生産をしていることから農業経営にも興味を持ち、若手農業経営者への支援にも取り組んでいる。

所属事務所:
立川北法律事務所(東京都立川市)

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