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全株式譲渡制限会社による募集株式の発行(1)

テーマ:資金調達

2010年5月13日

解説者

弁護士 戸谷 景

【株主割当てと第三者割当て】

 募集株式の発行には、株主割当て、第三者割当て、公募の3つの方法がありますが、ここでは前2者について説明します。
 株主割当てというのは、株主に対し、その有する株式の数に応じて、新たに「株式の割当てを受ける権利」を与える形で行う募集株式の発行のことをいいます。
 第三者割当てというのは、株主に「株式の割当てを受ける権利」を与えないで行う募集株式の発行のうち、特定の者(縁故者)に対してのみ引受申込みの勧誘および割当てを行う方法です。
 では、一部の株主に募集株式のすべてを引き受けてもらう場合は、株主割当てとなるのでしょうか、それとも第三者割当てとなるのでしょうか(種類株式発行会社は除外して考えてください)。
 正解は、後者の第三者割当てです。株主に対し、持株数に応じて「株式の割当てを受ける権利」を与えるのでなければ、株主割当てではなく第三者割当てとなります。


【募集事項等の決定】

1.募集事項

 募集株式の発行に当たってまず行うべき法定の手続は、募集事項の決定です。  募集事項というのは、次の5つをさします(会社法199条1項)。
  (1)募集株式の数
  (2)払込金額またはその算定方法
  (3)金銭以外の財産を出資の目的とするときはその旨ならびに当該財産の内容
  (4)払込期日または払込期間
  (5)増加する資本金および資本準備金に関する事項


2.(1)について

 「募集株式の数」は、定款で定めている発行可能株式総数から発行済株式総数を引いた数の範囲内でなければならず、これを超える数の募集株式を発行したい場合には、定款を変更する必要があります。


3.(2)について

 「払込金額」というのは、募集株式1株と引換えに払い込むべき金銭または給付すべき金銭以外の財産の額をさします。


4.(3)について

 (3)は、現物出資(金銭以外の財産による出資)を許容する際に必要となる事項です。
 現物出資を許容するときは、一定の場合を除き、裁判所が選任する検査役に財産の価額を調査してもらう必要が生じます(会社法207条)。


5.(4)について

 「払込期日または払込期間」というのは、株式の引受人が出資の履行をなすべき日またはその期間のことで、引受人は、払込期日または払込期間内で現に出資の履行をした日に株主となります(会社法209条)。
 申込証拠金制度を採用した場合、会社は、払込期日に株式払込金(出資金)に充当すべき金銭(申込証拠金)を払込期日前にあらかじめ受け取っておくことになりますが、その場合でも、引受人が株主となるのは払込期日ということになりますので、この事項は、引受人に対して株式が発行される日を決定づける重要なものといえます。


6.(5)について

 募集株式の発行によって増加する資本金の額は、原則として、株主となる者が会社に対して払い込みまたは給付した財産の額(資本金等増加限度額)となりますが(会社法445条1項)、この資本金等増加限度額の半分までは、資本金として計上せず、資本準備金にまわすことができますので(同条2項、3項)、その点をどうするのかをあらかじめ決めておく必要があり、それが(5)ということになります。


7.株主割当ての場合

 株主割当ての場合には、(1)〜(5)の募集事項に加えて、次の事項を決定する必要があります(会社法202条1項)。
  (6)株主に対し、会社法203条2項の申込みをすることにより募集株式の割当てを受ける権利を与える旨
  (7)申込期日


【募集事項均等原則(会社法199条5項)】

 募集事項は、募集ごとに均等に定めなければなりません。例えば、Aさんの払込金額は1株5万円、Bさんの払込金額は1株10万円と定めることはできないということです。
 もっとも、この原則は、会社が恣意的に一部の者に対して有利な条件で新株を発行することを抑制するためのものですので、会社が決定した払込金額より高い引受金額を申し出る者が現れた場合に、その者に対してその引受金額で優先的に新株を割り当てることは禁じられないと解されています。
 では、「売れ残り」の株式が出そうな場合、その分の引受金額のみをディスカウントして割当てを行うことはできるでしょうか。
 正解は、×です。(2)の「払込金額」は、引受人が払い込むべき金額の下限を意味すると解されているので、これを上回る引受金額で出資させることはできても、これより低い引受金額で出資させることはできないといえるでしょう。


氏名:戸谷 景

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
2008年大宮法科大学院大学卒業

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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